微小プラスチック、心血管イベント・死亡リスク上昇と関連
https://www.carenet.com/news/journal/carenet/58232
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頸動脈プラークからマイクロプラスチックまたはナノプラスチック(MNP)が検出された患者は、検出されなかった患者と比較して、追跡34ヵ月時点の心筋梗塞、脳卒中、全死因死亡の複合リスクが有意に高かった。
・いくつかの研究で、摂取や吸入、皮膚への曝露を通じてMNPが体内に入り込み、細胞組織や臓器に作用することが示されており、MNPは母乳、尿、血液だけでなく、胎盤、肺、肝臓などでも見つかっている。
・検体採取法および炎症性バイオマーカーの測定法;
頸動脈プラークの摘出検体を用いて、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析、安定同位体分析、電子顕微鏡検査を行い、MNPの存在を分析。炎症性バイオマーカーは、酵素免疫測定法と免疫組織化学法で評価した。
コメント;
マイクロプラスチックとナノプラスチック両者の総称がMNPのようです。
<本論文の解説>
マイクロプラスチック・ナノプラスチックに関する記念碑的研究(解説:野間 重孝 氏)-1800
https://www.carenet.com/news/clear/journal/58303
・この研究は、MNPと心血管イベントの関係を疫学的な見地から明らかにした世界初の研究であるばかりでなく、環境問題の研究としても、まさしく記念碑的な研究であると位置付けられるものではないかと思う
・プラスチックの定義
主に石油に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可塑性の物質
・マイクロプラスチックとは100μm~5mmの大きさのプラスチックの破片をいう。
これは一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックに分類される。一次マイクロプラスチックとは主に洗顔料や歯磨き粉などの製品に配合された微小なプラスチックをいい、海洋中の化学物質を吸収し、プランクトンや魚に摂取されやすいという。
二次マイクロプラスチックとは元々大きく作られたプラスチック製品が自然破壊で破壊・分解されて小さくなったもので、最終的には目に見えないマイクロサイズになったものを指す。
この破壊過程には紫外線が関係していると考えられている。
ナノプラスチックとは一般に1nm~1μmの範囲のものを指す。
いずれもが海洋汚染の原因として近年問題にされている。
より小さいものほど生物体内に取り込まれやすく、その影響も大きいのではないかと考えられている。
・「皆さんがこの文章を読みながら何気なく口にしているミネラルウォーター、実はMNPがたっぷり含まれているのかもしれないんですよ」
コメント;
今まで食用肉によるプリオン病が話題になっていましたが、魚(特に海産物?)を食べる際にも注意が必要ということになりそうです。
魚を多く摂取する人種、国にMNPの蓄積が多いという仮説のもとに疫学的な調査は簡単にできそうです。
今回の研究でも、そのようなリサーチは容易な気がします。EPAの摂取料が多いイヌイットは「心筋梗塞は少なく脳出血が多い」ということのように記憶しています。
MNPの摂取量は北極圏に近い海では少ないのでしょうか。海洋別の海水中のMNP含有量も知りたいところです。
今回の研究は頚動脈で検討したものですが、心血管イベントを論ずるなら、冠動脈のアテレクトミー( DCA)の際のサンプルでの検討がよいように思うのですが、手技的な問題があるのでしょうか。
ところで、海水とは関係のないミネラルウォーターが危ないという執筆者のコメントはブラックユーモアでしょうか。
葦の髄から循環器の世界をのぞく
微小プラスチックと心血管イベント・死亡リスク
http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/88734819.html
(2024.3.18より引っ越し)
石垣定哉 「 VENICE l 」 リトグラフ 版画