もう一度観る映画「バケモノの子」誰の心の中にも存在する「闇」「恨み」や「憎しみ」の消し方 | 編集者 福田清峰の I Love You

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「5年愛される本づくり、そして10年愛される本づくりへ」をモットーに書籍を編んでいます。
ゴルフとバードウォッチングにハイキング、山登り好きです。
そして写真、ライブに演劇、バレエ、映画鑑賞と美術館めぐりが大好きな編集者&カメラマンです。


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何かをきっかけに人は心の中に持っている闇を芽生えさせてしまうのでしょうか?
その「心の闇」は打ち負かすものでもなく、「心の剣」で清らかにオープンにしていくべきなのだと、目を開かせてくれます。
争い事や揉め事が日常的になる現実の中で、多くの人にこの映画を見てもらいたいと思います。

人はなぜ、恨んだり、妬んだり、憎んだり......してしまうのでしょうか?
人は人を本当に、素直に信ずることができないのでしょうか?

本来、人間はひ弱(ひよわ)が故に、心に闇を宿すものだと教えてくれます。
ならば闇を打ち消すにはどうしたらいいのでしょうか?
いや、「打ち消す」という発想が根本的に間違っていて、それは「闇」が心を支配しているから故の発想だと気がつかせてくれます。

「バケモノの子」、ストーリーなんかどうでもよくて、このテーマだけで十分で、やっぱり気持ちのいい作品で、もやっとした心の闇をスッキリさせてくれます。
素敵な細田作品です。


バケモノの子

バケモノの子
製作年:2015年
日本公開:2015年7月11日

上映時間:1時間59分

監 督:細田守(原作・脚本)
キャスト:役所広司(熊徹)、宮崎あおい(九太・少年期)、染谷将太(九太・青年期)、広瀬すず(楓)、山路和弘(猪王山)

こちらは予告編です。

渋谷の地下にバケモノが住む街「渋天街(じゅうてんがい)」があるという。
女で一人で育てられてきた九太は、母が交通事故で亡くなったことで、親戚に引き取られることになるが、それを拒否して一人渋谷の街へ飛び出していきます。
渋谷の街を歩きながら「みんな大嫌いだ!」と大声で叫んだ姿が心の闇となり、その残像が、その場に、そして心に残ります。

そこで、不思議な小動物「チコ」に出会います。
チコは母の妖精のような役割をしながら、九太の心の支えとなります。

バケモノの子バケモノの子

打ちひしがれ、孤独に生きようと彷徨う道すがら、バケモノ「熊徹」に声をかけられ、フラッと後をついていきながら、渋天街に迷い込みます。

バケモノの子

すったもんだあったほうがうまくいくのでしょうか?
個人的には、最初から仲良しなほうを望んでしまいますが......。
九太は熊徹のもとで強くなろうとします。

バケモノの子

9歳だったから九太だったのに、気がつけば17歳、十七太になりました。
どんどん強くなっていきます。

バケモノの子

細田作品といえば、盛夏、青い空に入道雲です。

バケモノの子

そう、バケモノは心に闇を宿さない......。
渋天街の宗師(渋天街に棲む10万を超えるバケモノを長年束ねるトップ)になるために、熊徹とその座を争う猪王山(いおうぜん)の次男、二郎丸を見ていると、そのことが素直に理解できます。

一度は、少年期には九太を弱いものいじめしていたのに、青年期には差し掛かるころ、九太に打ちのめされると、「おまえすげーな」とスッキリした表情で「お前強いなー。おいら強いやつが好きなんだ。うちに遊びに来いよ」と一気にいい友達になってしまいました。
これこそ、「心に闇を持っていない」という証だと思います。

熊徹と猪王山の決闘の前にも、二郎丸は九太に「結果がどうであれ、おいら達は友達だ」と言います。
憧れの父親のライバルの愛弟子にそんなことを本心から言えるのも素敵なことだと思います。

バケモノの子

何かの時に、そっとでてくきてくれる母親の残像。
愛されたいと思う人に守られることで、人は前に進むことができます。

バケモノの子

九太はあるとき、渋天街から渋谷の街への戻り方を覚え、行き来するようになります。
なぜ人とバケモノの住む街を分けるのか?
それは、バケモノは心に闇を宿さない......つまり純粋に生きれるから、人間と共存することでその世界に闇が入り込まないようになっているのかと。
 
バケモノの子

九太は図書館で楓と出会います。
ハーマン・メルヴィルの長編小説「白鯨」に出てくる「鯨」という字を横で本を探していた女の子(楓)に尋ねます。
ここから2人の勇敢な「キミとなら、強くなれる。」が始まります。
「白鯨」が2人の絆の証になるなんて、なかなかロマンチックです。
白鯨.....
モビィ・ディックがキーになります。

恋の話を一切しないのが、また素敵な仕上がりになっているかと。
バケモノの子
九太は大検を目指し、両親が離婚してから会っていなかった父親を探します。
何を話していいのかわからなくても、とにかく父親と再会する九太は、心の葛藤に揉まれます。
本当の父親と暮らしたい気持ちと、熊徹とを捨てられない思いと。

九太は熊徹に相談しますが、いつも通り埒(らち)が明かない会話に業を煮やして渋谷の街に戻ります。

バケモノの子
バケモノの子

九太の父親が、「今までの辛かったことは、これから取り戻そう」と切り出します。
その言葉に九太は過剰なまでに反応して、「今日はやめとく」と父の家で一緒に九太の大好きなオムレツを食べようとしていた父親を置いて楓のところへ戻ります。

