【演奏と身体の使い方】楽器を持ち上げ続ける仕事③フィンガリングやポジションとの関係 | 嶋村順子〜音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜

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~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

だいぶ前に書き上げて投稿したと思い込んでいた記事が、下書きBOXから見つかってびっくりしているところです。
スマホのアメブロアプリの「下書き保存」に入り込んでいました。。。しくしく。。。

このシリーズ記事、①と②の後に間が空いてしまいましたが、こちらが③でございます。はい。
このシリーズの過去記事はこちらです。


【演奏に役立つ身体の使い方】楽器を持ち上げ続ける仕事①腕の重さを支える
【演奏に役立つ身体の使い方】楽器を持ち上げ続ける仕事②楽器ごとの事情


①では「楽器を構える」前の「腕を持ち上げる動作」について書きました。
②では楽器ごとに「楽器の重さを支える仕事」の観察分析に関して書きました。

いかがでしたでしょうか。
人は皆、初めて楽器を持った時に「重い!」「この態勢を続けるってしんどいかも」と感じたと思います。
だからこそ各楽器の教本には「構え方」「姿勢」「手の形」「腕の動かし方」などの情報がたくさん扱われているのでしょう。

自分の身体が楽器とどう関係しているかを考える時、身体の使い方の工夫をする時、
そこで『自分自身の身体の感覚』をつぶさに観察することをどれだけやっているでしょうか。

示されたお手本や正解を自分に取り入れる時に、自分の身体感覚をないがしろにして「正解」だけど押し付けていたとしたら。。。


長い時間を経たのちに身体から発せられた「違うんじゃないかな」と言う声を無視し続けていたら。。。


楽器を持ち上げ続ける仕事の他に、私たちには重要な動きの仕事があります。
それについて今回は考えてみたいと思います。


【楽器の重さを支える仕事、楽器の操作を受け持つ仕事】

前回②の記事では、楽器ごとに楽器の重さをどこでどのように受け止め、または持ち上げ続けているのかを見ました。
指を動かしたりポジション移動をする前段階での「楽器の重さそのものとの付き合い方」を掘り下げたわけです。


私はフルート奏者ですが、かつては「構え方」は気にかけても、指を動かしている時の変化にまではあまり気づいていなかったと思います。
師事していた先生から効率よく指が支える構え方を教わることができたのもありますし、
「指がよく回るようにしたい」と思ってやっているうちに自然に良い持ち方に変化した部分もあります。
でも、そこに繊細な「自己観察」があったかというと、恐らくなかったです。
その証拠に、かつての長時間の練習や、緊張を伴う本番の演奏では、腰や背中など身体がひどく痛くなりました。

今、私が生徒さんと一緒によく行っているのは、


a : 自分自身が立つこと(座ること)
b : 楽器を持つことと自分自身が立つ(座る)こととの関係
c : 楽器を構えながら、楽器を操作すること


この順番で「自己観察すること」です。

a はアレクサンダー・テクニークの基本的なレクチャーをすることでより良い姿勢バランスを取り戻します。

そしてb と c を一度分解して探究すると、楽器に必要な操作がクリアになります。

自分の身体の重さを受け持つのは身体のどこの骨と筋肉なのか?
楽器の重さを受け持つのは身体のどこの骨と筋肉なのか?

 

まずはここを整理することで、楽器操作の受け持つ仕事を明確にすることができます。
(もちろん、身体の構造は骨と筋肉だけではありません。レッスンで一緒に探究しましょう)


    

 

