セネガル文化の伝道師、シティ派アフリカンダンサーFATIMATAのブログ -17ページ目

セネガル文化の伝道師、シティ派アフリカンダンサーFATIMATAのブログ

プロダンサーがセネガルから学んだ社会人として大切なこと。ガイドブックにないセネガル案内。

この物語はサバールダンスを日本のダンスシーンに紹介したFATIMATAが、日本でまだサバールという言葉もあまり知られてなかった時代から劇団EXILEで踊られるようになった現在までの、険しい道のりを描いたセネガル体験記です。


●第1話からお読みになりたい方はコチラから

●これがFATIMATAが考えるセネガルツアーの絶対条件だ!⇒第37話



2005年


目を覚ました。


ヤマはまだ隣で寝ていた。


今まで寝ていたマットと違って、寝心地が良かった。


それに、ベンジーの家とは違い、開放感に満ちてすがすがしい。


今日の夜、参加者たちがダカールに到着する。


みんなをこの家に連れて来る。 


昨日までの不安が一変して、今はとても待ちどおしい。


ヤマも目を覚ました。


ヤマは伸びをすると、「準備開始」とベットから飛び降りて、掃除をし始めた。


私も自分の荷物を整理すると、台所の食器を確認し、明日の朝食に必要なコーヒーや砂糖などの買出しに出かけた。


やっとワークショップの実感が沸いて来た。ヤマとのその準備が楽しくてしょうがない。


初めて企画するセネガルワークショップ。


日本人がセネガルワークショップを企画するのは自分が知ってる限りでは私が初めてだった。


いろんな勇気がいったけど、今はもうすぐ始まるワークショップに期待が膨らんでドキドキしていた。


買出しが終わるとビンタに電話して私たちが滞在してる場所を告げた。


ビンタとの話で明日からダンスクラスを始めることになった。


家の庭がちょうどいいスペースになっていて、そこでクラスができる。


ものすごくいいロケーションだった。


庭に出て少しサバールステップを踏んでみた。


すると部屋の中にいたヤマが窓から顔を出して、手拍子を叩き始めた。


最高に楽しい。


これを他の日本人と一緒に味わえると思うと、楽しみすぎて身震いが起きるほどだった。


ある程度の準備が整うと、ヤマと二人でテレビを見始めた。


みんなを空港まで迎えに行くまでまだ時間があった。


この時間が長い。


「もう、そろそろ出た方がいいんじゃない?」


落ち着かない私はヤマにそう提案してみた。


「今から行ったって、空港でたくさん待つだけだよ。」


ヤマはそういうと、テレビを見続けた。


この家にあるテレビは鮮明じゃなく、アンテナの接触が悪いせいか少し雑音が入る。


だけど、どの家庭のテレビもそんな感じで、画面が砂あらしで音声をかき消すレベルにならないと、誰もテレビを叩かない。


ヤマはその雑音を全く気にしていないようだった。


そうこうしているうちに、参加者がダカール空港に到着する時間が近づいて来た。


私たちは少し防寒してタクシーに乗り込んだ。


外はちょっとジトっと生暖かい感じだったが、風が冷たかった。


タクシーを飛ばすと、家から空港はそんなに遠くなかった。


タクシーの中から空港の人だかりが見えると、すこし気持ちが焦った。


もう、あの人ごみの中で私のことを探していたらどうしよう。


私の理想は、ゲートから参加者たちが出て来た瞬間「こっち、こっちー」と手を振ること。


タクシーから出ると私は走りだした。後ろを振り向くと、ヤマが遠くからゆっくりついて来ていた。


空港の入り口は迎えに来ているセネガル人がたくさんいて、壁のようになっていた。


彼たちは背が高いから、中のゲートが全く見えない。


セネガル人たちの隙間を掻き分けて、見えるところまで顔を出した。


スーツケースを持った人たちがパラパラと空港内から出て来始めていた。


しばらく待ってみたが、アフリカ人やヨーロッパ人ばかりで、小さいアジア人がなかなか出てこない。


20分が過ぎ30分が過ぎ、柵を握り締めていた手がだんだんしびれてきた。


後ろを振り返ると、ヤマが腕を組んでボーっと立っていた。私が振り向いたことに気が付くと「来た?」というジェスチャーを私に送った。


私は首を横に振り、引き続きセネガル人たちの隙間へ割り込んで、彼女たちが出てくるのを待った。



第59話へつづく





8/31(Fri.) 18:55-19:24 NHK・Eテレ EXILE『“E”ダンスアカデミー』セネガルのトップダンサーPape Moussa(パムサ)氏が出演!!FATIMATAも通訳で出演。

