リハビリで病院へ行った。

今月に入って、右脚の「症状」は日に日にさまざまな変化が起こっているような気がしている。

そのせいか、少しずつではあるが、快方へ向かっているという実感にもなっている。

でも、やはり少しずつ、少しずつ...

 

そういえば担当の子に「あのこと」を聞きそびれちゃったな...

 

まあいい、今日もウチに帰って黒澤映画を観た。

昨日の「影武者」に引き続き次回作「乱」を観ようと思ったが、ふとまだ観ていない残り3作品を早く観てしまおうという気になって、その内の「デルス・ウザーラ」を観た。

 

70年の「どですかでん」で初めてカラーに挑戦した黒澤さんのカラー第2作。

しかも30作のうちで唯一の「70mm」作品ということで、そういう意味でも期待した。

 

タイガの森に暮らす狩猟者のデルス・ウザーラと森を調査する軍人との交流を通じて、自然との共生、文明の意味を問う...そういう印象だ。

序盤から中盤、物語の中間で第1部が終わり、第2部が始まったあたりまでは、エコロジーでドキュメンタリータッチの狩人と軍人の交流を淡々と描く、とても地味な映画だと思っていたのだが、終盤に差し掛かり、デルス・ウザーラの「老い」のテーマが加わると一転、物語は急激にうねりだす。

そこからラストまではそれまで静かだった物語に重いテーマをたたきつけてくる。

その「転」から「結」まではパワフルな展開はやはり、黒澤さんだった。

 

一瞬、黒澤さんはやっぱりこの作品あたりから作風が変わっていったのかなと思いきや、全編観終わってみるとやはり黒澤さんは黒澤さんだったという訳だ。

 

ただ、その語り口は「赤ひげ」までの緻密なシナリオが力強い演出で彩られているという印象から脱却していたことは事実で、テンポという意味でもとても緩やかになっていたのは確か。

昨日の「影武者」でも思ったことだが、やはりシナリオ作りそのものが変わったのかなと。

「赤ひげ」までの起承転結のはっきりした、緩急のバランスの優れたシナリオではなく、そのセオリーを恐らくあえて無視し、新たな次元へ足を踏み入れようとしていたのではないだろうか。

 

私にはそれに付いてゆけない部分もあり、いささか困惑気味であるが、それでも黒澤映画独特の力強さは感じられたように思う。

でもカラー前とカラー後は明らかに変化が見られるようだ。

シナリオライターを目指す身としては、勉強になるのはやはりモノクロ時代の作品群で、「どですかでん」や今日の「デルス・ウザーラ」、「影武者」や「乱」などは私にはまだまだハードルが高いのかも知れない。

 

余談だが、今日観た「デルス・ウザーラ」はアカデミー外国語映画賞を獲っているがあくまでも「ソ連映画」なのだ。

当時の黒澤さんのさまざまな苦難がそれに象徴されているようにも思う。

ただ、せっかくのカラーの70mm映画なのに、保存状態はかなり悪いようだ。

私が今日観たのは昨年BS2で放送されたハイビジョンではないSD放送のものなので、厳密には分からないが、それでもそのフィルムのあまりの保存状態の悪さが感じられ、それがとても残念だ。

そもそも撮影される時点で使われた70mmフィルムそのものの品質がかなり悪かったらしいのだが、当時のソ連では致し方ないことだったのだろうか...

いずれ観られるだろう「ハイビジョン」のバージョンで、再確認してみたい。

 

さて、私が観ていない黒澤映画は「八月の狂詩曲」と「まあだだよ」の2作品のみとなった。

シナリオ執筆になかなか取り掛かれない状態が続いているし、こうなったら早いとこ「制覇」してすっきりしちゃった方がいいのかも知れないな。