ブラックスワン/ヘップバーンの再来を感じるナタリー・ポートマンの悩める美しさは本物か/ネタバレ | 編集者 福田清峰の I Love You

編集者 福田清峰の I Love You

「5年愛される本づくり、そして10年愛される本づくりへ」をモットーに書籍を編んでいます。
ゴルフとバードウォッチングにハイキング、山登り好きです。
そして写真、ライブに演劇、バレエ、映画鑑賞と美術館めぐりが大好きな編集者&カメラマンです。


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2011年2月、第83回アカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)、英国アカデミー賞主演女優賞を総ナメにしたのが、ナタリー・ポートマンです。

その作品が「ブラック・スワン」です。
なんの前知識もなくこの作品観ると、たぶん、ビックリします。
この映画のテーマはバレエでも「Swan Lake(白鳥の湖)」でもないのかもしれません。

ただひとつ、頂点に立つということ、それは…

「THE ONLY PERSON STANDING IN YOUR WAY IS YOU.」
君の道をふさぐものは君自身だ、自分を解き放て。
君の邪魔をしているのは君自身だ。

そして、
「I JUST WANT TO BE PERFECT.」
完璧に演じあげること。
完璧でありたいだけ…と。

トップに立つために必要なものは、「技術」+「表現力」はもちろんのこと、誰にでもある「プレッシャー」をどう乗り越えるかということです。
ここまでクリアして、やっとトップ争いの入り口に立つことが許されます。
もうひとつの決め手は、すべてのしがらみを背負う「覚悟」があるかということ。
このことを表現するために、選ばれたのがバレエという設定であり、「白鳥の湖」という作品だったのかと思うくらい、その夢と希望と苦悩と葛藤を美しくも卑劣にも、心の闇を切り裂く悲鳴を描き切っています。

そのすべてを背負うことができたものこそが、頂点に立つことを許されるわけです。
周囲にうごめく数々の欲望にも陰謀にも蓋をして、それを上回る欲望を自分自身の中に持たなくてはいけないということです。
それが、「夢をつかむ」ということ、「American Dream」です。

誰もが憧れるバレエカンパニーのプリンシパル、バレエの世界に限ることではないのかもしれませんが、華やかな世界においてトップに立つことの厳しさが痛いほど伝わってきます。
苦しさ、嫉妬、妬み…そのずべてを跳ね返す、強靭な精神力を育(はぐく)めた者にだけ許される「トップ」という座。
その栄光たるや、頂点に立った者以外にはわからないもう一人の自分が出現してこそ、つかめるものなのです。
何もそんなにいろいろなものを背負ってまで…なんて思っていたら、その時点でトップに立つ資格がないのかもしれません。
この醜いといえるほどの争いに身を投じてトップに立っているからこそ、人に伝わる表現ができるわけです。
それは歌の世界でも演技の世界でも同じこと。
喜怒哀楽を人に伝え、人の心を揺るがす演技をしたり、心がきしむ歌を歌うためには、それだけのものを背負って、そして、消化していなくてはいけないということです。

と、かなり心理戦的なストーリーなのですが、そこにスリラー映画らしく、ガンガン画面の切り替えのタイミングでショッキングな展開を味わわせてくれます。
ニナ・セイヤーズ(ナタリー・ポートマン)の背中から黒鳥の羽が生えてきたり、それはそれは、なかなかB級的なノリというか、制作というか…。

とにかく、美しく臆病で繊細な白鳥は踊れても、官能的な悪魔の黒鳥は踊れない…
これが、ニナの課題となります。
一人の人間がひとつの舞台で、善と悪を演じ切る難しさ、そして「白鳥の湖」という作品のテーマ性がこの映画のテーマとぴったり合っているので、「白鳥の湖」を知っていると、話が感動的に完結します。
となると、「白鳥の湖」ありき、「白鳥」「黒鳥」ありきで作品がつくられたということになり、素敵な「バレエ映画」と言ってもいいのかもしれません。

バレエ映画といえば、最近では「ダンシング・チャップリン 」がありますが、こちらはバレエの楽しさ美しさ、奥深さを巧みに表現した作品です。
が、バレエの舞台裏とバレリーナの苦悩にカンパニーを絡めたスリラー映画も、やっぱり立派なバレエ映画だと思います。

黒鳥の表現力と言えば、「白鳥の湖」を世界で一番踊っている、この人イリーナ・コレスニコヴァ の表現力かもしれません。
あそこまで、白鳥と黒鳥のスイッチを切り替える表現力、本当に見事だと思います。
そして、王子を、観客を、一瞬ゾッくっとするくらいに引き込む瞬間がなければ、王子はオデット(白鳥)への愛を誓いながらもオディール(黒鳥)に一目惚れしてしまうことはありません。
その表情、表現力、イリーナ・コレスニコヴァ の演じるオディールは見事です。
私もドキッとしました。