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2005年


タクシーが止まった。


「ここだよ。」


ヤマが荷物を降ろしだした。


私はタクシーの運転手にお金を払うと家を見渡した。


その家は一階建で、白い壁のとてもさわやかで明るい家だった。


庭は手入れされていてゴミひとつ落ちてない。


朝日に照らされたその家は、今までの暗いすさんだ家の印象とは全く違っていた。


ヤマが裏に住んでいる大家さんを訪ねた。


大家が表に出てくると、ヤマと大家はしばらく立ち話をしていた。


どうやら、家賃の値段交渉をしているらしい。


ヤマは身振り手振りで私たちが今までにあったトラブルを説明して手持ちのお金がないことを説明していた。


大家はヤマの説得に折れたように、ため息をつきながら何度もうなずいていた。


交渉が成立した。これ以上下げられないという金額で貸してくれることになった。


大家は門の鍵を開けると、「これが門の鍵、そしてこれがドアの鍵、そしてこれがそれぞれの部屋の鍵。セキュリティーはバッチリだから。」と説明してその鍵を私に渡してその場を去った。


私はドアを開けて家の中に入った。


家の中もこざっぱりと清潔で中庭には洗濯ロープがかかっていた。中央には白くて丸い大きなテーブルにオシャレな椅子まであった。


洗濯用の排水溝と水道の蛇口も備え付けてあり生活するには不自由のない中庭。


つづいて部屋の中に入った。


カラフルな模様のシーツのかかっている大きいベッドに鏡台やタンスが置いてあった。


もうひとつの部屋にはテレビとエアーコンディショナーまで付いていた。


台所には大きい冷蔵庫のほかに食器棚にはお料理のための器具やグラスや食器なども揃っている。


そして気になるバスルームは、ホテルのユニットバスのように清潔で全体が淡いピンク色だった。


つい興奮してしまった。


全く申し分ない。


「今日からここが私たちの家だぁ!!」


ヤマが叫んだ。


私も同じように一緒に叫んだ。


ヤマと二人でふかふかのベッドにバサっと横になった。


これで思い描いていたワークショップができる。


みんなを空港に迎えに行って、この家に連れて来た時の反応が目に浮かぶ。


きっとみんな興奮するだろう。


ヤマも同じことを考えていた。「ここなら、みんな喜ぶね。」


そしてヤマは続けた。


「そして、もうベンジーはいない。」


そういうと両手を上げて「フォー!!」と叫んだ。


私はヤマの方をじっと見つめた。


「ヤマ、ありがとう。」


今までいろんなありがとうを言ってきたが、心の底からの一言だった。


ヤマは照れ隠しに鼻で「フッ」と笑うと頭の後ろに手を組んで天井見つめたままだった。


そしてヤマがポツンと言った。


「私がお手伝いさんやるよ。」


ヤマが掃除をしているところを見たことがないが、私は笑って「よろしく」と答えた。


そして私たちはそのまま眠った。





第58話へつづく


8/31(Fri.) 18:55-19:24 NHK・Eテレ EXILE『“E”ダンスアカデミー』セネガルのトップダンサーPape Moussa(パムサ)氏が出演!!FATIMATAも通訳で出演。

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2005年


ヤマはケータイから誰かに呼ばれて、家を出て行った。


このすさんだ家で、とりあえずみんなを迎い入れる準備をしなければいけない。


全く気持ちが進まないが、時間は刻一刻と進んでいる。


ワークショップの企画なんてするんじゃなかった。


そんな後悔の念でいっぱいだった。


みんなが来るのは明後日。


みんなが楽しみにしているのが頭に浮かぶ。


申し訳ない。


悔しくて涙が溢れてきた。


その日の夜、ヤマが心配して私の部屋を訪ねて来た。


ヤマは何がなんでも他の日本人が来る前にベンジーの元を離れるべきだと主張していた。


今更そんなこと言われても、出来ないからここにいるのに・・・。


ここでは、もう味方はひとりもいない。


夜も更け、ヤマはそのまま私の部屋で一夜を過ごすことになった。


私は疲れ果て、ヤマとしゃべることもなく眠りについた。


何時間経っただろう。


突然、「起きて!」とヤマに体を揺すられた。


「今すぐここを出るよ!」


ヤマが突然変なことを言ってる。


私はおもむろに怪訝な顔をして「はっ?」と返した。


ヤマは唾をゴクっと飲み込むと私にゆっくり話しだした。


「たった今、友達から電話があった。今日、友達の家の前の家が空いた。そこは台所には冷蔵庫も食器も揃ってるし、セキュリティもちゃんとしてる。今ベンジーが寝てる間にすぐそこに移ろう。新しい家の大屋には私が事情を説明して値段交渉して安くしてもらうから。移動するなら今しかないよ。このままここにいたらあんたたち日本人、みんな危険な目に合うよ。」


私は半信半疑だった。その家をまだ見たわけではないし、このままヤマの言う通りにしてよいのだろうか。


だけど考える余地はなかった。今の状況を回避するには、選択肢はひとつしかない。まだ夜中だが、日付で言ったらみんなが来るのは明日。私は言われた通りに行動するしかなかった。


