横須賀線の車両から、逸る気持ちを抑えつつ、北鎌倉のプラットホームに降り立つ。

駅から一足出てみると、円覚寺の静寂と観光客の喧騒が相反する。

それはそれで心地良い。

円覚寺を後にして浄智寺の裏へ進むと、そこは外界から隔絶されたかのような葛原岡への山道。

ほどほどの起伏に息を切らしながら、山林の中、歩を進める。すれ違う人は殆どいない。

30分ほど歩くと、葛原岡。
目の前には葛原岡神社、祈ることはとくにない。

ここで、丸太の椅子で一休み。
見晴らしよく、富士山がかすかに見える。
まるで蜃気楼のよう。

一息ついて歩き出し、緑道を抜けると
鎌倉の海街を一望、ガードレール。

鎌倉の街の先には由比ヶ浜。
左奥には逗子の海岸、丘陵がはっきり映る。

海には光が注ぎ込み、淡いブルーが網膜に優しく届く。そんな海と暮らす人々の息遣いが聴こえてくるようだ。

数多の文豪が愛した街。
そして、君が育った街。

隣で、「きれいだね」と君が微笑った。