2021年 学力テストC国語レビュー | 進学教室FiveSchools OFFICIAL BLOG

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大問1(俳句と鑑賞文)

相変わらず、道コン、入試とは一線を画して「韻文(詩・短歌・俳句)」を出題し続ける学テ。

わたしはこれはこれでアリだと思っています。

別に学テが入試と同じ形式で問題を作らねばならない義理もなし。

学テは学テとして、中学国語の学習範囲をまんべんなく問うて行くのである。そういう気概で韻文を出し続けるのはわたしはむしろ好感を持っています。

 

ただ、毎回言いますが、受験生の方は「学テみたいな問題が入試でも出るんだ」と思ってはいけない、ということ。

学テで点が取れたからと言って、同じように入試で点が取れるとは思わないこと。

これはこれ、それはそれの精神で今後入試に向かうことが必要です。

 

問1

直前部

「秩父の子が、どの子も腹を出していた。曼殊沙華が咲いていた」

「このまま俳句にすれば」

の2か所を抑えれば答えは容易にウだとわかります。

 

問2

切れ字の基礎知識です。

他にも本当はいっぱいあるのですが、実質入試で出る可能性があるのは

「や・かな・けり」

ですので、この3種類はマストで覚えておきましょう。

(ごく稀に他の切れ字も出ますが、キリがないので……)

 

問3

多くの生徒が

 

「唄に合わせての手拍子のようなもので、等間隔同音程で続きますから」

 

を選んで✕になったのでは。

なぜこれがダメかというと、1点目は「~のようなもの」の説明が完全に「比喩」になっているから。国語の解答では、基本的に比喩を使って答えてはいけないルールになっています。

 

もう1点、この解答だと「主語」が何だかわからなくなってしまうから・

「何が」手拍子のようなものなのか、「何が」同音程で続くのか、主語が示されない部分が正解になるとも考えにくい。

その前に「日本語は」と主語が明示されていて、しかも比喩を使わず説明している場所を正解にすべきなのです。

 

問3の答えは出せたとしても、そもそもこの文章の前半部、何を言っているか意味が理解できたでしょうか。

 

この文章、英語と比較して考えてみないとなかなかイメージつかみにくいでしょうね。

 

英語では「アクセント」が多くの単語についていて、つまり「強く読む場所」と「弱く読む場所」がハッキリしていますよね。

「interesting」と冒頭の「イ」を強く読む。

「today」だと後ろの「デイ」のほうを強く読む、みたいな。

 

その反面、日本語は「どこを強く読む」ということがほとんど決まっておらず、だいたい平板な感じでのっぺりと発音しますよね。

こういう日本語と英語の差をイメージしてみると、筆者が言いたいことがより具体的にわかってくるかと思います。

 

また、その次の段落の

「奇数の音で発音すると、強い音が出る」

というのはわたしもこれまで考えたことがなく、「なるほど!」と納得してしまいました。

 

いろいろ「奇数の言葉」と「偶数の言葉」を比べて発音してみると面白いですよ。

たしかに、奇数の言葉に比べて偶数の場合はどうも締まりがないというか、強い調子で読みにくいというか。

「バカヤロウ(5=奇数)」と言えば強く発音できるけど、「バカなヤツめ(6=偶数)」というと少し冷静にしゃべっている感じになってしまいますよね。意味は同じであっても。

 

ただ、この文章ってどれも「音声」にかかわる内容なので、「音読」ができない環境だとなかなか味わえないというか、その意味では「黙読」を要求される試験にはあまり合っていない気はするのですが……

それを差し引いても、文章内容としてすごく面白く読めました。

今年の学テ、出典がすごくいいですよね。

 

問4

表現技法のド基本なので、これがわからなかった生徒はかなりヤバイと思って勉強したほうがいいです。

 

問5

これも、俳句と鑑賞文を対応させるだけで答えはわかるはずですが……

この問題間違えた生徒、そもそも、問題文をちゃんと読んでいなかったのでは。

この空欄部分が「俳句の意味を説明している」ということを見落として、「本文全体の内容を説明している」と考えてしまった生徒が多いのではないか、と予想しています。

あくまでも俳句そのものを説明しなければならないのですから、いくら本文に書いてある言葉でも、俳句の内容説明になっていなければ✕ですよ。

 

大問2(小説)

問1

5だけちょっと難しいですかね。

「重役出勤」って言葉じたい、まず中学生の使用語彙には無いでしょうし……

何らかのマンガ、小説、映画などで、自分で覚える機会がなければ普通はわからないものかもしれません。

 

問2

活用のごく基本的な問題。

大問1の問4同様、これがわからないのであれば危機感持ったほうがよいです。

上位校を受ける生徒ならほぼ全員できてなくてはならない問題です。

 

問3

ちょっと面白いですね。

「頭の体操」みたいな。

小説といえば「人物の気持ち」を考える、と相場は決まっていますが、このように「単純な日本語の理解」を問う問題が徐々に増えてきている気はします。

新井紀子の影響でしょうかね。

 

問4

「檻みたい」は比喩なので、比喩は必ず「共通性」を答えるという法則があります。

いま主人公が置かれた状況と、「(動物園や刑務所などの)檻」との共通性を考えながら、本文を拾っていけばよいのです。

 

①「不本意に、押し込められている」「本当は修学旅行に行きたい」

→動物園の動物も、刑務所の囚人も自由を奪われている

 

②「話したこともないメンバーと一緒にいなければならない」

→動物園の動物も、刑務所の囚人も知らない動物、知らない囚人と一緒に入れられる。

 

③「光のストライプ」

→単純に、形が似ている。

 

