今朝の日経新聞の報道から。
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グローバル化とデジタル化が進み、
企業はIT(情報技術)や海外の文化、
語学に習熟した人材を確保し、
競争力を高めようとしている。
 
春の短期で決める今の就活は、
学生の希望とずれる「ミスマッチ」も起きやすい。
留学やインターン(就業体験)で
学んだことを生かしたい学生を、
時期を問わず通年で選考するニーズは高まっている。
 
経団連と大学側は、右肩上がりの高度経済成長期に
適していた新卒一括採用は時代に合わなくなってきた
との認識を共有した。
 
報告書では
「新卒一括採用に加え、(ITなどの専門技術を重視した)
ジョブ型採用も含め、学生個人の意志に応じた
複線的で多様な採用形態に秩序をもって移行すべきだ」
と明記する。
 
人工知能(AI)や、金融とITが融合した
フィンテックに代表される高度な技術やマーケティングの
知識が必要な職種の採用機会を増やす。
 
長期のインターンとセットの選考や、
大学を卒業した人を対象とする選考などで、
時期を問わず採用活動をする企業が増える。
 
今は就活の時期についての
「就活ルール」を経団連がまとめている。
説明会は大学3年生の3月、
面接は4年生の6月に解禁だ。
このルールは経団連の中西宏明会長が
18年10月、廃止すると表明。
政府が引き取り、21年春入社の学生までは続く。
 
採用にあたり「卒業論文や卒業研究の
成果を含む学位取得にいたる
全体の成果を重視すべきだ」としたうえで、
「卒業要件の厳格化」を求める。
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とても悩ましい動き。
 
熾烈なグローバル競争で生き残りるべく
必死な企業の思惑は理解できます。

でも。
僕はこの新卒一括採用の慣行を
崩そうとする企業の動きには反対です。
 
何より、日経含めた企業側の論調、
「学生個人の意志に応じた
複線的で多様な採用形態に秩序をもって移行すべき」
に違和感を覚えます。
 
まだ働いたことのない学生に
確固たる就職への意志があるでしょうか。
 
 
僕が数十年にわたり見てきた
若者たちのキャリア実態から、
それはごくわずかな少数派だと確信します。
 
もちろん、明確な学生もいるでしょうが、
それとて、20歳すぎの時点ですから、
社会の変化に影響されて自分の意志だと
思い込んでいる場合がほとんどです。
 
20歳すぎで自分のキャリアの可能性のすべてに
気づけている若者が存在するでしょうか。
 
どれだけ強い意志を持っていても、
就職活動の間で、多様な働く社会人・企業に
出会うなかで、どんどんその意志は変わっていくもの。
 
さらには、就職後、働くなかでも、
キャリア希望、その意志はどんどん変わり続けるものです。
 
それを
「学生個人の意志に応じた
複線的で多様な採用形態へ移行」と謡うのは、
短期成果に汲々とする企業側の
ロジックのすり替え、詭弁とすら感じます。
 
外国人留学生や日本人留学生が
日本の新卒一括採用スケジュールで
活動しづらいため、それに対応しなければいけないのは
その通りですが、それはあくまでそういった学生たちに
合ったスケジュールとコースを別枠で用意するだけであって、
すでにその対応は多くの企業でなされています。
 
新卒一括採用の慣行を見直したい企業の本音は、
人工知能(AI)や、フィンテックに代表される
高度な技術やマーケティングの知識が
今すぐ欲しいということ。
 
企業内教育訓練で長期視点で人を育てていく、
現在の日本の大手企業の仕組みでは
グローバルな労働市場から
欲しい時に欲しい人材を採用し、
要らなくなったら辞めさせる欧米企業と戦っていけない
ということだと感じます。
 
それを学生の意志に応じた採用の見直しだと
するのは、やはり建前に聞こえてしまいます。
 
さらに、僕が感じるのは
この日本型雇用、つまりメンバーシップ型雇用を
欧米型雇用の主流にならって、
ジョブ型雇用に転換してしまって、
本当に日本企業はもう一度輝きを取り戻せるのだろうか、
という懸念。
 
平成の30年の間に
短期的な成果主義、近視眼的な目標管理制度、
タレントマネジメントなど、欧米での流行りものを
日本企業は多々取り入れてきましたが、
総括して成功と呼べるものがあったでしょうか。
 
欧米では うまくいっていても、
日本企業ではうまくいかず、
結局、大山鳴動して鼠一匹、なものばかり。
 
新卒一括採用を
通年採用に移行する。
 
つまり、未成熟な若者を育てることを前提とした
ポテンシャル採用から、
能力開発は自己責任であることを前提とした
即戦力採用に移行してしまうと、
平成の30年の間の失敗を繰り返してしまう
のではないでしょうか。
 
敗戦後、そう教育されてきたからかもしれませんが、
どうも日本企業は、アメリカが全て正しい、
と盲目的に追従してしまう癖があります。
 
そうではなくて、明治までの
僕たちの偉大な先人のように、
原点やルーツにプライドを持ち根幹に据えながら、
欧米の取り組みをしたたかに賢く取り入れる
という経営が、僕はあるべき姿だと思います。
 
新卒一括採用は企業内人材育成と
密接につながっており、
だからこそ、個と組織が一枚岩となり、
どんな変化が訪れても、
その変化に対応できることが
日本企業の強みのはずです。
 
もちろん、そこに課題や弊害はあります。
その筆頭は、組織が徐々にムラ社会になり、
外の変化に対応するスピードが遅くなること。
 
ここには、欧米型雇用を賢く取り入れればよい。
 
具体的には、採用した人材に
社会人としての基礎を固め
変化に応じて学び続ける姿勢を育ませ、
一定領域のプロフェッショナル、一人前になったあとは、
個と組織が対等の欧米型雇用にシフトさせる。
初期~成長期のキャリア形成は、メンバーシップ型雇用で、
成熟期からはジョブ型雇用に移ればよいのです。
 
企業・業界によって
プロフェッショナル、一人前になるまでの
期間は違うでしょうが、
僕の持論は、概ね30~40歳ごろまでは
企業内人材育成の仕組みで育て、
以降は、企業と個人は対等の契約関係を結び、
労働市場で動いていくハイブリッド型雇用への変革です。
 
つまり、65歳や70歳への定年延長ではなく、
40歳定年に短くする考え方。
 
これらは、働くことの右も左もわかっていない
新卒段階ではないはずです。
 
せっかく育てた人材を囲い込みたいなんて
ケチな料簡は捨てること。
 
そもそも、人の体は囲い込めても、気持ちは囲い込めません。
モチベーションが高くなければ、
よいパフォーマンスも上がりにくいものです。
 
新卒段階から、即戦力のジョブ型雇用にシフトしてしまうと、
現時点の早期離職問題どころではない、
離職が多発するでしょう。
 
実際、ジョブ型雇用が当たり前の欧米企業では
勤める企業の評価・待遇が不満だと感じれば
優秀な人ほど、どんどん辞めます。
 
でも、日本型雇用のように、
まだ未成熟な段階から育ててもらえれば、
恩義を感じる人間力の高いリーダー人材ほど
安易には辞めないでしょう。
 
企業が実現しようとしている経営理念
ビジョンと自己のキャリアビジョンが重なり、
ロイヤルティも高まり、
強いチームが育めるはずです。
 
短期的な競争と業績に苦しみ
欧米企業の大勢を模倣する一部の大手企業の動きが
日本企業社会全体の動揺に広がらないことを祈るばかりです。
 

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