だけど今すぐ引越しすると言っても不可能に近い。


私の荷物は生活しやすいように全部スーツケースから出してあり、部屋の隅から隅に吊してある洗濯ロープにはハンガーに洋服やらタオルがぶら下がっている。


マットの脇にはお化粧しやすいように、鏡と共にコスメ類が並べてあった。


パッキングに時間がかかる私には今すぐ引っ越しなんて絶対無理。


これらをスーツケースに片付けるなら夜が明けてしまう。


するとヤマはおもむろに、ロープにぶら下がっている私の洋服類を片っ端から取り外し、スーツケースに詰め込み始めた。


「何やってんの!早くっ!!!」


ヤマの掛け声にあおられて、私も部屋に置いてあるものをかき集めてスーツケースにぶち込みはじめた。


とにかく上からガシャガシャスーツケースに詰め込んで行った。


こんな積め方でスーツケースに収まるわけがない。


ヤマはマットからシーツを剥ぎ取ってスーツケースに収まりきらない物をその上にガシャっと置いて、風呂敷のように包み出した。


私は収まり悪いスーツケースを上に乗るようにしてフタをしてロックした。


残りの細々したものをボストンバッグに積めた。もう何がなんだか分からなかった。


化粧水の液漏れとか気にしてる場合ではなかった。今すぐここから出るにはこれしか方法がない。


ビックリするほどあっと言う間に私が来る前の空部屋の状態になった。


「後は?」ヤマが尋ねた。


「台所に私のまな板と包丁、あとシャワー室にボディソープとか。」


私は部屋の外に出るのが怖かった。


こんな時に限って、居間にはベンジーの部屋から締め出されたウミがゴザを引いて寝ていた。


私たちの夜逃げ計画にウミが目を覚ましたら一大事になる。


私は恐怖感で体がこわばり、手が震えて思うように身動きが取れなかった。


ヤマはシャワー室や台所から私の私物をかき集めて来た。


「これでしょ?」


私はパンパンになったボストンバックにそれらを詰め込んだ。



ヤマは私のスーツケースを持って、忍び足で部屋を出た。


そして、横になっているウミの脇をすり抜け家の玄関まで足早に移動した。


私は風呂敷とボストンバックを抱え、その後を付いていった。


生きた心地がしなかった。


手にかいた汗で持っているものがすべり落ちないか心配だった。


自分の心臓の鼓動が振動として体中に響いた。


ヤマは家の外に出ると、タクシーを呼び止めた。


ヤマはこっちを見て、私にそのタクシーに乗るようにジェスチャーで示した。


そして、ヤマは忘れ物がないかもう一度部屋の中へ戻って行った。


私はもう忘れ物なんてどうでもよかった。早くこの場を去りたい。それだけだった。


ヤマが紙袋を手に戻ってきた。


「行くよ。」


ヤマはタクシーに乗り込み扉を閉め、運転手に行き先を告げた。


私たちはベンジーの家を脱出した。


タクシーが出発した後も心臓が高鳴り、手がずっと震えていた。


とりあえず助かった。


ヤマは両手を上に上げ、「平和を取り戻したぞ。」と叫んだ。


私も両手を上に上げ、ヤマの手をパチンと叩いた。


私は後ろを振り返り、ベンジーの家を見た。


私たちがワークショップをやる予定だったベンジーの家がだんだん小さく離れて行った。


今、奇跡的に安全と平和を取り戻した。ヤマのお陰で。


神様は裏切らなかった。


参加者が来るのは明日。


私は新しい家に期待を膨らませた。


第57話へつづく





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2005年



部屋の外でウミの泣く声が静まった。


ヤマはそっとドアを開けて様子を見ると誰もいなくなっていた。


アースはそのタイミングで部屋を出て帰って行った。


私たちはアースを見送ると、部屋に戻りマットに座った。


するとヤマが話し出した。


「ウミの名を名乗ってアースに電話して家に呼び寄せたのは私だよ。」


そういうと、得意気になって続けた。


「私はアースに電話した後、すぐにベンジーに電話してこう説明したの。ウミはベンジーが仕事に出てる間、ベンジーの部屋で自分の身を売って小遣い稼ぎをしてるとね。ベンジーは最初は信じなかったけど、今から男が訪ねて来るから、すぐ家に戻って部屋の中のトイレに隠れててごらんって。それで、ああいう結果になったんだよ。ベンジーは短気だから、アースが部屋に入ってウミとしゃべり出したらトイレから出て来てウミに殴りかかったんだろうね。計画どおりだ。」


