GLORY Heavyweight GRAND-PRIX 感想(2024.3.10) | 銀玉戦士のアトリエ

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3月9日(日本時間)深夜に行われたGLORYヘビー級グランプリの感想です。

 

視聴率低迷による地上波放送打ち切りや、赤字運営による選手へのギャラ未払い等のすったもんだがあり、2011年にK-1の運営会社であるFEGが破産手続きを開始し、事実上消滅してしまった旧K-1。

その後は、同時期にオランダで旗揚げされた新興キックボクシング団体であったGLORYが旧K-1の映像権利を譲り受けたわけなのですが、公式Youtubeでも度々旧K-1WGPの試合動画やハイライトが流されているように、GLORYは旗揚げ当初から新生K-1以上に旧K-1のかつての栄光を追い求めていた団体でありました。

しかしながら北米進出が上手く行かず、一時は団体消滅の危機にまで陥るも、今では何とか立て直しに成功したGLORYが、令和のK-1 WORLD  GRAND-PRIX 2024 FINALとも言うべきヘビー級8人制ワンデートーナメントを開催。まぁ、GLORYの今までの経緯からしてみたら当然の成り行きであります。

トーナメントには現GLORYヘビー級王者🇳🇱リコ・ヴァーホーベンの他、GLORYヘビー級のランカークラスの選手が多数出場し、仮に旧K-1体制が消滅していなかったら2024年のK-1ヘビー級GPは大体この面子が出場していたんだろうな、一応日本人枠として京太郎とスダリオ剛を入れていたのかな、って思ってしまいました。

 

UNEXTで生中継されていたとはいえ、欧州時間開催で日本では深夜帯に放送されていたため、K-1最高😝💖軍と言えども格ヲタから半分足を洗ってしまったワタクシとしましては徹夜をしてまでGPを観る気力は無く、後追いでの視聴となってしまいましたが、とりあえずGPの全7試合を観てみる事にしました。

 

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ヘビー級トーナメントを制覇したのは、現GLORYヘビー級王者👑🇳🇱リコ・ヴァーホーベン。

経験、実力、実績という点においては他の選手よりも一枚も二枚も抜きん出ている選手だけに、大方の予想通りにGP制覇を成し遂げました。

 

トーナメントの戦い方も相手の弱点を突きつつ決勝に向けてダメージを最小限に抑えた試合運びを行っていて、1回戦の相手はアウトボクシングが得意な選手なので、プレッシャーを掛けていって攻撃を散らしていき、逆に準決勝の相手🇲🇦ナビル・カチャブは体重157kgとフィジカルに優れた鈍重の選手なので、ミドルやローを蹴っていきながら距離を取ってのアウトボクシングを行使していました。

決勝の相手🇳🇱リーバイ・リルターズとはトーナメントの消耗度は明確で、2Rにダウンを奪われる波乱はあったものの、最後は順当にKOで仕留めてGPを制覇する事ができました。

 

パンチもキックも全力で放っていくような質の打撃ではなく、コツコツと確実に当てていく打撃が多かったので、ヘビー級にしては迫力不足の感は否めませんでしたが、それでも旧K-1消滅後から10年以上に渡ってキックボクシングヘビー級の世界トップとして君臨し続けてきた絶対王者としての巧さは感じられました。

タイプとしましては相手の良さを消してゆく🇳🇱セーム・シュルトさんと言ったところでしょうか。

 

 

個人的に面白いと思った選手がトーナメントでベスト4に入った🇲🇦ナビル・ハチャブという選手です。

身長188cm、そして体重は驚異の157kg‼️このポッチャリなお腹周りを見るとマーク・ハントと言うよりかは、インリン様から産まれたボノちゃんこと、第64代横綱の曙サンの勇姿を思い出します。

旧K-1に居たらWAKA様こと若翔洋さんとか、胴回し回転蹴りを繰り出していたシルムデブとか(名前忘れた)らと共に谷川モンスター軍の枠に入っていたであろう選手です。

この体型からして旧K-1ファンとしてはどうしても色物枠として見られがちではあるのですが、ハチャブのキックボクシングの戦績は28勝5敗、GLORYヘビー級ランキングでは7位に入っている、れっきとした正統派キックボクサーなのです。

 

ハチャブの戦い方は、体格差の利を活かしてプレスを掛けて距離を潰し、左右のフックを主体としたコンビネーションで畳み掛けてゆくというスタイル。

何気にボクシングテクニックがそこそこ高く、ローキックや膝蹴りも強烈です。

この戦い方でトーナメント初戦ではベテランの🇷🇴ベンジャミン・アデグバイを判定で下しました。

ただ被弾覚悟でゴリゴリ押してゆく突貫スタイルゆえに1回戦でスタミナを使い果たしてしまったのか、準決勝のリコ・ヴァーホーベン戦では失速してしまい、クリンチを多用するという消極的な試合内容で減点が入り、大差の判定負けを喫してしまいました。

 

準決勝の試合後には両陣営のセコンド陣が乱闘騒ぎを起こしていたそうで、もし実況席にタニーが居たら「んあ〜‼️‼️‼️これはいけませんっ💦‼️これはいけませんよぉ〜💦‼️‼️‼️」って叫びながらプロモーターの立場として思わず嬉々とした😜💖笑みを浮かべている姿が容易に想像出来るわけですが、それはともかくとしてハチャブは実はトーナメント参戦選手の中では23歳と最も若く、今後の成長に期待が持てる選手でもあります。

 