以上3点をまとめれば良いことがわかります。

①が抜け落ちやすいですかね。

 

あとは特にコメントすることがないかな、と。

 

しかし、この小説、文体のクセがすごい……

個人的にはかなり読みにくい小説なのですが、みなさんはいかがだったでしょうか。

 

大問3(古文)

現代語訳

訳は基本的に直訳ベースで、意訳せずに訳せるところはできるだけ意訳せずに訳しています。

 

今となっては昔のことだが、紀貫之が土佐守になって、都から土佐に下っているうちに、任期終わりの年に、七つか八つぐらいの子で、言葉では言い表せないほど趣のある(かわいい)子を、この上なくかわいがっていたのだが、しばらく病気にかかって亡くなってしまったので、(貫之は)泣いて混乱して、病気になりそうなぐらい(死んだ子のことを)思い焦がれているうちに、数か月が経ってしまったので、「こうしてばかりいられるだろうか、いや、いられない。京へ上ろう」と思ったときにも、「子供が、ここで何々をしていたなぁ」などとつい思い出してしまい、非常に悲しかったので、柱に書きつけた。

「都へ(帰ろう)と思うたびに悲しいのは、帰らない人(=死んだ子)がいるからなのだなぁ」

と書きつけた歌は、今もまだ残っている。

 

大まかな意味が取れれば解答は全く問題なくできるはずなので、訳すときのポイントになりそうなところをリストアップしておきましょう。

 

・「(地名)守」は基本的に歴史で勉強する「国司」のことです。

・「七八ばかりの子の」→「の」は「同格」と呼ばれる働きで、ふつうは「で」と訳します。

・2行目「病づく」の部分は、「病気の子」はすでに死んでしまっているので、主語は「病気の子」ではありません。「病気になりそうなぐらい」という意味。

・2行目「月ごろ」の「ごろ」は「複数」を表す、英語でいう「many」あるいは「some」のような意味。「月ごろ=for some/many months」という感じ。

・3行目「かくて=こうして、このようにして」はとてもよく出るので必ず覚えておく。その後の「かは」は「反語」を表す表現。「~だろうか、いや~ではない」と訳す。

 

このあたりがクリアーできていれば(大きく間違えていなければ)十分満点を狙えたはずです。

 

大問4(説明文)

問1

これも5の「革」が若干難しいかな? という印象です。

 

問2

直後の「本当の『自動』ではない」から考えれば答えが出ます。

空欄直後に「その理由は」としっかり書いてありますので、パターンどおりに解答できる、まさに基本問題という感じ。

 

問5

これも「比喩」ですね。

今回の学テC、大問2(問4・問6)もそうでしたし、要所要所に比喩をストレートに問う問題が散りばめられています。

意図的なのかどうかわかりませんが、比喩は国語読解における一つの重要なファクターですので、今回の学テCを通じて比喩読解のコツをしっかりつかみたいところですね。

 

「スマホ・ネット」が「本当の自然(環境)」のはずがないですから、「自然(環境)と同様の存在、似ている存在だ」と言っていると解釈しなくてはならない。

これが比喩の最大のポイント。

 

そして、「何が同様なのか」「何が似ているのか」を考えていく。

 

すると、この段階で選択肢を見ただけでも答えはアしかあり得ないとわかってしまうのですね。

自然も「人間が生まれたときから存在する、当たり前のもの」

ネットもスマホも「今の若者にとっては生まれたときから存在する、当たり前のもの」

自然―ネット・スマホの「共通性」が見いだせる選択肢はアしかないのです。

 

イもウもエも、「どこが自然(環境)と似ているのか」の説明にならないので、たとえ正しい内容が書かれていても◎にはならないのです。

「共通性」を言えていない選択肢、解答は、比喩の問題では絶対に◎にならない。

この法則を十分に理解してください。

 

問6

この文章は「スマホ・ネットが出てくる前」と「後」を対比して説明しているので、「旧来のビジョン」はつまり「スマホ・ネットが出てくる前」の時代を指すわけです。

「近代以降」という言葉を聞くと「旧来=古い」というイメージが持てないかもしれませんが、一般的に「近代」というのは「産業革命」とともにスタートした時代ですので、実は結構古いものなのですね。

 

問7

「主体」「客体」という言葉を使う、という指示がほとんど解答のネタバレのようなものなので、すぐに空欄Aの直後が解答の根拠になることが分かってしまいます。

記述問題ではありますが、わりと答えやすかったのではないでしょうか。

問題文の「指示」はそれ自体が答えを出すためのヒントとなる。

これも、入試に向けて肝に銘じておかねばならない重要なポイントです。

 

全体を通して

2020年の学テABCで、

・問題文の指示が異常に細かく、本文読解以前に「問題文を見たかどうか」だけの試験になっている

・「具体例」を答えさせることになぜか異常にこだわった結果、試験としてイビツな形になってしまっている

・意味のない長い抜き出し問題など、受験生のことを考えない不合理な出題形式が多い

 

と、かなり批判的にコメントしてきた過去があるのですが、学テCに限らず2021年の学テは全体的に妥当な出題形式になっていたと思いますし、出題の内容、模範解答の内容もいずれも妥当なものになっていたように感じます。

(ただ、それでも入試本番とはかなり差異がありますが。どっちが良いとか悪いとかではなく)

 

去年に比べて試験として大幅に質が向上し、受験生の国語力アップに寄与する問題へと進化したのではないでしょうか。

すべての中3生が入試において指標にすると言っても過言ではない学力テストABCですから、学テの質が良化することは北海道の中高生全体にプラスになることだと喜ばしく感じております。

 

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