と言って笑った。


私は気が重かった。ヤマがこれだけの仕返しをして、ウミが黙ってるわけない。


しばらくして誰かが私の部屋をノックした。


開けてみると、そこには丸坊主になったウミが立っていた。


「どうしたの?」と私が尋ねると、ウミは体を震わせながら、「ベンジーにハサミで切られた」と手で頭を覆っていた。


そして小さな声で「スカーフを貸して。」と言ってきた。


ウミはベンジーの部屋を閉め出され、中に入れない状態だった。ハサミで切られて丸坊主なったその姿では女性だったら恥ずかしくて外に出られない。


私は現地で買った布をウミに渡すと、ウミはその布を頭に巻いて、どこかに出かけてしまった。


この家の中がどんどん荒れて行く。


しかも、日本から参加者たちが来るのが2日後に迫っていた。


こんな状況で参加者たちを迎え入れることなんてできない。


ヤマの話しによると、ベンジーは後から来る日本人たちからも金を揺すり取るつもりでいるらしい。


参加者たちは、初めてのセネガルに胸を踊らせて今ごろ出発の準備をしているだろう。


私も最高のワークショップを企画する予定だった。


でも、こんな状況で楽しいツアーなんてできない。


もう、どうしていいかわからなった。


責任も取れない。


先が真っ暗だった。ワークショップなんて企画しなければよかった。


今すぐ死んでしまったらどんなに楽だろう。それしか考えられなかった。


私は絶望感のままフラフラ部屋を出て、公衆電話へ向かった。


どうにも出来ないのは分かってるけど、母親に電話をかけた。


こんなことで親を心配させたくなかったけど、でも他にどうしていいか分からなかった。


懐かしい日本のトゥルルルルの呼び出し。早くお母さんの声が聞きたい。


母親が電話に出た。


そのとたんウワッと泣き出してしまった。


「どうしよう。私、うまくツアーをやる自信ないよぉ。」


そんなことを言ってもなにも解決できないことくらい分かっている。


だけど、電話で誰かと話しをしないと不安でどうにかなってしまいそうだった。


母親は落ち着いていた。


「大丈夫だよ。神様が付いてるから、諦めないでがんばりなさい。」


それ以上何も言わなかった。


私は電話を切り、家へ戻った。


家の中は暗くすさんで見えた。


もうウミの掃除してる姿も歌声もない。


私はこの家で参加者たちが来るのをじっと待ってるしかなかった。



第56話へつづく





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2005年


ヤマの様子を見る限り、ヤマが1番恨んでいるのは、ウミのようだった。


ベンジーがヤマに危害を加えたのも、ウミが仕組んだと言い張っている。


私はヤマに尋ねた。


「なんで、ウミがそんなことをする必要があるの?」


するとヤマは答えた。


「知るか。この家に他の女がいることが気に入らないか、それか、金が目当てだろ!」


でも、私はもはや誰の言葉も信用していなかった。


ヤマはベンジーから裏切り行為を受けて傷付いているかもしれない。だけどその前まではベンジーの言いなりで私と金銭の交渉をしてたわけだから私にしてみたら、ここにいる全員が裏切り者に見えていた。


だけど、たった今状況は変わった。


ベンジー側の内部の裏切りよってヤマが外されたのだ。


しかも、ヤマはそのことで復讐を企てていた。


どの世界にもあることだが、共通の敵が現れると、元々の信頼関係が薄くてもそれをきっかけに結束力が強まる。


私も、ウミは許せない。


そこはヤマとの共通点だった。


その共通点によって、私たちは前よりグッと結束力が強まった。





翌日。


私が部屋でボーっとしていると、ヤマが駆け込んで部屋に入って来た。


ヤマは笑っていた。


「今に見てて。」


そういうと、ヤマは部屋のドアを閉めた。


私が「何?」と聞くと、ヤマはニヤニヤしながら「いいから、いいから」とマットに座り出した。


ヤマは聞き耳を立てて部屋の外で何かが起こることを今か今かと待っているようだった。



突然、部屋の外でベンジーのわめき散らす声とウミの甲高い悲鳴が聞こえた。


外ではベンジーの他に男性の声も聞こえた。


かなりの勢いでベンジーとウミがやり合ってる様子だった。


ヤマはドアの向こうから聞こえてくるその声に耳を傾けながら肩を揺らして笑いだした。


ヤマは「してやった」という勝利に満ちたような顔をしている。


私には部屋の外で何が起こっているかさっぱりわからない。


ヤマがドアを開けてその様子をのぞき見た。


そこには、言い合いしてるベンジーとウミ、その他に若い男性が呆然として立っていた。


ウミはその男性を指さし、「私はこの男なんて知らないわ!」と叫んでいる。


そして男性に向かって「あなた、私の事知ってるの?」と続けた。


その男性はうろたえながらも「知りません。」と答えた。しかし、興奮してるベンジーの耳には届かなかった。


その男性はうちらが覗き見していることに気がつき、助けを求めるようなアイコタクトを送って来た。


ヤマはベンジーやウミから見えないように、その男性に手招きをして、こちらの部屋に来るよう誘導した。


その男性はやり合っているベンジーたちの目を盗んで、そっとその場を抜けて私たちの部屋へ入って来た。


ベンジーはそのことに全く気がつかないほど、怒り狂ってウミを罵っていた。


ヤマはその男性を部屋の中に入れドアをパタンと閉めた。


その若い男性の名前はアースと言った。


「何が起こったんだかさっぱり分からない。」と困惑した表情を浮かべ、私たちに状況を説明しはじめた。


「ウミという女から電話が来て、あなたの助けが必要だから今すぐ部屋に来てと言われたんだ。僕はウミという女を知らないし、人違いだと思っていたけど、あまりに懇願するから、彼女の言うとおりここに来てみたんだ。そして彼女の誘導どおりに部屋に入った。それから、「電話で俺を呼んだのは君かい?」と話しかけた。その瞬間、いきなりトイレから男の人が出て来てウミに殴りかかったんだ。俺は必死で止めたけど、何が起こったんだかさっぱり分からない。」