自分もそうでしたが、2002年のボブ・サップフィーバー辺りから旧K-1にハマったライトなファンは一度は妄想したであろう「もしボブ・サップがミルコ戦で心が折れていなかったら」「もし曙サンがK-1ルールに完全適応していたら」そんな俺😝たちが愛し、そして憎んだ谷川モンスター軍の累々たる屍たちが叶えられなかった最強神話を、🇲🇦ナビル・ハチャブならば実現してくれるのかもしれません。

 

 

今回のトーナメントで唯一、往年のK-1ヘビー級を呼び起こす戦いぶりを魅せてくれたのが、準優勝した🇳🇱リーバイ・リルターズというオランダの選手です。

身長2メートルで均整の取れた肉体。まさにバダ・ハリを彷彿とさせる恵まれた体格です。

 

トーナメント一回戦では前回の試合でバダ・ハリをKOで下した🇪🇪ウク・ユルジェンダルに初回いきなりダウンを奪われるも、その後に盛り返し2Rに右のカウンター一閃で逆転KO勝利で準決勝に駒を進めました。

準決勝で判定勝ちを納め、決勝のリコ・ヴァーホーベン戦ではトーナメントでの消耗度の差からローキックを効かされてダウンを奪われ、流石にもう終わりかなと思いましたが、2Rにリルターズがバックハンドブローで逆にダウンを奪い返した時は、Kヲタとしてキックボクシングの試合で久々に思わず前のめりになってしまいました。

結局最後は反撃及ばずリコにKO負けを喫し、トーナメント制覇は成りませんでしたが、長身から繰り出されるキレ味鋭いカウンターに強烈な足技、ダウンを奪われる脆さとそこからダウンを奪い返す意外性が同居したリルターズの試合に、2008年と2009年のK-1WGPで準優勝を果たした時の在りし日のバダ・ハリの姿が重なって見えました。

 

リルターズは現在28歳。トーナメントをほぼ無傷で勝ち上がってきたリコとは消耗度や経験の差が出てしまった結果に終わりましたが、彼こそが次世代のキックボクシングヘビー級を背負う逸材になるであろう、その片鱗を見せたトーナメントだったのかなと感じました。

 

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

 

とまぁ、GLORYヘビー級GPで気になった選手について綴ってきましたが、トーナメント全体としては完全決着が全7試合中2試合と、ワンデートーナメントとしては精彩に欠けた大会だったように思いました。

判定決着の試合ばかりでもレベルの高い緊張感に溢れる試合だったり、熱い試合が多いのであれば何の文句も無いのですが、今回のトーナメントの判定決着の試合はどれも割とグダグダでフィニッシュの気配が見られないような試合が多く、エントリーされた選手のレベルとしても優勝したリコ・ヴァーホーベン以外の選手は、旧K-1WGP全盛期のピーター・アーツ、ジェロム・レ・バンナ、アーネスト・ホーストといったトップ選手よりも実力的に劣るだろうなぁ、という印象でした。

ただGLORYは一応ドーピング検査を行うようにはなっているので、ドーピング無法地帯だった旧K-1と比較すると瞬発力やパワーといった選手のパフォーマンスが劣ってしまうのも仕方がない部分はあるのかもしれません。

 

あとは、今思い返してみるとK-1のワンデートーナメントって、2時間枠で編集されていた地上波放送との相性が良かったように思います。

90年代〜00年代のK-1やPRIDEの地上波枠での放送は、大会開始から1〜3時間遅れで放送が始まって、そこから煽りVも含めて2時間枠の中で編集された試合が地上波で流れていたわけですが、当時はネットストリーミングもSNSも無い時代で、リアルタイムで視聴する手段が生観戦かスカパーでの視聴しか手段が無かったので、ネタバレ情報を目にする事もなく、殆どの視聴者がディレイで放送されていた地上波枠での放送を、まるでリアルタイムで試合を観ているかのように心待ちにしていたものでした。

 

RIZINが地上波で放送されていた時の編集はかなり酷く、ファンからは非難が殺到していましたが、K-1の場合だと1試合3分3R制で行われるので、その分多くの試合が地上波で流せるというメリットがありました。

とはいえ2時間枠での放送なので、マニア好みの渋い選手の試合だったりがカットされたりダイジェストで流されては、オイラのような一部の玄人気取りのKヲタから度々批判の声はありましたが、フィニッシュ決着が多いトーナメントならば運が良ければ全ての試合が地上波で放送されていましたし、ワンデートーナメントという統一化されたテーマの格闘技イベントを2時間の放送枠で上手く纏め上げるには、3分3RのK-1ルールは尺的にもまさに打って付けのコンテンツでした。

これが5分3RのMMAルールの試合だと、地上波でフルで流せる試合は煽りVに割く時間も含めてせいぜい2、3試合が限度でしょう。

 

ネットストリーミング全盛となり、国内外ありとあらゆる格闘技団体の興行が生配信されるのが当たり前となった2024年において、数時間遅れのディレイで放送される地上波格闘技を提供されたところで、15年以上前の時と同じような興奮を味わえるのか、と問われると自分でも疑問に思うところがあるので、かつては地上波放送枠にフィットしていたワンデートーナメントの在り方というのも、考え直す必要がもしかしたらあるのかもしれませんね。

 

というわけで旧K-1時代を振り返りながらも語ってしまったGLORYヘビー級GP。

どうやら俺😝たちのカルロスさん率いる新生新生K-1もニューヨークやリオデジャネイロといった世界各国でヘビー級GPの予選を行っていくそうで、K-1もGLORYもかつての「立ち技世界最高峰」の舞台を再び構築していくための種蒔きがようやく始まったようです。

 

そういえばK-1 WORLD MAXも今週水曜日に開催されますね。70kgトーナメント開幕戦の試合に関しては一通りチェックして感想記事をアップしていきます。