岡山で荒井さんに会うことになっていた。そこでその前に『共喰い』を観たが、1988年から昭和の終わる1889年初めを描いたこの映画の大傑作ぶりに堪能させられた。それにしても濃密な荒井脚本にがっぷり拮抗しえている濃密な映画を観るのは25年ぶりになることに気付いた。振り返ってみれば、1988年の『噛む女』(神代辰巳監督)『リボルバー』(藤田敏八監督)を最後に、荒井晴彦脚本に備えられた濃密な物語が、その物語を超えた豊潤な映画になることはなかった。『KT』は荒井脚本を監督阪本順治が消化しきれないまま映画は迷走したが、その混沌ぶりが奇しくも映画的興奮を残しただけだった。『ヴァイブレーター』は濃密な荒井脚本を表層的に疾走させることしかできない監督廣木隆一の演出が寺島しのぶをポップに魅せることとなり成功しただけだった。
稀代の映画作家青山真治は、『ユリイカ』にせよ『レイクサイド・マーダー・ケース』にせよ、自作であれ共作であれ、パイプ管だけで作られた構造物のように物語のフレームだけを示した脚本に、豪胆な映像を精緻に配置することで映画を傑作たらしめていたが、本作では濃密な映像が脚本に一歩も引くことなく拮抗し続けており、その濃密さに息苦しいほどだ。
主演の菅田将暉に、田中裕子、光石研、そして木下美咲、篠原友希子の女優陣、いずれのキャスティングも素晴らしい。なお田中慎弥の原作は未読だが、映画を見る前に原作を読む必要は全くないと言っておこう。

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