ヤマは笑いながら「お気の毒さま。」と彼に言った。


アースは両手を上に開いて肩をすくめると、ため息をついてマットに座った。


外ではまだベンジーとウミがもめていた。時よりウミの叫び声が聞こえる。


2人のもめ方が尋常じゃない感じだった。


何か物音がする度、私とアースは顔を見合わせて目を丸くしたが、ヤマだけは笑っていた。


しばらくして、ようやく静まり返った。


アースが何かしゃべろうとしたら、ヤマが「シッ」と口止めして耳を澄ました。


私たちも便乗して耳を澄ました。


ドアの外からウミの啜り泣く声が聞こえた。


ヤマは満足気に私の顔を見ると、右手の平を私の方に向けて高く掲げて来た。


私は、なんとなく気が進まなかったが、パチッとヤマの手をタッチした。


ヤマは「あとでちゃんと説明するから。」とウィンクして、「ハァ~」と大きなあくびをして、マットに横になってケータイをいじり始めた。


私とアースは顔を見合わせ首を傾げると、ヤマを挟んでマットにバタっと横になった。


3人はしばらく黙って横になった。



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2005年


私は、ベンジーの部屋をノックした。


ベンジーの「どうぞ」という声でドアを開けると、うつむいてベッドに座ってるウミの脇にベンジーが立っていた。


私が部屋の中に入ると、ベンジーが不気味な笑みを浮かべ、「昨日の晩はさぞかし楽しかったようだなぁ」と私に言った。


素直に「楽しかったよ」と言ってはまずいような空気だった。


「ウミとのセックスは気持ち良かったか!」


ベンジーの問いに驚いて、私はとっさに「はっ?」と答えてしまった。


ベンジーのその発言にもビックリしたが、その隣で反論しないで黙って聞いているウミにも驚いた。


「俺の女にまで手を出すとは、許さんぞ。」とベンジーは続けた。


許すも何も、私はウミとはしゃべっていただけでベンジーを怒らせるようなことは何もしてない。


私は、強く否定をした。


すると、ベンジーがウミに尋ねた。


「ウミ、お前はこいつにどんなことされたんだ?俺に言ってみろ。」


すると、ウミがやっと口を開いた。


「彼女は私のアソコを無理やり舐めたわ。」


超ビックリ。


まじかいな。


私は声を張り上げた。


「彼女は嘘を言ってます。私はレズじゃないし、女のアソコなんて舐めません。気持ち悪い!」


するとベンジーがもういちどウミに尋ねた。


「お前は嘘を言ってるのか?」


「嘘じゃないわ、本当よ。私は彼女にレイプされたの。」


ショックだった。


昨日までのウミの面影はひとつもない。


ウミはまるで別人の顔だった。


私は現実なのかなんなのか分からなくなる程、胸ぐらをギューとわし掴みされ、グシャっと潰れたような感覚だった。


もうまともなウォロフ語も出てこない。


私は「やってない。」とわめき散らして、ウミの顔をこれ以上ない憎しみの目で睨み付けた。


すると、ベンジーは座ってるウミの両足を力づくでで開き、私に言った。


「これは俺の物だ。」


ウミはひどい格好をさせられている。


私に丸見えの状態だった。


吐き気がする程、気分が悪い。


そして、ベンジーはウミにもう一度聞いた。


「ウミ、あの女にどうされたんだ?」


ウミはうつむきながら答えた。


「あの女に犯されました。」


するとベンジーは持っていたウミの片足を放り投げ言った。


「ウミは嘘は付かない。こいつはムスリムだ。コーランを前にして、嘘をつけるわけがない。」


そう言うとベンジーは分厚い本を手に取って、私に振りかざした。


そして続けて言った。


「これは犯罪だ。俺が警察に通報したら、お前は捕まる。ただし、口止め料を払うなら考えてやってもいい。」


私がレイプしたというのはウミが言っているだけで、証拠はない。捕まるわけないし、こんなバカげた話し第三者に入って欲しいくらいだった。


「だったら警察に行きましょう。」と私は切り出した。


私は捕まるようなことは何もしてない。


するとベンジーが答えた。


「よし、いいだろう。君の好きにしていい。ただし金を払えば、この件はここで終わりにしてやる。」


私はとりあえず部屋を出た。


頭がおかしくなりそうなくらい悔しかった。


私ひとりだけじゃ心細くてヤマにことを全部話した。


ヤマはビックリして、言った。


「それは、本当なの?私の暴行事件もこの件も、全部あの女の仕業かもしれない。」


そして、続けた


「とりあえず、警察は行かない方がいい。あんた日本人だし、セネガルの警察は野蛮だから、釈放を名目に金を取られるだけだよ。ここは諦めてベンジーにお金を払った方が賢いよ。警察に行って話が大きくなったら、ここでワークショップが出来なくなるから。」