バケモノの子

九太は、自分の思いと裏腹な行動を取ってしまった自分に憤りを感じ、行き場のない怒りにも似たどうにも気持ちの置き場がないまま、楓に向かい合います。
「いつもの九太じゃない」
怖がる楓を金網に押し付ける九太を楓は平手打ちします。

涙を流す九太の思いを察し、抱き寄せる楓。
そして、楓は自分の手首に巻いていた赤い本の栞をちぎり、九太の手首に巻きます。
どうにもならない怒りや葛藤に出会ってしまったら、この栞を思い出してと。

このシーンを見て、迷いがある、葛藤がある、割り切れない思いがあるから、だから人間って面白いんだよって、改めて当たり前のことに気づいて胸が痛くなりました。
とはいっても、この「心の迷い」も人の心にのみある誘惑であり、自分の思いとは違った行動を仕向ける厄介なものでもあるのです。
心がひ弱(ひよわ)になって宿るものすべてをなくしたいと思ってしまいます。

バケモノの子
 
1人になって、考える熊徹に妙案は浮かばず、猪王山との決闘を前に.....。

バケモノの子

いよいよ宗師を掛けた熊徹と猪王山の戦いが始まりました。
圧倒的に押される熊徹。
そこへ駆けつけた九太のひと声で熊徹が息を吹き返し、九太の思いとシンクロしたとき、最強の力を発揮して
猪王山を破ります。
熊徹が振り下ろした太刀で猪王山の太刀が吹っ飛び、勝負が付きます。

バケモノの子

熊徹の勝利が宣言されたとき.....

バケモノの子

熊徹に異変が起きます。
熊徹の背中から血が流れ出てきます。

バケモノの子

猪王山の長男一郎彦が念動力で吹き飛ばされた猪王山の太刀を熊徹の背中に突き刺さしたのでした。

バケモノの子

このときの一郎彦の心には恨みと妬みという闇が宿り、熊徹が崩れ落ちるのを見た九太の心にも闇が宿ります。
熊徹の背中から腹を貫いた太刀を怒りの力で引き抜き、一郎彦に向けて飛ばします。
これは、念動力でもなんでもなく、人の心に宿った闇の力によるものです。
実は、一郎彦も人間の子だったのです。

怒りの力を最大限に感じる九太の飛ばした太刀が一郎彦に突き刺さる瞬間、九太は手首の栞を見て、怒りが消えます。
怒りが消えたことで、一郎彦の眼前で太刀は失速して一命を取り留めます。
そして一郎彦は、九太を絶対に許さないとつぶやいて消えていきます。

九太は渋谷の街に戻り、楓に会います。
楓に会って、やらなければならないことがあるから、「白鯨」を預かっていてくれと伝えます。
そこへ、一郎彦が現れ、渋谷の街で大立ち回りが始まります。

バケモノの子

ハーマン・メルヴィルが「白鯨」をどういう意味で書いたのかはわからないとしても、読んだ人が、読んだときの自分自身の感情でいろいろ感じればいいと思います。

白鯨モビィ・ディックは悪の象徴であり、モビィ・ディックを追い詰めていくエイハブ船長が善の象徴という読み方が普通かもしれません。
その逆もしかり、
モビィ・ディックこそが善であり、かってモビィ・ディックに足を噛み切られたエイハブ船長が復讐の鬼と化す姿を悪の象徴と読むこともできるわけです。

渋谷の街で暴れまわる一郎彦は楓が落とした「白鯨」を拾い上げ、「鯨か」と口にして鯨へと姿を変えます。

ここでは、妬みと恨みと怒りに駆られる巨大な鯨に化けた一郎彦とそれを迎え撃つ九太になるのですが、
モビィ・ディックとエイハブ船長の立ち位置をクロスさせることで、善と悪ではなく、尋常ではなく心に闇を宿らせた人間を「醜い」姿として描いたものかもしれません。
 
バケモノの子

鯨になった一郎彦の暴走は止まりません。

バケモノの子

九太は、一郎彦闇の心を飲み込むことを決心し、そして自らの命を絶つことで闇をこの世から葬ろうとします。
ここで、天から宗師となり神となることを選択した熊徹が舞い降り、九太の心の剣となり、九太の心から闇を消します。

バケモノの子

そして、九太はここの剣をもってして、一郎彦の心を解放します。
心の闇を持つ者と対峙するなら、戦い、つぶしあうのではなく、自らの心を開き相手の心をも開かせるようにすること、そして、飲み込むのではなく、受け入れて許すことであると。
まずは心の剣を持ち、自らの心を開放して相手の心を開放させたげること。
それができるためにも、己の心との会話が大切になるのかもしれません。

バケモノの子

キミとなら、強くなれる。
まさにそんな気持ちにさせてくれます。
そんな人と出会い、心の闇を宿すことなく、まっすぐに胸を張って生きれたら、人はとても力強く生きていけるのでしょう。

もしそんな人に出会えたなら(出会えているのなら)、あなたはそれだけで、間違いなく幸せです。

バケモノの子

誰かを好きになるとか恋の始まりとじゃなく、気が付いたら一緒にいなきゃいけない存在。
それが本物の2人の関係。
うらやましいかぎりです。

バケモノの子

細田監督の絵コンテがすごい。
監督の書いたままが映画になっている!


バケモノの子 (角川文庫)
細田 守


 

 

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