高齢の母と出かけたときのこと。

 

電車に乗り込むとすでに席は埋め尽くされ、

どこも空いていない状態になっていました。

仕方がないと、

手すりがあるところに移動して立っていました。

 

いつも母と電車に乗ると

殆どの方が席を代わってくださり、

有難い反面、

申し訳ない気持ちになるのですが、

誰もそのような素振りを見せてくれないと、

逆に

「どなたか席を空けてくださらないかな」

と、思ってしまいます。

なんとも嫌な気持ちです。

 

高齢者なのだから、

席を変わっていただくことは

当たり前のように思っている自分に

抵抗を感じ、

母にその話をしたら、

母も同じような気持ちになると

言っていました。

 

今回もそんな気持ちを掻き消すように、

外の景色を見ながら立っていると、

離れた場所から

70代くらいの男性がやってきて、

わたしたちの後ろの座席前に立ち、

座っているスーツ姿の若い男性二人に

静かに声を掛けていました。

 

何をお話していたのか

聞こえませんでしたが、

そのあとすぐに

「おばあさん、どうぞ座ってください」

と。

 

振り向くと、

二人の男性が空けた席に

座るよう促してくださいました。

 

遠くで母に気がつき、

気にかけてくださっていたのでしょう。

 

他の方に声をかけず、

サラリーマン風の男性に声をかけた

ジャケット姿のおじさまは、

おそらく以前に部下を指導した

ご経験があるのではと思いました。

 

すぐさま席を代わってくださった

男性二人にはもちろんですが、

素敵なおじさまの勇気と気遣いに、

大きな優しさを感じたひと時でした。

 

今でも思い出すたび、

心が温かくなります。