私は悔しすぎて涙が出た。


そして、ヤマは何かを企てている目つきで言った


「今に見ててよ。私、絶対復讐するから。」


そう言うと、ヤマは私にほくそ笑んだ。




第54話へつづく




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2005年


ヤマがベンジーの家を追い出された。


だけど、ベンジーの誤解だけで、こんな事件になるなんて、これからのことを考えたら不安になった。


ウミはベンジーの行為を「また?」と、呆れた感じで捉えていたが、参加者が来てからあんなことが勃発したら、みんな怖がるだろう。


私はベンジーの誤解を解こう話しをしに行った。


ベンジーは私の話しを聞くと、鼻で笑った。


「君の言いたいことは分かった。君が自分の部屋で何をやろうと勝手だ。君は日本人だしムスリムじゃない。だけどヤマは違う。あいつはムスリムでありながら最低なことをした。ああいうやつがいると困る。」


私がどんなに説明しても無駄だった。


同性愛者だという誤解は撤回されないままだった。


私はヤマのことが心配だった。


ヤマのことだから、このまま泣き寝入りはないだろう。


私は公衆電話からヤマが持ってるケータイに電話してみた。


ヤマは自分の家にいた。ヤマもベンジーと直接話したいらしく、明日ベンジーの家へ戻る、と話した。


私は家に戻ると、ウミが笑顔で話しかけてきた。


「今日から、あなたひとりで淋しいんじゃない?。今晩、あなたの部屋に行くからまたおしゃべりしましょ。」


ウミは相変わらず楽しく振る舞ってくれた。


その晩、夕食が終わるとウミが私の部屋に遊びに来た。


部屋の隅に立てかけてある鏡を手に取ると、それを見ながら髪の毛を整えた。


私はまたベンジーが変な誤解をしないよう、ドアを開けっ放しにして、居間から部屋が見えるようにした。


ウミは私の横に寝そべり、私たちはいつか話したガールズトークの続きをした。


私たちの話がエスカレートしていくと、ウミがベンジーとの夜の生活についてこと細かに暴露し始めた。


私は、ベンジーの意外な性癖にビックリしたり笑ったり、私たちはセネガル人と日本人の違いについて盛り上がった。


突然、「ウミ!」と叫ぶベンジーの声が聞こえ、私たちは口をつむいだ。


ベンジーはウミを探していた。


ウミが「ここよ」と叫ぶと、ベンジーは部屋の入口まで来て「ああ、ここにいるのか」と、ひとり納得して、戻っていった。


私とウミは顔を2秒くらい見合わせて、プッと吹き出して笑った。


ウミは、部屋の外の様子を伺って、ベンジーがいないことを確認すると、またベンジーの話しになった。


ウミの話しによるとベンジーは嫉妬深く、束縛するところがあり、ウミを買い物すら出してくれないらしい。


ウミの話しは下ネタからベンジーの愚痴に発展していった。


部屋の外でベンジーの歩いてくる音が聞こえ、私たちはまた口をつむいだ。


ベンジーが居間でうろうろしている。


私たちはベンジーがうろうろしてる間は、笑いをこらえ黙って寝た振りをしていた。


そして、足音が遠くなると片目を開け、外の様子を見て、また二人で吹き出して笑った。


ウミは頭を起こして居間の方をに向かって、舌を出した。


そして私たちはまた話始めた。


私たちはいつ聞かれるか分からないシチュエーションで、あえてベンジーの話題をして、そのスリルを楽しんでいるようだった。


私たちは夜中まで夢中になって話した。話の途中でウミがあくびをし始めると、私もそのあくびがうつった。


お互いにトロンとしている状態で、会話が途切れるとそのままコクっと寝てしまいそうだった。


私が眠りかけると、ウミは「今頃ベンジーは私がいなくてひとりでしてるかも。」と言って、また私を笑わせた。


そう言って、私たちはクスクス笑いながら知らない間に眠りについた。



翌朝、誰かが私を呼ぶ声がして、目を覚ました。


そこにはヤマが立っていた。そして、部屋にはウミはいなかった。


ヤマは横になっている私に顔を近づけて言った。


「私、ベンジーに話をしにここに来たんだけど、その前にベンジーはあなたに話があるって。」


「私に?」


「呼んで来いって言われた。」


急に嫌な予感がした。


ベンジーは今更私を呼び出して、何を話すんだろう。


私は起き上がって、寝癖を整えると、恐る恐るベンジーの部屋へ行った。




第53話へつづく




