UFC256 フィゲレーロVSモレノ「フライ級黄金時代へ」 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟UFCフライ級タイトルマッチ(UFC256・2020年12月)🏟

△🇧🇷デイブソン・フィゲレーロVSブランドン・モレノ🇲🇽▲(5R判定ドローにより王者フィゲレーロが防衛)

 

 

11月に開催されたUFC255のフライ級タイトルマッチのメインイベントで、王者デイブソン・フィゲレーロが挑戦者アレックス・ペレスを1Rギロチンチョークによる一本勝ちで下し、初の王座防衛に成功した。

 

🔆デイブソン・フィゲレーロVSアレックス・ペレス  参照記事🔜https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12639754795.html 🔆

 

フィゲレーロが勝利の美酒に酔いしれたのもつかの間、試合直後にUFC代表のデイナ・ホワイトから、このUFC255から21日後の12月12日に開催されるUFC256で、今回王座を防衛したフィゲレーロと、同じ大会で1RTKO勝利を納めタイトル挑戦権を手に入れたメキシコのブランドン・モレノとの、UFC史上初となるナンバリング大会連続タイトルマッチ出場のオファーという仰天プランが飛び出した。

 

フィゲレーロ、モレノ共に、試合におけるダメージは殆ど無かったにせよ、通常だと3ヶ月は試合間隔を開けるのが定例となっている格闘技の試合において、僅か21日という超ショートノーティスでのタイトルマッチのオファーは前代未聞の事であり、当然ながらこのプランに対してファンから多くの批判が巻き起こった。

 

だが、UFC256は度重なるメインイベントの変更により、メインイベンターが不在だったという事もあり、その窮地を救うべく、フィゲレーロとモレノに白羽の矢が立った。

 

デイブソン・フィゲレーロとしても、一度は階級ごと廃止されかけたUFCフライ級という階級を盛り上げるまたとないチャンスであり、ブランドン・モレノとしても、UFCを一度リリースされてからの復帰後で連勝を重ね、ようやく掴み取ったタイトルマッチの権利をここで逃すわけにはいかない。

 

会場は前回と同じUFC APEXで開催される。

この会場はUFCパフォーマンスセンターが隣接されており、UFCが誇る広大なトレーニングルームによる練習、寝泊まり、減量、体調管理のサポート体制が万全なのがメリットだ。

両選手は、二つ返事で試合のオファーを承諾した。

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

12月12日、UFC APEXで開催されたUFC256は、プレリミナリーファイトからスイングした試合が多く見られ、無観客の会場から早くも熱気が上がっていた。

チェイス・フーパー、ラファエル・フィジエフといった新鋭が鮮烈なフィニッシュで勝利を上げれば、WECから遡ると足掛け12年にも渡ってUFCに在籍しているカブ・スワンソンが、ベテランの意地を感じさせるKO劇を魅せ、健在ぶりをアピールする。

かと思えば、かつてUFCでトップ選手だったジュニオール・ドスサントス、ホナウド・ジャカレイ、そしてトニー・ファーガソンと言ったベテラン勢が陰りを見せた、ほろ苦い試合が見られるなど、試合毎に起伏が多く見られた大会だった。

 

そんな波乱ずくしの大会のメインイベントを締めくくるのは、デイブソン・フィゲレーロとブランドン・モレノによるUFCフライ級タイトルマッチだ。

王者、挑戦者、共に気合いの入った表情でオクタゴンに足を踏み入れる。

 

 

1R、王者フィゲレーロがプレッシャーを掛けてモレノをケージ際に下がらせ、モレノの攻撃が当たらない距離をキープしながらフリッカージャブ、右のクロスカウンターを当て、上下に打ち分けて試合の主導権を握る。

グラウンドエスケープの技も光る。

2R、引き続きプレッシャーを掛けて相手の攻撃を誘っていくフィゲレーロ。

カーフキックやバックスピンを交える事で攻撃の手札を増やしていく。

しかしモレノも相手の攻撃の打ち終わりを狙って2回のTDに成功、これで流れを少し引き寄せたか、モレノのパンチも徐々に当たり始める。

 

3R、フィゲレーロの変則打撃にモレノが対応してきたのか、フィゲレーロの攻撃が空転する場面が多くなる。

モレノはフィゲレーロの左ミドルもキャッチするが、フィゲレーロが放った前蹴りがローブローになってしまい、金的を貰ったモレノがうずくまる。

3分以上の休憩時間がモレノに設けられ、金的を放ったフィゲレーロがレフェリーから減点1を受ける。

再開後にフィゲレーロがTDを奪う。

だがモレノも金的のダメージを感じさせない程の動きを見せ、勝利への執念を燃やす。

 

