最終話 年末恒例 クリスマスキャロル 4 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




  スクルージは 叫びました。


「 何ということだ~! クラチットは どこだ~! 」


  しかし スクルージの店に クラチットは いませんでした。



  あわてて 彼の家に行っても クラチットはいませんでした。
 
  彼は病気の息子のために 薄給のスクルージの仕事を辞め

  より高給を求め 大英帝国下の植民地に 出稼ぎに行ったのです。



  しかし 貧しいクラチット家の息子のティムは、

  時遅く 医師に頻繁にかかることも出来ず、

  薬も満足に買えず、母の看護も虚しく

  すでに亡くなってしいまいました。

  教会の墓地に ティムの名の小さな墓標が 建てられていました。


「 あぁぁ まだ あんなに 小さな子どもなのに 、、、 」
 

  幼い日の 自分の姿を重ねあわせ

  スクルージは さめざめと ひとしきり泣きました。



「 ところで ワシの墓は どこに建てられるのだろう ? 」


「 自分の墓が 見たいのか ? 」

  未来の精霊が 言いました。


「 もちろんじゃ 」


「 ならば 自分の眼で 確かめるがよい、

  お前の人生の結末に ふさわしい墓だ うぉっほほほほ ♪ 」
  

「 ワシの業績に相応しく 

  さぞやスタイリッシュで 立派な墓だろうからな 」


  ところが 身寄りの無かったスクルージは

  死後、財産を全て国に没収され、

  個人の墓を 建てられる事もなく、

  彼の遺体は、無縁者の共同墓地に、

  生ごみでも捨てるように、

  粗雑にポイと埋葬されていました。


「 何ということだ ~! 財産が山ほどあるのに 

  行き倒れの者と 同じ末路だとは ~! 

  例え、守銭奴と人に嫌われようと 死に物狂いで

  人生の全てをかけて 働いて来たのに 」


  良く見ると 立て看板がありました。


「 なんじゃ ? どれどれ ? 

  近頃 老眼で乱視も入って 、、、 」


  そこには 

『 ざまぁみろ 守銭奴 スクルージ 

  二度と 戻ってくるんじゃねぇぞ ! 』

  と 殴り書きしてありました。



「 あぁぁああ ! なんという事じゃ ! 

  死んでからも 罵倒され、辱められるとは !

  ワシの人生とは ただの自己満足の 徒労じゃったのか ?

  お金とは、金儲けとは いったい なんだったのじゃ ~!?  」


  哀れで、悲惨な未来を見せつけられて、

  スクルージは精霊の黒い衣服に とりすがりました。


「 この忌まわしい未来は 絶対に変わらないものなのか ? 

  それとも これからの 心がけ次第で 

  変えることが 出来るものなのですかぁぁああ ~!? 」


「 泣き言っても お前の寿命は変わらないぞぉ

  強欲な人生が お前の持ち味だったのではないのかぃ ?

  長年の生き方は いまさら変えられないのではないのかなぁ ? 

  生きている時も 死んでからも 人々に侮蔑される人生

  悪い意味で 一本 筋が通ってる、
 
  だから このままでも いいんじゃなぃ ? 

  うぉっほほほほほ ♪ 」


「 嫌じゃ !

  どうせ死ぬとしても このままでは嫌じゃ ! 

  もうワシは 以前のようなワシじゃない、

  こんな人生 ダメじゃ ! 目が覚めました。

  どうか この未来を変えてもいいと 

  変えることが出来ると 言ってくだされぇぇええ ~! 」


「 人は 未来を変えることが出来るぞ 

  どんな 人生も 未来も

  自分自身で切り開くのだ、

  それは 例え 人生の末期であってもだ。

  そして自分のためだけでなく 他者のためにも

  より良い道を 指し示すことが出来るのだ 

  暗い夜に 燈火を照らすように 

  人々に 希望の光を 投げかけることも出来る 

  それが 今の お前の望みなのかぁぁ~あん ? 」


「 えぇ えぇ 強欲な生き方は もう終りにします、 

  それには 何の価値が無いことを思い知りました。

  これからは 人の役に立つような

  そんな 日々を送りますぅぅうう 」


  スクルージは 精霊の衣にすがりつきました。



「 よし、わかった それならば 、、、、 」



















  はっとして、我に返ると 

  スクルージは 自分がベッドのシーツを掴んで

  さめざめと 涙と鼻水を垂らして

  ぐしゃぐしゃに泣いていることに気づきました、

  あたりを見渡し、自分の部屋にいることを知りました、

  すでに、夜は明けていました。


「 おぉぉぉ ワシは まだ生きているぞぉぉぉお !
  
  朝だ~! 朝だ~よ ! 朝日が昇る ~♪ 

  いや まてよ、いつの朝だ ? 

  もう、クリスマスは終わったのか ? 」


  窓枠へ飛びつき、窓を開け、下を歩く子どもに話しかけました。


「 坊や 今日は いつだい ? 」


「 けっけっけ ♪

  くたばり損ないの 欲ボケのスクルージさん、

  本当にボケたのかい ? 今日はクリスマスだよ~ ♪ 」


  スクルージは、今日がクリスマス当日だと知りました。

 
「 今日がクリスマスだって ! ありがたい !

  坊や そこの肉屋に でっかい七面鳥があるじゃろう、

  あれを ある家へ届けてほしいんじゃ、

  すぐ肉屋の人を呼んできてくれたら、

  君には お駄賃をあげるよ ! 」



「 ホントにぃ~? ケチんぼなのに 変だなぁ 

  この世が 滅びる予兆じゃぁないよね ?