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2005年


何の変わりばえのない平穏な1日に見えた。


ウミは歌いながら掃除し、ヤマはクレディ切れしたケータイをいじりながらラジオを聞き、ベンジーは仕事で外に出ていた。


この一見何も変わらない平穏な日々が続けば、ワークショップは楽しいものになる。


意味の分からないお金の請求や貸し出しが、これ以上ないことを願った。









翌朝、ものすごい物音で目を覚ました。


ベンジーがすごい興奮して、私たちの部屋に入ってきた。


「起きろ!」


ベンジーは勢いよくヤマの事を蹴飛ばした。


ヤマはビックリして起き上がった。


ベンジーはヤマに罵声を浴びさせながら、むなぐらを掴み、ヤマを引き寄せると殴る蹴るの暴行を加えた。


何が起こっているのかさっぱり分からない。


ヤマも突然のことにビックリしてやられるがままだった。


ベンジーの興奮は治まりきらず、何度も何度もヤマに殴りかかった。


私は必死で「やめて」と止めにかかったが、ベンジーは止める気配はなかった。


その形相は、去年見ていたベンジーとはまるで別人だった。


目はむき出し、瞳孔が開いている。


ベンジーはヤマのえりぐりを掴みながら居間へ引きずり出した。


ベンジーがヤマへ一言何か伝えると、ヤマを突き放した。


そして、私の方を振り返って言った。


「お前は許してやる。でもヤマは最低な女だ。こんなヤツ相手にするな。」


そして、ベンジーは自分の部屋に戻って行った。


ヤマは震えていた。


私が「大丈夫?」と駆け寄ると、ヤマは涙を拭きながら「ベンジーは頭が狂ってる。」と言って、話を続けようとしたが、恐怖と怒りで興奮して過呼吸状態になり、これ以上話を続けられる状態ではなかった。


しばらくして呼吸が落ち着くとヤマはビロビロに伸びたティーシャツを整えて、深呼吸し「こっちに来て」と言って、家の外に出た。


私は慌ててヤマに付いて行った。


「ベンジーは私があの部屋で毎晩あなたとレズな行為をしてると言ってるの。」


「ハッ?」


私にはヤマがそう説明してるように聞こえたが、自分のウォロフ語の理解力を疑うような話だった。


まず、私はレズじゃないし、仮にレズ的な行為をしてたとしても、それはプライバシーな事で第三者から暴行を加えられるようなことじゃない。


ヤマは続けた。


「毎晩、あの部屋でお互いのアソコを舐めあってるって。」


あんな暴行事件がなければ、大笑いしてるところだ。


だけど、ヤマは涙をぬぐいながらそう話してる。


私は理解に難しく、眉間のシワがさらに深く寄った。


「私は、もうあの部屋には泊まれない。ベンジーから追い出されたから。」


ヤマはそう言うと、私の部屋に戻り、小さいリュックに自分の荷物をまとめて出て行った。



不可解すぎる。



私は自分が納得するまで、事の全貌を明らかにしようと考えた。 


なんであそこで暴行事件になるのか。


レズ行為に対してベンジーがキレる理由はなんだろう。


同性愛者はイスラム教では禁じられているが、それが理由で暴行に至るとは考えがたい。


ヤマは去年からベンジーに世話になっているが、私はどうして世話になっているかは知らない。


そして、ベンジーはどうしてヤマを世話するのか。


去年までは、ベンジーのアパートの近くにヤマの家があり、アパートに寝泊りすることはなかった。


私はヤマがお酒やタバコを親に隠れて楽しむためにベンジーのアパートに出入りしているんだと思っていた。


当時、割と収入があったベンジーは、食事なども一緒に世話してあげるついでにヤマをパシリに使っていた。


それ以上の関係があの二人の間にあったのかな。


ヤマの話によると、その後ベンジーは職を失い生活苦に陥ったようだった。


それで痩せこけたのか、この1年でベンジーは別人のようになっていた。


去年のような笑顔は少なく、時々ベンジーの部屋からウミを怒鳴りつけてる声も聞こえていた。


今は新しい仕事を見つけているが、前ほどの豊かな生活ではないらしい。


去年、私を助けてくれた優しいベンジーの面影は消えていた。


今はヤマはベンジーの使用人として私からお金を取るために囲われているのかな。


どちらにしてもベンジーはヤマが私とレズをしていると思い込んでキレた。


そもそも、レズという発想はどこから来たのか?