この作品「ブラック・スワン」の面白いところは白鳥、黒鳥という呼び方をして、決してオデット、オディールという呼び方をしません。
そのあたり、スリラー映画に重きを置いているのかな。

その黒鳥の踊り、悪の分身への変身、力強く威圧的に情熱的に誘惑する官能的な表現力がニナには足りないわけです。
芸術監督のトマ・ルロワ(ヴァンサン・カッセル)がニナに指示したのは、自分自身に触れて感じること、そして男性であるトマのことを感じること。
これは官能を体験していない者にとって表現しようのないことなのかもしれません。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。  トマ(右)

ニナのオナニーシーンやリリー(ミラ・クニス)とのレズシーンはとても見応えがあります。
本当に、ナタリー・ポートマン、素敵な女性になりました。
いい女です。
これも彼女の表現力、最大限のエロチックを見せてくれます。

そして、リリーの官能的な表現力がニナを苦しめますが、そのリリーとのSEX(レズシーン)でニナは目覚め、官能の世界を体験します。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。  ミラ・クニス

「White dreams. Black obsession.」
純白の野心は、やがて漆黒の狂気に変わる。
ニナが新しい「白鳥の湖」の女王役になったとき、その座を追われた前女王のベス (ウィノナ・ライダー)に、いわれもない嫌み、屈辱的な言葉を浴びせられます。
ここでもニナは、妬み、恨み、絶望を背負うことになるのです。
最近のウィノナ・ライダーはこういう役所にピッタリはまり役です。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。  ウィノナ・ライダー(右)

白鳥を演じるニナ、本当に美しいです。
随所に観られる真剣なまなざし、困惑した表情、そして愛くるしい笑顔、どれをとっても、オードリー・ヘップバーンの再来を彷彿させてくれます。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。

バレリーナとしての夢をニナを身ごもったことであきらめ、ニナを自分の分身のように育てる、ある意味狂気的な母親エリカ・セイヤーズ(バーバーラ・ハーシー)、異常な怖さを発揮しています。
そして、その母親が何も言わせないステージママなのかと思えば、土壇場では自分のかわいい娘のままでいてほしいと引いてしまうのです。
そこが、一流になれる者となれない者との境なのでしょう、
ニナは一流になることを選びます。
そんな母親からの脱却もよく描けています。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。  バーバーラ・ハーシー(左)

この映画のキーポイントは鏡です。
それが幻覚か現実か、わからなくなるタイミングはおそらく、鏡の中の自分に恐怖を感じ、気持ちが負けたとき幻覚に支配されるのです。

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。

心の闇に囚われたとき、“もう一人の自分が”目を覚まします。

本番の舞台で白鳥を演じきれずに、控え室に戻るとリリーが「黒鳥はあたしが踊ってあげる」とニナを挑発します。
その言葉に怒りを抑えきれなかったニナはリリーを殺してしまいます。
見事に黒鳥へ変身したニナ。
変身していく様、すごいです。
獣のようです。
この演技、まさにアカデミー主演女優賞に偽りなしです
そして、黒鳥を演じきり、控え室に戻ると、そこにはリリーの死体が…

福田清峰の演劇と映画と写真が大好きな日々。

すべては自分に打ち勝つこと。
自分の心の中にある幻覚に打ち勝つことです。
「THE ONLY PERSON STANDING IN YOUR WAY IS YOU.」

「白鳥の湖」のラストシーン、この映画では、白鳥が湖に身を投じて死を選びます。
王子とともにではなく、ひとりでです。
その意味は?
死を持って物語が終わる、つまり死を持って演じ切る、ということはニナはラストシーンで自らの命を絶つことになるわけです。
それが、「I JUST WANT TO BE PERFECT.」となるわけです。

感動的な幕切れです。
が、しかし、しいていえばニューヨーク・シティ・バレエ団の協力を得ているのですから、バレエの舞台セットをもう少しなんとかしてほしかったです。
「白鳥の湖」を、バレエ作品としても見せてほしかった気がします。

いずれにせよ、ナタリー・ポートマン、すばらしいです。
この映画、彼女にとってはすべてを手に入れる作品となりましたね。
2010年12月、共演したフランス人振付師のベンジャミン・ミルビエとの婚約そして妊娠を発表しています。
そうえいば、アカデミー賞の授賞式は妊婦姿でしたね。

 

ナタリー・ポートマンといえば、レオン完全版   の子役が印象的でした。


クローサー では、ストリッパー役を熱演し、ゴールデングローブ賞助演女優賞受賞、アカデミー助演女優賞にもノミネートされました。


こちら、ちょっと気になる作品です。


ブラック・スワン (ナタリー・ポートマン 主演) [DVD]
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ブラック・スワン オリジナル・サウンドトラック
サントラ
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