午前中、ちょっとしたサイクリングも兼ねて買い物に出かけると、ようやく5月らしいというか、やっと初夏の空気が。
町はどことなく静かで、その静けさがさみしく感じたけれど...
いよいよ私のゴールデン・ウィークも今日で終わり...
いつものごとく、結局何もできなかったなあという後悔ばかりが先に立つ。
まあそれでも、いい映画を観て、ドラマも観て、少しだけ書くことを考えて...それでいいんじゃないか。
というわけで、今日も映画を。
2001年のボスニアの映画「ノー・マンズ・ランド」を。
実際にはボスニア・ヘルツェゴビナ、スロベニア、イタリア、フランス、イギリス、ベルギーの合作映画で、各国の役者、スタッフが入り乱れて作られたようだ。
監督はダニス・タノヴィッチという人で、そういえば「美しき運命の傷痕」
を観たな、その時に今日の作品を観ないとな、と書いたことを思い出した。
ボスニア紛争のお話で、中立地帯と位置付けらている「ノー・マンズ・ランド」と呼ばれる塹壕に取り残された、ふたりのボスニア兵とひとりのセルビア兵の葛藤をメインに、彼らを取り巻く国連防護軍、マスコミも含めて物語が展開する。
ポイントはボスニア兵のひとり、ツェラが負傷して動けないのだが、その身体の下に地雷が仕掛けられているということ。
それがこの物語の枷となって、もうひとりのボスニア兵、チキとセルビア兵のニノの不思議な敵対関係を生み、やがては国連軍やマスコミを巻き込みながら、時にはコミカルに、時にはドキドキハラハラの展開で進んでいく。
もうね、私、完全に侮ってました。
ヨーロッパで少し話題になった戦争映画? 反戦映画? あ、一応アカデミー外国語映画賞は獲ってるのね...その程度の認識で、何となくイメージ的にはメッセージ性ばかり先行して、起承転結もあやふやな展開ののろい、雰囲気ばかりのヨーロッパ映画んだろうなと、完全になめてました。
語弊があるかもしれないが、しっかりとした構成で、起承転結も明確で、キャラクター配置とその対立構造もそつなく描かれていて、なおかつ物語そのもののスピード感もある...スイマセン、侮ってました。
しかもしっかりとしたメッセージ性もあり、救われないラストとその余韻はまさに映画。
いやいや、ダニス・タノヴィッチさん、スイマセン。
キェシロフスキの遺稿を引き継いだ「美しき運命の傷跡」よりも、映画としてはある意味カッチリと作られているという印象だ。
まあね、調べてみると映画製作を学ぶ傍ら、国の情勢を受けて従軍カメラマンを経験することになったことが、この初監督作品が生まれる要因になったらしいのだが、それにしても処女作でいい映画をお撮りになりましたねえ。
今日は改めて、不必要な説明をいかに排して物語を「転がす」かということの重要性と、対立構造と枷を明確にすることの大切さを教わりました。
私も物語をグイグイ転がそう。
ダニス・タノヴィッチさん、ありがとうございます。
- ノー・マンズ・ランド [DVD]/ブランコ・ジュリッチ,レネ・ビトラヤツ
- ¥4,935
- Amazon.co.jp