食事に戻る前に、とジャコウネズミ博士、切り抜いたテーブルを♥️型に戻さなければいかんな。杖を抜くから少し持ち上げてくれんかね?
よしきた、とヘムル署長が手を添えました。ひとりで持たん方がいいぞ。ん、なぜだね?結構重いからさ。なあにこの程度大丈夫さ。なら杖を抜くぞ。
うわあ、とヘムル署長は落ちたテーブル板もろとも床に叩きつけられました。ほら言わんことじゃない、指が挟まれなかっただけでも幸とすべきじゃろ。
博士はさっきどうやってこれを持ったのですかな、と署長はスティンキーと二人がかりでようやく持ち上げながら、訊きました。たしか片手で持ってなさったでしょう、片手はノコギリを持っていたんだから。
ああそれは、まだこれから(とテーブルを指して)切り抜いたばかりで活きが良かったからさ。今は硬直して重くなった。赤ん坊が眠りに着くと重くなるのと同じだな。さて、それを元の♥️型にはめ込まないといかん。
そう簡単にはいかんでしょう、と署長。切り抜いた時に結構おがくずが出ているから、その分スカスカになるはずだ。はめても落ちてしまいますよ。ここはウェイターに言ってテーブルを替えてもらうか……。
そんなことをしたらわれわれがいかさまトランプをしていたとバラすようなもんじゃないかね?
釘ならありますぜ、とおずおずとスティンキーは釘を取り出し、これで裏から何かブリッジを当てて留めればどうですか?
今さらブリッジなどババ抜きで十分堪能したよ、とヘムレンさん。それよりなんで釘なんぞ持っているのかね、と署長。
最近始めたんです、訪問販売ってやつですが。ゴム紐は全然でしたけど、主婦は家にどれだけ釘の予備があるか知らないんで結構売れるんですよ。署長のお宅はどうですか?
そういえば予備の釘など考えたことがないな。よし、10ダースほど買う!
いや、今はテーブルを直すんでしょう?お使いになりますか博士?
いらんよ、と博士はにやりと笑って、まあそのままはめ込んでくれたまえ。
ゆるいですよ博士。
では四辺が逆になるようにはめ直してくれないか。
はまった!ぴったりです、隙間もありません。
実際は裏は削れてるがね、四辺の位置をずらせば♥️型にきつくはまるように切り抜いておいたのだ。
実用的な技術にも詳しいんだね、とヘムレンさん。
いやなに、いわゆる日曜大工というやつさ。もっとも日曜の意味は知らんが。
(58)
ええと続きだったな、どこまで話は進んだっけ?
ヘムル署長たちがテーブルを直したところだよ、と偽ムーミン。ほほう、とたちまちムーミンパパは皮肉を浴びせかけました。よそのテーブルのことの方が家庭の会話より気にかかるのかね?実は私もさっきから気になっているがね。あちらはなにしろムーミン谷の法を自由にできる方々だし、どさくさまぎれに何やらしてはならないことまでやってらっしゃるご様子だ。しかもいい歳どころか現役長老格に当る方々が、まあスティンキーは従者みたいなものだから別としても、好き好んで♥️型にテーブルを寄せて座ってらっしゃるとはいったいどういうことだろう?悪だくみをしております、といわんばかりではないかねムーミン?
やたら絡むなあこの親父、と偽ムーミンは閉口しましたが、その上ムーミンママが珍しく積極的にまああなた、そんなことを言われてもこの子が困っているじゃありませんか、ととりなしてくれたのもかえって不安をかき立てられました。ひょっとしたらこのおばさんはとっくにおれの正体をお見通しなのではなかろうか。ならばおれを泳がしておく理由はただ一つ、ムーミンパパとおれの掛け合いをせせら笑っていたいからとしか考えられない。あるいは実の息子の身を案じて、偽者のおれが無事に息子を返すよう一緒にムーミンパパをあざむいてくれているのかもしれない。だが普通そんなに殊勝なことをするか?と(偽)ムーミンがせわしなく考えをめぐらせていると、
・熟女パブの話ですよ。
とあっけなくムーミンママが話題を戻したので偽ムーミンは一気に混乱し、
・それと熟女サロン、
とつられてつけ加えてしまいました。偽ムーミンだってそんな話題はもううんざりだったのです。
おお、とその割にはムーミンパパの反応は薄く、さも面倒くさそうに、どこまで話したんだっけなあ?
共通点は済んだから、今度は相違点の話だよ、と半ばやけくそ、毒食らわば皿の気分で偽ムーミンは吐き捨てました。
(52)で終っときゃ良かったな、で作者死亡で未完。しかしそう都合も良くいくまい。それじゃ、相違点に行こう。わざわざ熟女パブと熟女サロンの二種類があるのは、一方は熟女が働く店、もう一方は熟女が遊ぶための店に違いない。以上話はおしまい。
次に話が振られるのはわしらの番だな、とヘムレンさんは言いました。これだけ期待値が下がるといっそ楽かもしれんぞ。
次回、第六章完。
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