  マヤ暦の終りは まだ100年以上先だし 」



  子供は 半信半疑で走り出しました、

  それを見ながらスクルージは言いました。


「 クラチット家に贈ってやるんじゃ、

  ティムの体より大きい 七面鳥をな !

  そして ティムを医者に診させるんじゃ !

  そうだ ワトソン先生なら暇そうだから すぐ診てくれるだろう、

  今なら まだ間に合うはずじゃ、子供は未来の希望じゃ。

  メリー・クリスマス !

  みんなに、メリー・クリスマス ~♪ 」


  スクルージにとって、生まれて初めての

  幸せな気持ちの クリスマスが訪れました。

  そして その日から 篤志家としての生き方を始めました。


「 どうせ金は 生きている時にしか使えないんじゃ

  これからは 生きた金の使い方をするのじゃ ~ ! 」


  スクルージは 貧しくて 

  満足に食事にありつけない人々のために、

  クリスマスシーズンの 炊き出しをするようにしました。

  養護施設に寄付をし 基金を作り、

  貧しい者のための 奨学金制度を創設し

  担保のない人にも 低金利で お金を貸しました。

  見違えるように 慈悲深い人となったスクルージに 

  人々は驚きました。



「 強欲じいさん いったい どうしちまったんだ ? 」


「 西から昇ったお日様が 東に沈むんじゃないだろうな ? 」


「 何か たくらんでいるんじゃぁないのかぁ ? 」


「 政界進出とか 政商をめざすんじゃねぇの ? 」


「 新興宗教を始めるとか ? 

  お布施で懐をこやして 贅沢三昧の 牧師や僧侶の話を聞くぞ 」


「 案外 変な薬やってるんじゃねぇ~の ? 」




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「 スクルージさん 街の人達が いろいろ噂していますよ

  あの慈善行為は もっと儲けるための 偽善行為じゃないかとか 」


  クラチットが 言いました


「 言わせておきなさい ワシは目覚めたのじゃ、

  残り少ない人生に 何を成すべきなのかをな。

  慈しみの心を 持たず、

  他者に 思いを巡らせる事の出来ない人間には、

  それ相応の 酷い報いが待ち構えているのだ。

  だから、これでいいのじゃぁぁぁあ ~~~~! 」



  いつしか 善意の輪は 人々に広がり 

  慈しみの心を持つ者が 増えました。

  やがて人々は この街が少しずつ

  変わっていくのを 感じました。

  今まで 暗く淀んでいた町に

  少しずつ 光が射し

  新しい風が 吹いてくるようでした。

  人々は あのクリスマスの日から

  奇跡が 起きたのだと 思いました。


  そして、スクルージは こう言われるようになりました。


「 クリスマスの本当の祝い方だって ?

  それなら スクルージさんに 聞いてみなさい、

  それを 一番良く知っているのは あの人だからね 」




  スクルージは忘れません、

  小さなティムが言った言葉を。

  そして、祈りました。


「 神様、ワシたちを 祝福して下され、

  そして 世界中の すべての人にも 祝福を 、、、、」






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「 えぇぇぇっ ~~~? 」


「 いやぁ なんと お詫びしたらいいやら 」


「 誤診だったんですとう ? ワトソン先生 !

  ワシは まだまだ 生きていられるんですかぁぁぁああ ~?? 」



「 ごめんね スクルージさん 

  あなたは ストレスを抱えて

  栄養失調で、貧血で、胃炎だったみたいだね、

  すっご~く顔色悪くて、やせ細ってるから、

  僕は てっきり 癌かと思ったんだ 」


「 うぬぬ 、、、 」


「 たぶん どんな医者も、そう診断すると思うよ。

  なにせ まだ19世紀だから 」


「 むむ 、、、、、、 」


「 でも なぜか血色も良く 元気になっちゃって、

  スクルージさん まだ当分 大丈夫みたいだよ。

  そうそう ティム君も 徐々に健康を取り戻しているしね。

  良かったじゃないの ♪ 

  もうモルヒネの処方は止めるね、

  変な幻覚とか 見なかった ? わ~はははっ ♪ 」



「 こ の ぉ ぉ お ! 

  や ぶ 医 者 め ぇぇぇ え え ~ !! 」



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「 あぁ 殴ったねぇぇええ ! 

  親父にだって ぶたれたことないのにぃぃぃ

  レストレ~ド警部に 言いつけてやるぅぅ ~ 」



「 こっちは 死ぬより怖い目にあったんじゃ ~! 」



<<  ✩ ぼか ! ✩ ぼか !  >>



「 ひゃぁあ ~! たすけてぇぇええ !

  ホ~△ズ ! 暴行事件だぁぁああ ~!! 」



「 ふふん 一人で解決したまえ ワトソン。

  私は 粗暴な事件には 興味がない。

  私の 関心が向くのは 

  高尚で エレガントな 知的犯罪だけだ、

  浮気調査も お断りぃ ~。

  そして 今は 思索中なのだょぅ 」


「 嘘つけ !

  また コカ△ン7%溶液 やってるな、 

  この ジャンキーめ ! 」









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 スクルージは まだまだ 生きていられるのです、

 でも、それ以後も 彼は善行を重ねました。

 何故ならば 他人の喜びも 自身の喜びとして

 感じることが出来るようになったからでした。




 これは 強欲金持ちの老人と やぶ医者の 

 愚かな 誤診の物語だったのでしょうか、 













        いいえ 


















 それは クリスマスの 小さな奇跡の物語だったのです。
 

    ♪ メリー・クリスマス ♪



        おしまい