日曜日。
映画、です。
ウチで映画、です。
今日は戦前の作品を。
1937年、つまり昭和12年の「人情紙風船」という作品を観た。
監督は山中貞雄という人で、この映画を撮った当時27歳だったが、その翌年出征し、28歳10ヶ月で戦没しているそうだ。
黒澤さんと同世代...こういう監督さんがいたんだなあ。
その遺作となった「人情紙風船」...長屋に住む浪人とチンピラのふたりの物語。
冒頭、その長屋に住む老武士の首吊り自殺に譚を発し、その通夜を絡めながら長屋の住人たちをサラリと描写するあたりは、なんともうまい。
それから、いわゆる「暖簾をサッとくぐる」ようにメインの浪人・海野又十郎と元髪結いのチンピラ・新三の物語を少しずつ進めていく...昔の映画ということでその印象は「地味」な展開ではあるが、それにしてもそのさりげなさというか、実に無駄のない描写の積み重ね...感服しました。
新三は、地元のヤクザに反目していて、その対立構造もこの映画の重要なポイントとなっているし、浪人・海野はかつて父が世話になっていた毛利三左衛門に仕官を頼むが邪険にされるというのもまた対立構造となっている。
そのふたつの対立構造が誘拐事件と面白うように絡み合って行く展開は、ちょっと意外だったというか、古い映画らしからぬ「うねり」となっていた。
海野又十郎を演じていたのは河原崎長十郎。
私が子供の頃、テレビで活躍していた河原崎長一郎、次郎、健三の三兄弟のお父さんで、前進座という劇団の創始メンバーのひとりだそうだ。
新三を演じていたのは中村翫右衛門。
この人も前進座がらみの人のようだ。
あ、そういえば小林正樹監督の「怪談」に出ていたあの人...ていうか、あの「遠山の金さん」の中村梅之助のお父さんなんだって。
そっか、この映画の冒頭に前進座総出演とあった...あ、なるほど、そういうことね。
その前進座...中央線の下り電車に乗っていると吉祥寺に差し掛かるところで見えるあの劇団...具体的にはよく知らなかったが、調べてみると日本の演劇の歴史においてはかなり重要な位置を占める劇団のようだ。
知らない役者さんばかりだったが、唯一加東大介だけ、気が付いた。
でも加東大介はこの作品では市川莚司という名義で、この人もまた前進座のメンバーだったんだそうだ。
ていうかさ、監督の山中貞雄...当時27歳だって。
すごいね。
中国に出征して、そのまま戦死したんだって...哀しいね。
でも間違いなく、ちゃんと、日本映画史にその名前は刻まれている訳だね...またひとつ、勉強になりました。
さて、今晩は...
回鍋肉だ!