前回のエントリで、とうちゃんの勤めている現場が消滅するという話を書いたが、翌日になっても、うちの家族は相変わらず明るい。
誰も何も心配していない。
まあ、あと2年は今の状態の給料とボーナスをもらえるのだし、いきなり生活が激変することがないのは確かである。
また、現場が消滅したからといって、雇用契約が同時に消滅するわけではないのも確かである。(俺自身が逃げ出したくなっているだけ)
それに万一、現場がなくなったと同時に解雇の通達をされたとしても、失業保険でしばらく食いつなぎながら家でのんびりすることはできる。
それより何より、失業保険をもらうまでに2年も猶予がある。これは転職先を見つけるには長すぎるとも思う。
で、暇だったので雇用保険による失業手当について調べてみた。
俺は今の会社に20年以上勤めているため、給付期間は最大分をもらえる。
退職理由が自己都合だと150日、会社都合なら330日だが、俺のような人工透析患者は障害者だから就職困難者という扱いになるので、40~65歳だと360日もらえることになる。
新しい転職先を探すのが難しい連中ほど、給付期間が長くなるらしいが、障害者は同じ職場で1年以上勤めれば再度360日の給付が行われるので、これは甘すぎるかもしれない。
また、給付金がもらえるまでの待機期間については、自己都合退職なら3か月、会社都合退職なら7日だが、障害者の就職困難者は待機期間がなく翌月には給付金をもらえるんだと。
ってことは、今から2年後に現場が消滅した瞬間(その時俺は57歳と8か月)からハローワークへ通って訓練を受けつつ、丸1年間は給付金を受けて次の職場への準備をすればいいことになる。
給付金が切れる58歳と8か月になった時に、まともな転職先が見つからなかったら、この時点で正式にアーリーリタイヤして、一般の人々が60歳から開始する年金暮らしを1年4か月だけ早く始めてもいいのかもしれない。
で、失業中にもらえる手当の種類なのだが。
A.失業保険基本手当
B.就職促進給付
-①再就職手当
-②就業促進定着手当
-③就業手当
-④常用就職仕度手当
Bの方は4種類もあるが、すぐに転職できた場合に給付期間の残り分の何%かを手当としてもらえるものに過ぎないので、当てにしてはいけない。
Aはメインとなる給付金だが、以下の式で求める。
①賃金日額
過去6か月に支払われた前職の賞与除く給与を180で割った金額
②基本手当日額
上の①が11,740円以下の場合は3,712~5,870円
11,740円超の場合は5,870~7,870円
③基本手当総額
基本手当日額*所定給付日数
(下の表だと俺は一番右下の360日に該当)
②の基本手当を3,000円、5,000円、7,000円でざっくりと計算してみると、360日分で108万円、180万円、252万円となった。
これが4週間ごとに振り込まれるので、ほぼ毎月の給付額はそれぞれ、84,000円、140,000円、196,000円となるから、これに障害年金を足せばそこそこ食っていくことはできそうである。(ただし最長1年間だけ)
失業中、気になることといえば、保険と年金の支払い。
医療保険は、これはもう仕方がないので国民健康保険に入るしかないと思っていたけど、任意継続健康保険というものもあって、これは前職で掛けていた保険を最大2年まで任意で継続できるシステムらしい。ただし事業者が払っていた分を個人が払うことになるので金額は2倍になるとか。(それでも国民健康保険より安い)
年金については老齢基礎+厚生年金よりも障害基礎+厚生年金の方が多いし、死ぬまでこちらを選択するに決まっているけど、失業するとちょっとややこしくなることに気づいた。
就業中は2号被保険者(厚生年金)だったけど、失業すると1号被保険者(国民年金)に変化するので、今まで放っておいた法定免除(障害者は年金の保険料を免除されるというやつ)に該当するから、そこで改めて申請しないといけない。
障害者って、「国民年金」は支払いが免除になるけど、「厚生年金」は免除にならないんだよね。だから失業した瞬間に法定免除を申請しないといけないみたい。ただ、これをしておけば国民年金の支払いをしなくてすむので助かる。
俺「あーもう面倒くさいな。こんなん素人が理解できるとは思えん」
嫁ちゃん「何しとる」
俺「えーと、その……失業保険で食いつなぎなら、転職できなかったらアーリーリタイヤしちゃおうかと思って、プランを……」
嫁ちゃん「なんやとお!」
俺「え? えっ!」
嫁ちゃん「あんたはな! うちが言うたこと何もわかっとらんのか! お天道様はあんたをこのまま朽ち果てさせんぞ! 世のため人のために働くんや! 金はそのあとに勝手についてくるもんなんや! 引きこもりのゲーム三昧なんて許さへんで!」
俺「い、いや……そんなつもりはないし、ちゃんと働ける場があれば……そして、透析を続けているこの体が動くなら、仕事はしたいと思っているけど……」
嫁ちゃん「だったらそないな調べもんすんな!」
俺「じゃあ、転職サイトを見ればいいの?」
嫁ちゃん「だあほう! それこそせんでええ!」
俺「じゃあ、どうしろと」
嫁ちゃん「ええか。背筋をしゃんと伸ばし、姿勢を正し、空(そら)を見上げ、心を空(くう)にするんじゃ」
俺「は?」
嫁ちゃん「するとな、天から啓示が下りてくる。
おまえは●●に行き
〇〇と話をするのだ
さすれば道は開かれる
のように」
俺「うーむ……」
嫁ちゃん「信じとらんのか」
俺「うーむ……」
嫁ちゃん「なら思い出させてやるとするか。あんたの職歴は、みんな天啓に導かれてきたものやろうが」
俺「そうだっけ?」
……確かにそうだ。
大学を出て新卒で入社したソフトハウスは、研究室の大先輩から「お前、内定まだなら、ここ受けてみろよ」と渡された雑誌が原因だった。
俺のようなペエペエ技術者に海外勤務の話を持ってきたのは、そのソフトハウスでお付き合いのあった大学の偉い先生だった。
嫁ちゃんと知り合うきっかけとなった派遣の仕事は、新聞に挟まれていた折込広告をたまたま目にしたことから始まった。しかも前職の海外勤務経験が決め手となった。
そして俺が今こうして働いている職場は、そこで出会った嫁ちゃんが求人を見つけて勧めてくれたものだった。
俺「思い出した。俺の仕事は全部そうだった。何かの導きによるものだった。しかもそれが全部つながってた。因が果となり、果が次の因となってきた」
嫁ちゃん「せや。あんたの場合、自分でアレしたいコレしたいなんぞ言わんでも、勝手に仕事が降ってくる運命なんや。やから、今あんたのやっとることは、全くの無駄じゃ。徒労じゃ。骨折り損のくたびれ儲けじゃ」
俺「うむむ……」
嫁ちゃん「金もそうじゃ。金勘定すればするほど予定外の出費に泣かされ、思い通りにならん。あるものを有難く頂戴して、慎ましやかに暮らせれば、それでええ。無理くり失業保険を奪い取ろうなんざ下衆の発想はやめとけ」
俺「いや……だから、そういう意味じゃなくて、自分の勉強のために調べていただけなんだってば。知らないと損する世の中ってのは、もう十分に知ってるけど、だからこそ自分に関係のあることは知っておきたいと思って」
嫁ちゃん「まあええ。今、あんたのすべきことは、あと2年間になった現場をきれいに掃除して、立つ鳥跡を濁さず、美しく去ることだけじゃ」
俺「そうかもな」
嫁ちゃん「んで、隣のフロアに移動することになっても、泣いたらあかんで」
俺「泣くわ!」
(子供の頃になりたかった職業は、考古学者だったのさ)