夜更けのカフェで彼はカンバスに向かい、
私は窓ぎわでガラス壜の花を撮っていた。
収入の大部分をアルバイトでまかなっている男だが
絵を描くのが本業なので公開制作もするわけだ。
創作の話をたまにするのが彼と私の関係性である。
ところで永年
彼は私の知り合いの女と親密だったけれど、
ちかぢか過去形になろうとしており
避けられない破局を感じながら完成させた大作が
凄まじい迫力で、すぐ売れてしまった。
すぐさま私は同じタッチでもう1枚描けば
コンクールに出せるヨとそそのかし、
筆を持つ男を白いカンバスというリングに上げた。
結論からいえば、その夜の作品はイマイチ。
私は前の絵はマジ傑作だったね!と誉めた。
わかっていた男は現在もう一枚制作中である。