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谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物、オプション)、証券一種外務員
▼3月の悲惨指数は上昇
昨晩米労働省より公表された米CPIは、前年比3.2%増でした。
先んじて先週末に公表された米失業率は3.9%、CPIと合算した「悲惨指数」は7.1%となりました。
悲惨指数 悲惨指数(ミザリー・インデックス、Misery Index)とは、米国の経済学者アーサー・オークン氏が考案した国民の生活度合を表す指数で、失業率と消費者物価指数の上昇率を加算して算出される。悲惨指数が10%を超えると生活が圧迫されることで国民の不満が高まり、20%を超えると時の政権に影響を与えると言われている。(野村證券) |
左軸:CPI、失業率、悲惨指数(%) 右軸:NY金(ドル)
昨年12月、そして先月には6.8%にまで低下していたものの、今月の悲惨指数は再び7%台に乗せてきました。
コロナ前は6%割れでほぼ横ばいでしたので、落ち着いてきたとはいえ米国民の生活度合いはまだ物価高と失業に圧迫されていることが分かります。
そして、悲惨指数の高まりもNY金相場を支える要因の一つとなっている可能性があります。
そんななか注目されているのが「失業率」です。
▼失業率
2022年2月に4.0%を記録したのを最後に失業率は低下していましたが、昨年5月に記録した3.4%から再び上昇に転じています。
そして先週公表された失業率が3.9%、再び4%台に乗せ始めると米国の雇用への警戒が一気に高まりそうな雰囲気です。
中央銀行の責務は「物価の安定」と「雇用の最大化」ですが、失業率の高まりは米経済への楽観的な見方を後退させるかもしれません。
そこへ今回、米CPIも上昇していることが確認されました。
▼スタグフレーション
2022年7月には一時9.1%にまで上昇していましたが、昨年7月には3.0%にまで低下。
しかし「3%の壁」が厚く、なかなか割り込む事が出来ません。
そして昨夜公表されたCPIは予想を上回る結果となったため、再びインフレ低下への期待が後退しつつあります。
失業率が再び高まりを見せるなか、物価上昇への高まりも警戒され始めました。
「スタグフレーション」への警戒です。
スタグフレーション 不況にもかかわらず、世の中のモノやサービスの価格(物価)が全体的に継続して上昇すること。英語表記「stagflation」の日本語読みで、「stagnation(景気停滞)」と「inflation(インフレーション)」の合成語です。通常、不況時は需要が落ち込むことからデフレとなりますが、原油など原材料価格の高騰などにより、不況にもかかわらず物価が上昇することがあり、こうした状態が「スタグフレーション」です。不況で賃金が上がらないにもかかわらず、物価が上昇するという厳しい経済状態で、1970年代のオイルショック後に日本はこうした状態となっていました。(三井住友DSアセットマネジメント) |
昨年3月初旬にも「スタグフレーション」に対する議論が起こりましたが、1年経過した今回も再び警戒感が高まっています。
直後にシリコンバレー銀行の破綻などもあり、株価は調整を余儀なくされました。
引き続きインフレ鈍化期待の後退や雇用指数の低下などが確認されると、FRBは再び物価抑制や景気対策に奔走することになります。
当局は、難しいかじ取りに迫られそうです。
【市況】グランサム氏、初期のAIバブル崩壊を見込む 弱気派として知られる著名投資家のグランサム氏がきょう、米株式市場について弱気な長期見通しを公表した。同氏は「米株式市場の長期的な見通しは、歴史上のほとんどの時期に劣っているように見える」と述べている。 グランサム氏は広く支持されている投資家で、バブルを見極めた実績を持つ市場の歴史家でもある。彼は2000年のITバブル崩壊と2008年の弱気相場を予見し、2022年の弱気相場も的確に言い当てた。 ベテラン投資家は、バリュエーションの指標であるCAPEレシオ(景気循環調整後の株価収益率)と過去最高水準の企業利益の言及。「利益とマルチプルが同時に記録的な水準にある場合、それはまさに“二重カウント”であり、“二重のリスク”であることを忘れないでほしい」と述べている。 グランサム氏は、AIが世界を変えるテクノロジーになる可能性があるとしても、長期的な可能性を期待してこれらの銘柄がすぐに上昇することは正当化されない可能性があるという。 インターネットから電話、鉄道、運河に至るまで、このような技術革新はすべて、投資家が超長期的な可能性の大半を現在の市場価格に即座に織り込んでしまうため、初期の大規模な誇大宣伝とバブルを伴ってきたと指摘。AIのような技術革新の完全な効果は、最初のバブルが崩壊するまで現れないことが多いという。(3月13日付「かぶたん」より) |
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