北にて歌う 2024~その5 夢見るやうに 氏家珠美(新墾) 蓋をされ忘れ去りにき記憶なり昨日のやうに鮮やかに今 在りし日に父の残した全集は標となりぬ『風と共に去りぬ』 朝露の残る草むら身を潜め取りしキリギリス稚き思い出 甘い実のなる木探して味見する梯子をかけて採りつくさむと 艶々と紅く光れる宝石の葉をかき分けて摘みし桜桃 鈴なりのサクランボから選りすぐり双子を見つけし幼きの声 新盆の母の墓参に好きだった夢みるやうな青き紫陽花