マーガレット・サッチャーと父が追い求めたのは、生命の起源にリーチする単分子膜の世界 | 編集者 福田清峰の I Love You

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そして写真、ライブに演劇、バレエ、映画鑑賞と美術館めぐりが大好きな編集者&カメラマンです。


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『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
原 題:The Iron Lady
製作年:2011年
製作国:イギリス
日本公開:2012年3月16日
上映時間:1時間45分

監督:フィリダ・ロイド
脚本:アビ・モーガン
キャスト:メリル・ストリープ(Margaret Thatcher)/ハリー・ロイド(Young Denis Thatcher)/ジム・ブロードベント(Denis Thatcher)




マーガレット・サッチャーさん、言わずと知れたイギリス史上初の女性の首相(第71代/1979年ー1990年)です。

でも、実は、彼女が化学者であったことは、ほとんど知られていない事実です。


マーガレット・サッチャーさん、10歳のときに優秀な生徒だけを集める公立のグラマー
スクールに合格し、奨学金試験にもパスされます。
この女学校で、指導を受けた化学の先生から大きな影響を受けます、化学の道に傾倒していきます。
17歳のとき、普通より1年早くオックスフォード大学を受験し、見事繰り上げ入学します。
マーガレット・サッチャーさんには、学問的には天才的なひらめきはありませんでしたが、大変な努力家でまじめな勉強家だったそうです。
1947年にオックスフォード大学を卒業し、British Xylonite社に入社し、プラスチック関係の仕事に携わります。
この頃から政治に関心を持ちはじめ、夜な夜な政治集会に参加していたそうです。
やがて、J. Lyons社の研究部門に転職し、当時の上司であり、のちに米国クラークソン大学教授となったジェリネック博士のもとで研究に従事します。
この頃書いたマーガレット・サッチャーさん、唯一の化学論文の表題が「単分子膜状態におけるα-モノステアリンの加水分解反応」というものです。

論文の内容はさておき、ちょうど同じ頃、日本で私の父、福田清成が東京大学理学部化学科鮫島研で単分子膜および累積膜の研究をしていました。
余談ですが、父も飛び級で進学しています。


マーガレット・サッチャーさん、1925年10月13日生まれですから、御年86歳になられます。
私の父が1926年4月27日生まれです。
ほぼ同い年、そしてほぼ同時期に同じテーマの研究を志し、マーガレット・サッチャーさんは政治の道へ、父はそのまま生命の起源へリーチするために、単体表面に単分子膜を重ねたLB膜の研究に没頭しました。
もし、マーガレット・サッチャーさんが化学の道を選んだなら、国際会議の壇上で父と熱い議論を交えたかもしれませんが、そのときはもちろん「鉄の女」ではありません。




さて、前置きが長くなりました。
なぜこんなことを書いたかというと、映画の冒頭に自伝本にサインをし続けるシーンがあります。
そのとき、「Margaret Thatcher」と書きながら、ふと「Margaret Roberts」と書いてしまいます。
これはマーガレット・サッチャーさんの旧姓です。
そして、まだ「Margaret Roberts」だったころを回想していきます。

今回、映画は自伝をテーマにしたものではありません。
マーガレット・サッチャーさんが政治に関わった面しか描かれていません(これも本当のテーマではありません)。
それでは少し物足りなさを感じたので、あえて、化学者であったマーガレット・ロバーツ時代のことを書いておこうと思ったからです。




さて、マーガレット・サッチャーさん、2008年にお嬢様のキャロルさんが、認知症を患っていることを公表されています。
双子のお子さんがいますが、映画の中にも終止ご子息は登場されません。
お嬢さんだけが登場します。
ここも、実はすごく大きなキックになっています。

マーガレット・サッチャーさん、時折寄ってくれて、気にかけてくれるお嬢様ではなく、ご子息のことが気になります。
認知症を患ってのうえでのことですから、本能的にご子息のほうを愛しているのでしょう。
母親ですから、息子を愛する気持ちはわかります。

本来であるなら、年老いたとき、それまで尽くしてきてくれたかどうかよりも、最期の数年を尽くしてくれた人を大切にし、愛するものです。
「終わりよければすべてよし」そうなんだと思います。
それが、認知症となると、そうではなく、本能が反応してしまうのでしょう。
お嬢様にとっては切ないことこのうえないのですが…。




「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」が描き出したものは、「人生の終焉」です。
そこには2つの大きなテーマが切っても切っても切り離せずに付いて回ります。
ひとつは「老い」です。
そして、もうひとつが「人生は幸せだったか」ということ。


マーガレット・サッチャーさん、亡き夫デニスさんに問います。
「あなたは幸せだったの? 教えてでデニス」
これが、1つ屋根の下に暮らした者とある程度の人生を送った者が背負わなくていけない命題だと思います。




この2つの問いに答えなどないのでしょうが、ひとつ言えるのは「残されたものの最期は儚きもの」ということです。


マーガレット・サッチャーさん、英国の首相を10年、しかも女性初の快挙です。
そして、フォークランド紛争のときには「人命に代えてでも我が英国領土を守らなければならない。なぜなら、国際法が力の行使に打ち勝たなければならないからだ」と名言を残し、大英帝国時代から国民が持ち続けるプライドを守り抜きました。
この指導力が支持率70%を越える原動力であり、イギリス経済復興を成し遂げました。




これだけの功績を持つマーガレット・サッチャーさんでも、晩年はこんなにも寂しいものかと。
夫に先立たれ、その夫の遺品をなかなか整理できないでいたのを、やっとの思いで、ひとり片付け、その夫の幻影に脅かされる日々。


孫に囲まれ、豊かな生活をしているイメージがありますが、実は認知症ということもあって、仰々しい警備とあまり心を許すことができないセクレタリーがつき、窮屈でさみしい老後を送っているように思えます。


この映画を見て、私自身が年老いていく両親の介護をしながら思ったことは、何よりも、健康が第一であると言うこと。
権力でも地位でもお金でもなく、求めるものは、「認知症もなく、五体満足に動ける健康」であることを、痛感しました。


人が老いていくということは「幸せ」なのだろうか?
人が幸せに老いていくということはどういうことなのだろうか?
自分自身の価値観と、今、ひとつ屋根の下に暮らす家族にとって、「幸せかい?」と問う機会を与えてくれました。




伝記ではなく、新しい切り口が斬新でいいのかもしれません。

そして、なによりも、主演のメリル・ストリープの演技、文句なしの名演技です。
なんといっても、第84回アカデミー賞主演女優賞ですから。
これだけも観る価値があります。

この映画、もっといろいろな側面から語ることができますが、今回はあえてこの辺りで。




マーガレット・サッチャー―鉄の女の涙 (リンダブックス)
白石 まみ
4803003173 


The Iron Lady: Margaret Thatcher, from Grocer's Daughter to Prime Minister
John Campbell David Freeman
0143120875


マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(メリル・ストリープ主演) [DVD]
B0071FQKM4





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