北にて歌う2024~その2 敗北の夏 石澤利夫(ときわ短歌) 一瞬にして人の命を奪ひたる原爆の無念を思ふ八月 八月の忘るるとなく忘れ居し二十数万原爆に死す 十四歳母を泣かした戦日の駅に佇み雨の音きく 征くときも帰るときにも上野駅人込みに座す敗北の夏 マイナンバーは赤紙の如し招集令状四十過ぎし叔父にも来てし グランドに男爵植ゑて敗北の児童らが喜ぶ心重き日を 九十のこの坂登りつ悟りける此の道ひとつ行く外になし