今回は文献紹介です。現在ICUローテ中の初期研修医の藤本先生が先日の抄読会で読んでくれたものです。Critical Careの5月号から以下の文献です。

『Incidence of hypotension according to the discontinuation order of vasopressors in the management of septic shock: a prospective randomized trial(DOVSS)』

敗血症性ショックにおけるカテコラミンの第1選択はノルアドレナリン(NAd)ですが、NAdを使用しても平均血圧が65mmHgを下回る場合には、ピトレシン(AVP)が併用される事が多いです。そして循環が安定し次第、カテコラミンの副作用を減らすために徐々にカテコラミンサポートを減らしていく必要があります。循環が安定した後でも、NAd・AVPの減量により低血圧を来たす報告があり、注意が必要です。しかし敗血症性ショックで循環の安定が得られた後のカテコラミンの減量方法について述べたstudyはほとんどありません。2010年のJ Crit Careのretrospective cohort studyは、NAdより先にAVPを減量していく事により重大な低血圧を来たしたとの結果でした。また最近では2017年のJ Intensive Care Medのretrospective cohort studyでも同様の結果でした。感覚的にも、NAdで血圧が上昇せず、AVPまで使用して血圧が上昇したのなら、減量する場合はNAdからの方が血圧低下を来たしにくいだろうという事で、
普段はNAdから減量している事がほとんどです。

本試験は韓国の単施設(サムスンメディカルセンター)で行われた前向きランダム化二重盲検試験です。

対象は成人の敗血症性ショックで、NAdとAVPを併用し、NAd 0.3γ、AVP 1.8U/hでMAP≧65mmHgを少なくとも2時間維持している患者です。EGDTに則って蘇生を行なっています。対象患者はNAd群(NAdから減量していく)とAVP群(AVPから減量していく)に割り付けます。

Primary outcome:1つ目のカテコラミンを減量してから1時間後の低血圧の発症
Secondary outcome:試験全体の中での低血圧の発症、ICU内死亡率、28日死亡率、院内死亡率など
です。

結果ですが、AVP群(40人)、NAd群(38人)に分かれ、1つ目のカテコラミンを減量してから1時間後の低血圧の発症はNAd群で有意に多いという、先行研究とは逆の結果でした。しかし試験全体の中での低血圧の発症に関しては両群で差はなく、院内死亡率はAVP群で優位に高いという結果でした。先行研究と逆の結果となった原因として、
①先行研究ではNAd群でよりステロイド併用率が高かったが、本研究では両群で差がなかった
②NAdの効果半減期がAVPより短い(AVP 10~20分、NAd 2~2.5分)
などが考えられると筆者は述べています。

Limitationとしては、
①単施設研究である
②AVP群でベースラインとして、P/F比が小さく、機械換気を要した頻度が高かった事から、低酸素血症によってAVP分泌が促進され、低血圧を来たしにくかった可能性がある
③臨床的に重要なSecondary outcome(ICU死亡率やICU在室日数)での有意差を見出す事が出来なかった
などがあると筆者は述べています。

今回の文献からは敗血症性ショックで、NAdとAVPを併用していたが、循環が安定して、カテコラミンを減量する場合は、全例NAdからが適切とは言えず、2剤の効果半減期と患者毎のAVP分泌量を考慮し、AVPからも考慮すべきという事が言えるのではないかと思います。抄読会中に議論になったのは、本試験で、院内死亡がAVP群で23人(57.5%)、NAd群で13人(34.2%)、トータルでは78人中36人と約半数が死亡していました。敗血症性ショックの死亡率としては高い印象があり、今後、症例数を増やした多施設研究が行われる事を期待します。今回は以上です。