人間鳥コンテストって、琵琶湖で行われているイベントで、

みなさんもよくご存知かと思います。昔、人が大きな羽を付けて

パリのエッフェル塔から飛び降りた人がいましたけれど・・・・。

勿論、失敗でした。人に翼を付けても飛べないのは、ご存知の通り。

翼を、あの鳥のように羽ばたかせないと(凄い勢いで)、飛べないんです。

それには、筋肉も必要ですが、それ以上に、筋肉に酸素を送る事のできる

酸素ポンプのようなシシテム(機能)がないと不可能です。

鳥に備わっているその機能を「気嚢システム」と呼びます。

 人は、肺で呼吸しています。肺の酸素の吸排気は、横隔膜を上下

さえることで行われます。しかし、これは効率的ではありません。

肺の中の酸素が出たり入ったりするからです。しかし、鳥の気嚢

システムは、気嚢という期間があり・・・これは一種のポンプですが、

この二つの気嚢を拡張させり、収縮させたりして、真ん中にある肺に

酸素を常に送っています。つまり、心臓が2つあって、その真ん中に

肺があるようなものです。ですから、肺の中は、常に新鮮な酸素が

供給されている状態となります。


 では、鳥は、この効率的な呼吸器官をいつ備える事ができたのでしょうか?

それは、なんと恐竜時代でした。昨日のブログでも少し触れましたが、

恐竜が、大きな巨体を俊敏に動かす為の手段として、この気嚢システム

を装備するようになったのです。

また、この時代、哺乳類は胎生へと進化するようになりました。

これは、私が以前のプログで書かせていただいたと思います。


 2億5000万年前のペルム紀末に起きた大量絶滅(PT)の後、地球が低酸素

環境に陥った。この低酸素の外圧状況下で、哺乳類が可能性収束の一つとして

胎生へと進化したのではないかと推測されています。

2億5000万年前の大量絶滅は、「スーパープルーム」という巨大噴火が引き金

であると言われています。巨大噴火により気温が上昇し、それに伴って海底の

メタンハイドレート(低温では安定しているメタンと水の化合物)が融解。

大量のメタンガスが大気中に拡がり、温室効果でさらに気温が上昇するという

悪循環を繰り返し、水が干上がりました。生物は水無しには生きていけません。

こうして動植物共、実に95%もの生物が絶滅したらしいのです。

このとき、生き残った生物達は、次なる試練が与えられます。「低酸素環境」です。

植物がほとんど絶滅し、酸素をつくる生物が少なくなります。さらにメタンガスは

酸素と反応するので、さらに酸素が少なくなります。スーパープルーム前では

大気中の30%を占めていた酸素濃度も10%にまで一気に下がったと言われています。

この新たな環境下に適応する為、哺乳類は胎生と横隔膜を獲得しました。

低酸素という困難な環境下でも、生まれくる子供に常に酸素を送り届け、確実に子孫

を残せるように、繁殖の方法を変えたのではないかと。

恐竜の場合は低酸素時代を気嚢(きのう)システムにて適応したと推測されています。

ちなみに気嚢システムとは、呼吸の吸排気どちらの行程においても常に肺の中に

新鮮空気を満たすシステムのことです。(哺乳類は酸素で満たされているときと二酸化炭素

が満たされているときがある。)哺乳類に勝り、恐竜世界を作り出せたのは、気嚢システムに

より、効率的に酸素補給できたからと言われています。恐竜から進化したとされる鳥類にも

実は同じ気嚢システムがあり、低酸素の上空を飛べるのは、このおかげと言われています。

そのため鳥類ははるか上空の空気密度の低い空間でも呼吸が可能であります。例えば

アネハヅルやインドガンはヒマラヤ山脈を越えて渡りをすることで知られていますし、

マダラハゲワシは、高度12,000メートルで飛行機のジェットエンジンに吸い込まれたという

記録が残っています。

 この低酸素の時代を生き抜く為に、恐竜も哺乳類も進化してきたのです。

というより、胎生や気嚢システムによって、生き延びられたということでしょう。



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