男の喫茶店

男の喫茶店

昔、日々の中で書き留めていた詩やエッセイに手直しをしながら載せていきます。

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今の私は生きていない

流されているだけ

人混みが放つ矢印に流されている

地下へ下る階段に吸い込まれ

改札口があればカードをかざす

つり革を持つ手に力が入らない

窓ガラスに歪んだ顔が映る

その向こう側で走り去る無根の時間

このままでいいはずがない

次の駅で引き返そう

夏の書き起こしは

冬の朗読に耐えそうもない

体温のエスケープ

そうであるように

おとといの月の輝きは

誰の心にも刺さらない


夏の幻想は

冬の曇天に映えない

過ぎ去る

透明は過ぎ去る

そうであるように

おとといの月の輝きは

誰の心にも残らない


白黒写真が映す無味は

夜の平然を連れてくる

色付の物ばかりに押されて

過去までも凹んできた

そう気づくうちはまだいいが

その気づき自体も

もう色素を帯びているから

色の中で今が見えなくなる