数値バカ | ほたるいかの書きつけ

数値バカ

参院選を前に、8団体が民主党と自民党の参院選公約について採点した、という記事が出ているのですが。もうなんというかアホかと。
 「消費増税、公約化評価 8団体検証、民主説明不足に苦言」(『朝日』2010年6月21日0時19分)
 「民主の実績・公約に厳しい評価…8団体検証」(『読売』2010年6月20日21時25分)

 8団体というのは、経済同友会、連合、日本総合研究所、PHP総合研究所、言論NPO、チーム・ポリシーウォッチ、日本青年会議所、全国知事会だそうで(後ろ2団体は採点はせず)。いやもうあまりにバカバカしいので内容については触れないが、それ以外のところで2点重大な問題があるのでそこだけ。

 見てわかる通り、これらの団体は方向性が大きく異なるものが含まれている。端的に言えば、経営者団体(や経営者に近い団体)と、労働者の団体だ。これらは何を重視すべきかというところで価値観を大きく異にするものだろう。そういった団体が「採点」して、さらに「平均点」を出すことに一体何の意味があるのか。数値化すれば客観的な指標になるというアホな思想がここでも何の疑問も差し挟まれずまかり通っているのか。どういう指標で採点したのかの方が圧倒的に重要だろうが。

 もう1点、おそらくより深刻だと思われるのが、政治という価値観がダイレクトに反映されるものに対して、何か客観的な採点基準のようなものがある、という妄想に、マスメディアが囚われているという点である。つまり、「どういう指標で採点したのか」を問う必要はない、あるいは問うべきであるという発想すらない、というマスメディアの現実である。これは実に恐ろしいことで、異なる価値観を持つ人々から構成される社会をどう折り合いをつけてまとめていくか、という発想が生まれない、ということを意味する。自分たちと違う発想の人々がいるなどということすら考えず、特定の価値観を押しつけているという自覚すらなく押しつけることにつながりかねないからだ。

 選挙のたびにこの手の「採点」が出てくるのだが、デスクは何も指摘しないのか。そこまで腐っているのか。自分たちが公平な第三者であるという幻想に浸っていたいのか。ヤレヤレだ。