考えれば考えるほど、まったく意味が分からない。


あんなにボコボコにされたヤマとグルのようにも思えないし。



そこにウミが私のところにやってきた。


「ベンジー、また頭おかしくなった?」


呆れたような顔つきで私に話しかけてきた。


ウミの言い様は、ああいうことが頻繁にあるというような感じだった。


「気にしないでね。後でまたゆっくりおしゃべりしましょ。」


ウミそういうとニコっと笑って、台所に戻って行った。


なんなんだ、この家は・・・。



第52話へつづく






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2005年


ヤマが言うには、その先生に手術費用を持ち逃げされたらしい。


ホンマかいな。


普段から厳しい世界を行き抜いているセネガル人のヤマが、そもそも手術費用を先に手渡すようなミスを冒すか。



「もう一度、お金を貸してくれない?」


ヤマは深刻そうに言った。


私はどう答えていいか分からず、無表情で「はっ?」と聞き返した。


「絶対、絶対、絶対に返すから。神様に誓うよ。お金はお兄さんが送ってくれるって言ってるから。」


ここがどんなに助け合いの国で、私が郷に従ったとしても、それだけは気が進まない。


お金や物は無ければ「ない」で断れる。


だけど私の場合は無いわけではない。あるのだ。


「ある」場合は助けるのがセネガル流。


私がお金を持っていることをヤマも知っていた。


日本人とセネガル人の「ある、ない」の捉え方は違う。


私の場合、お金はあっても、それは計画的に取っておきたいお金であり、自由に使えるお金では無い。


今を楽しんで生きて来た人たちにはその感覚は分かるまい。


しかも、確実に返って来る確信があればそのお金を貸すことくらい対した問題じゃない。


ここで問題なのは、返って来る確信がないこと。


それでもヤマは切実に懇願していた。


これが演技なら役者になれる程だった。


私はついに断り切れず渋々お金を渡した。


もう状況的に断ることが出来なかった。



私は疲れもあってか、その夜はいつもより早く横になった。


いつもなら口うるさく話しかけてくるヤマも私の隣でジッとしていた。


私は電気を消しヤマに「お休み」と告げると、ヤマも「お休み」と返事をし、寝返りを打って私に背中を向けた。


疲れすぎたせいか、頭がチカチカしてなかなか寝付けない。


しばらくして、ようやくうつらうつらしてきたころ、私の隣で啜り泣く声が聞こえた。


ヤマが泣いている。


ヤマは必死に声を殺して泣いていた。


去年、私が涙を見せた時、「セネガルでは人前で泣いちゃダメ」と叱って来たあのヤマがかなりの勢いで泣いている。


私は気がつかないフリをしていた。


そしてヤマがなんで泣いているのか考えた。


文化や習慣、育つ環境が違っていても、みんな同じことで傷付く。


いつの間にか、私は知らない間に寝むりについていた。


目を覚ますと隣でヤマは寝ていた。


私が起き上がると同時にヤマも目を覚ました。


私たちはいつもと変わらない挨拶を交わしヤマは何事も無かったように平然を装っていた。


そしていつもと変わらない1日が始まった。



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2005年


ベンジーの家に戻ると、ウミが明るく迎えてくれた。


心なしか気を使って私を盛り上げてくれるようにも感じた。


そこにヤマもちょうど帰って来た。


ヤマは私の部屋に入ると、先生に中絶費用を支払って来たと報告してきた。


話しを聞くと、ヤマが行った所はどうやら病院ではないようだった。


私の解釈では、病院で中絶手術をする場合はいろんな手続きが必要らしく、保護者だか旦那さんの承認も必要で、若い小娘がひとりで病院に乗り込んだところで簡単に手術ができるわけではないらしい。


しかも、イスラム教の世界は中絶は許されないらしく、中絶したことが公になった場合、その人は一生後ろ指を指されるような人生を送らなくてはならないそうだ。


アフリカでは宗教の思想が政治を左右してしまうほど絶大な力を持っているため、その規律が社会の常識になっている。


宗教の教えが「悪」ならば「悪」。それを容認できるような柔軟な選択肢はない。


例えば、ゲイもイスラム教では認められていない。それが性同一障害という病気なのだ、とある権威ある学者が訴えたとしても、宗教的な考えが変わることはない。


やはりそういう世界では、宗教的「悪」を免れない人たちによって作り出される闇の世界もできてしまうのか、どうやらヤマはそういう闇の世界で中絶手術ができる人を探してをお願いしたようだった。


だからお金のやり取りは直接手渡しになる。公的な診断書や領収書などもちろんあるはずない。


手術は明日。ヤマは少々緊張している様子だった。







翌朝目を覚ますと、珍しくヤマは早起きしてシャワーを浴びていた。


セネガルの朝は冷える。


ヤマは水シャワーで冷えた体をブルブル震わせながら、そそくさと着替え、朝食も食べずに出かけて行った。


私はヤマを見届け、そのまま台所へ行くと、ウミが掃除をしていた。


声をかけると、ウミは嬉しそうに笑った。


ウミの笑顔はいろんな不安を軽くしてくれる。


このままずっと平和であって欲しい。


私は近くの売店で買ってきたパンを食べ、買い物に出かけた。


その日はいろんなところへ散策に行ったり、今までゆっくりできなかったことを楽しんだ。


セネガル人はお喋り好きなため、行った先々で必ず話しかけられる。


その度に立ち話になり、そのうち2人、3人が会話に交ざって来てちょっとした井戸端会議みたいになった。


いろいろ意見を言い合ったり、笑ったり、お互いの異文化交流が済むと、その場でバイバイして、次の目的地へ行く。次の目的地でも同じようなことが繰り広げられる。


忙しい時はめんどくさいが、時間がたっぷりあるときはとても楽しいひとときになる。


気が付くと、最終目的地に到達してないまま、日が暮れてしまっていた。


どんなに安全と言われているセネガルでも、日が落ちるとやっぱり心細くなる。


日本人は乗ると危ないと言われているミニバスに乗って、ベンジーの家に戻った。


ミニバスだとどこへ行くんでも50セファ(10円)。どんなに危ないと言われていてもリーズナブルには敵わない。


ベンジーの家に戻ると、ヤマはすでに私の部屋のマットの上に寝そべっていた。


どうやら私の帰りをずっと待っていたようだった。


ヤマは私を見ると起き上がって言った。


「手術してくれる先生に逃げられた。」



第50話へつづく




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