4R、フィゲレーロもモーションが速いジャブ主体の攻撃に切り替えるが、サウル・アルバレス直伝のモレノの回転の速いジャブ、ワンツー、ボディから左フックへと繋げるコンビネーションと、相手の攻撃を貰っても首を逸らす事でダメージを軽減する技術が、このラウンドに来て冴え渡る。

フィゲレーロの打撃からギロチンチョークを狙う動きにもタックルで返し、攻撃の打ち終わりに2度目のTDを決め、強烈なパウンドを一発打ち下ろす。

追い込まれれば追い込まれる程強さを発揮するメキシカンのメンタルとタフネスがここで発揮され、このラウンドは挑戦者ブランドン・モレノが完全にポイントを取る。

モレノの頑張りにより予想外のシーソーゲームとなった勝負の5R、王者フィゲレーロがサウスポーに構え、強烈な左ミドルを何発かヒットさせる。

タイトルマッチを想定し最後にスタミナを温存させていたフィゲレーロ。反対にオーソドックス構えのモレノは、相手の前手前足が障壁となる喧嘩四つの構えと、これまでのダメージの蓄積もあり、踏み込めなくなってきてる。

終盤、モレノが右の脇を差してケージレスリングで押し込んでいくが、終了間際にフィゲレーロが差された腕を支点に、投げでのTDに成功。パウンドを放って終了しジャッジに印象付ける。

 

 

5分5Rをフルに戦い抜いた両者は試合終了後に健闘を讃え合い、抱擁した。

そして本来ならば満員の観客で埋め尽くされるべき無観客の会場で、モニター越しに見つめる世界中のファンに向け、声援を煽っていた。

自信に満ち溢れた両者の表情からは、俺達がUFCフライ級を盛り上げたんだ!という充足感で漲っていた。

判定は3Rのフィゲレーロの金的による減点1の影響もあり、2者が47-47のイーブンの裁定を下し、ドロー決着で王者デイブソン・フィゲレーロが通算2度目の王座防衛に成功した。

 

王者フィゲレーロはこのタイトルマッチが行われる前日、食中毒による感染症に罹ってしまい、一時は試合出場も危ぶまれる程だったという。

ほとんど一睡も寝られず、体調的にも万全とは言えない状態の中、タイトルマッチ出場を決断し見事にメインイベンターとしての仕事を務め切ったその姿は、UFCのチャンピオンとして誉れあるものだ。

 

🔆参照記事🔜http://nba-japan.com/?p=9020&amp&p=9020&__twitter_impression=true 🔆

 

強打が持ち味のフィゲレーロの攻撃を貰い、3Rに金的を受けながらも、驚異のタフネスを見せてくれた挑戦者ブランドン・モレノの頑張りも大いに評価されるべきだ。

UFCを一度リリースされながらも、再契約後にトップランカー達とのタフな戦いを勝ち抜いて実力を上げていった彼だからこそ、今回のタイトルマッチには並々ならぬ想いがあったはずだ。

 

🔆UFC ブランドン・モレノVSジェシー・フォルミーガ「新生UFCフライ級の未来」🔜https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12583921274.html?frm=theme 🔆

 

 

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

年末にUFCの公式Twitterで、年間ベストKOやサブミッションを投票するツイートをしていたのだが、その中の年間ベスト興行を投票する部門において、コロナ禍初のUFC興行となったUFC249(ゲイジーVSファーガソン)や、UFCとしては年間最高のPPV売り上げを記録したUFC251(ウスマンVSマスヴィタル)を抜いて、今回のUFC256が一位にノミネートされていた。

中重量級と比較するとまだまだファンからの注目度が低いフライ級タイトルマッチがメインイベントだったUFC256が、こういった形でファンにようやく認められたというのは、これまで不遇の立場に追いやられていたフライ級にとって、大きな前進となるだろう。

MMAにおける全階級中、最速の攻防が堪能できる男子フライ級は、本来であればアジア人が活躍しやすい階級であり、アジア独特の武道のエッセンスを採り入れる事で更なる発展が期待できる、可能性に満ちた階級である。

 

これまで、UFCフライ級の試合で「面白い」「テクニカルだ」と思えた試合は結構見られていたのだが、フィゲレーロVSモレノのような、万人のファンを魅了する「跳ねた」試合というのはこれまでには無かった。

それだけに、あのタイトルマッチを画面越しで観た事で、他のUFCフライ級ファイターは大きな刺激を受けただろうし、これから階級も更に活性化していくに違いないはずだ。