働くアリだけのグループにしても働かない個体が現れることが証明される(北大研究)




音史のブログ-働くアリ1




働きアリという名前はあれど、その中にはまったく働かない「なまけアリ」が存在しているというニュースは前にお伝えしたかと思うが、アリのコロニー内の労働制御機構の解明を目指している北海道大学の長谷川英祐准教授は、さらなる研究を進めていた。



 今回の研究で働くアリだけのグループにしても働かない個体が現れることが証明されたのだ。




日本に生息している「シワクシケアリ」のコロニー内では、働きアリの働き度合いに大きなばらつきがあり、常に働く個体から、ほとんど働かない個体まで存在する。



 そこで、「よく働くアリ」と実際には働いていない「ほとんど働かないアリ」を分類し、よく働く個体だけのグループと働かない個体だけのグループに分け、それぞれでコロニーを再構成した。その結果、働く個体だけにしても働かない個体が現れ、働かない個体だけにすると働く個体が現れ、グループ全体の個体の働き度合いの分布は常に元のグループと同じようになることが確認された。

 また、働き度合いのバラつきの大きさは偶然によって生じるにしてはあまりにもパターン化しており、何らかの機構によって再現されると判断されるという結論を得たという。



音史のブログ-働くアリ2




 よく働くアリと働かないアリの違いは、産卵能力や年齢とは無関係であることもわかった。働くか働かないかは、仕事という刺激に対しての反応の強さに差がでてくることで生じているそうで、この反応の強さの差が、全部よく働くアリのコロニーにした場合でも、働かないアリを生み出し、働かないアリだけのコロニーにした場合でも働くアリを生み出しているそうだ。

 このことはアリが一部の個体が常に働かなくなるようなシステムを、労働の制御機構として自主的に採用していることが証明されたということになる。

 研究グループでは、今後の研究で、一部の個体が常に休むという短期的に効率の低いシステムがなぜ必要なのかという疑問の解明にあたるという。



音史のブログ-働くアリ3


 前回のニュース記事では、長谷川さんは「幼虫や卵の世話は少しでも中断すると集団全体の死につながる。そのため、わざわざ働き方に差がでるような仕組みをとっているのではないか」と予測していたのだが、さて実際はどんな理由によるものなのか、すごく興味があるね。

 働く、働かない、働いたら負けとか、労働に関する意欲が、個体差によるものではなく、労働の制御機構として組織に組み込まれているアリ社会。果たして人間社会はどうなのか?人間の労働制御機構についての研究がどこまで進んでいるのかはわからないけど、良く働く人間と、働かない人間に分類してコロニーを形成した場合どうなるのか、ちょっと気になるね。










<カラパイア 記事より>