親戚のおばさん | ごめんそれほど好きじゃない

ごめんそれほど好きじゃない

好きだけどそれほど熱中してるわけじゃないんです。

お正月、母の実家に集まって三世代でたのしくご馳走をいただいていた時のこと。

 

突然電話が鳴る。

日々暮らしていて、固定電話が鳴るなんてことがほぼほぼない生活を送る私と娘は思わず固まる。娘の家には固定電話すらないし。だいたい訃報や緊急の悪い知らせだからだ。

しかもお正月早々。

 

電話の主は父の兄の嫁だった。御年90歳。

この叔母、父の葬儀の時に用事もないのに無駄に早く来て、お供え物を物色するタチの悪い女。娘とは初対面だったのだが、挨拶を交わしただけで娘が言った。

「あの叔母さん、イケズが顔ににじみ出てて大嫌い」

 

私は驚いた。娘は滅多にそんなことを言わない子だからだ。

そう、まさにイケズ(意地悪の方言)が服を着て歩いているような人間なんだが、初見でよくわかったな(笑)

うちの母親なんて鈍いから未だに気づいてないぞ。

 

そしてコイツ、少し喋って相手が自分より弱いと感じるとすぐさま上から目線で口撃を仕掛けてくる。私は瞬時に反撃を掛ける為、何も言ってこないが、大人しい従姉は言われ放題だったなあ。弱いヤツはその場限りに庇っても無駄だからやられとけばいい、と思っているので助けはしないが。

 

そのイケズ叔母からの電話だと気づいた私と娘は思わずニヤリ。ああ、あいつね、何で人の食事時狙って電話するかね、と割と大きな声で話す。電話口にいる母は多少耳も遠いので聞こえないだろうし、その向こうのイケズ叔母も90だから恐らく聞こえはしないだろう。

 

電話してきた理由はこうだ。

「今年は年賀状が面倒で出せなかったから、来た人皆に順番に電話してんねん」

 

いかにも年だから年賀状が出せない風を装っているが、いや待てよ、イケズ叔母の家は郵便局の隣だ(笑)

しかも健康の為に毎日家の近くの池の周囲をぐるりと3千歩のウォーキングを欠かさない。趣味の友達にはお手紙も書くから年賀状が出せないという理由も妙だ。

 

さほど頭も良くない息子をさも天才のように甘やかし、増長させた結果、フーテンの寅の下位変換のような人間になってしまい、娘はおかしな新興宗教にはまり込み、結果、正月には誰も家に寄りつかず一人で暇を持て余しているようだ。

社交的な人間だから誰かれなしに喋りたいんだろう。

本人も90歳だと知人たちの生死も危うい。

親戚中で、あれほど子育てに失敗している人はいないと日頃から思っているが、本人のプライドは相当なもので一切弱音は吐かない。

そんな叔母に上から目線で何を言われたって…ねえ(笑)

一度めちゃくちゃ偉そうに言われたから、

「自分の息子を先に教育したら?」と大笑いしながら言ってやったら以後一切嫌ごとを言ってこなくなってスッキリ。

どんな子でもオメーの子よりマシだかんな。

 

親戚だから無条件で年賀状を出しているが、正月早々こうやって一軒一軒迷惑電話をかけて回っているとはな。

憎まれっ子世に憚るの言葉通りだわ。

図太いからいつまでも元気でいられるんだろうな。

因みにここの叔父はとても聡明だったので若くして病気で亡くなっている。兄弟の中でうちの父が一番勉強の出来が悪かったもんな(笑)

 

母は鈍いから叔母の思惑に全く気付くことなく、何であんなに郵便局近いのに年賀状出されへんのやろ?と長電話を終えて首を傾げ、すっかり冷めてお餅が固くなってしまったお雑煮を温めなおしていた。

 

私は母の年賀状を代わりに作っているし、叔母の家も毎年、何だかんだでレイアウト印刷は娘か息子が代わりにやっていた筈だ。添え書きはいつも自筆だった。今年はそれすらしてもらえなかった?弱音は吐けないからあえてわざと賀状を出さない体で電話してきた?

 

叔母のバカ息子、自身の軽自動車を買うのですら親を脅して金出させてたもんな。きっと母親が予定外に長生きして遺産が目減りするのを苛々して見てるんだろう。

土地家屋だけでもひと財産あるし。

人ん家のことだから、こうなったらもう目いっぱい長生きしていつまでもバカ息子を困らせてやればいいや。

 

長電話の最中、自分のお雑煮を食べ終わった娘がずっとばーばのお雑煮を狙っていたのは面白かった。

お年頃になっても食い意地だけは立派な娘だ。