【指を動かす〜フィンガリングとの関係】

腕、手、指の構造を知り、適切に使うことが「うまくいく」ことに繋がります。
多くの楽器奏者がその重さを手で受けています。

〜実験1〜
ここで、クラリネットやオーボエなどの右手の親指で重さを支えるケースで考えてみます。

皆さんも一緒にやってみてください。

まず、重さを支える親指が「楽器を安定」して持てるための親指の仕事の「分量」を考えてみましょう。
ふにゃふにゃでは支えられないので、ある程度親指を固定することは必要ですが、その仕事量を探ります。
必要最小限の省エネで親指を固定した時と、無意識に大きな力で「しっかり固定」した時とで、違いがわかりますか?
よく見受けるのが「しっかり固定」しすぎているタイプです。
この場合、省エネで親指を使っている時より、その他の4本の指の動きが渋くなります。


はい、「うらめしや」の手をしてみてください。
ここで親指以外の4本の指を根元からバラバラと動かすと、よく動きます。
「うらめしや」の手の親指を「しっかりと動かないように力を入れて固定」してください。
そして親指以外の4本の指を動かそうとすると・・・渋いですよね。動きにくい。
つまり、親指が楽器を支えようと必要以上に頑張ると、他の指の動きやすさを損なってしまうことがわかります。

親指の仕事の分量を「省エネ」にできるかどうか、という新しい発想がここで必要になってきます。
教則本の「正しい持ち方」の写真ではわからない部分ではないでしょうか。


【腕を動かす〜ポジション移動との関係】


次に、ヴァイオリンやトロンボーンのように腕を大きく使うケースを考えます。

楽器の重さを支えるために、ヴァイオリンは鎖骨の上に乗せて、左手でもネックを支えます。
トロンボーンは左手でつかむことで主に重さを支え、右手はスライド操作を担います。
(指の操作ももちろんありますが、ここでは腕に注目してみます)

それぞれ、楽器の重さを支えている場所にまず注意を向けてみます。
静かに構えている時だけでも、「楽器を持ち上げ続ける仕事」があることは、①②の記事でも書きました。
そこに弓を使ったボウイングや、スライドを動かすポジション移動など、右腕や体の他の部分の動きが加わると、当然ですが楽器が不安定になります。
その不安定さを安定させたいのは当然ですが、そこに「自分の身体への観察」が欲しいところなのです。


〜実験2〜
ではまず、静かに楽器を構えて立ちます。(座ってもいいです)
左腕は楽器を重さを受ける仕事をしています。それを静かに観察しておいてください。
では、次に右腕でやるボウイングやポジション移動をする動きをゆっくりと少しづつ加えていきます。

その時、

右腕がやっている動きに対して、左腕は何かやっていますか?
右腕の動きに呼応した左腕の動きの存在はありますか?
また、体の中心である胴体には何か動きがありますか?

おそらく、右腕の操作に対応して、左側でも何かが起きていると思います。
胴体にひねりの動きを発見するかもしれません。
首の動き、鎖骨の動きも、何か気づくかもしれません。

それに気づいたら、その動きを止めずに続けてみてください。
左腕で楽器を構える「形」「フォーム」を「正しく固定しよう」と意識しすぎていたせいで気付かなかった動きかもしれません。


弦楽器は左手で楽器を支える仕事とポジション移動、右手でボウイングと、さらに複雑な仕事をしています。

管楽器全般では腕や手の動きに加えて「呼吸の動き」が入ってきます。


演奏は、複数の動きを同時に行う非常に高度な作業であることがよくわかりますよね。

だからこそ、それぞれの動きを個別に見たり、動き同士の関係性を知ることが大切だと思うのです。

 

私のレッスンでよく生徒さんが気づかれるのは、

 

・左と右の腕同士が呼応しているように動いた方がやりやすい

・首から胴体、脚に至る脊椎全体が自由に動けるとやりやすい

・腕と背中とのつながりを感じると片腕にかかっていた重さが少し楽になる

・首のひねり、胴体のひねり、骨盤のひねりが使える方が楽にできる

などなどです。
 

最初に方に書きましたが、

『自分の身体が楽器とどう関係しているかを考える時、『自分自身の身体の感覚』をつぶさに観察する』
ことで、改めて自分の楽器を出会い直せるように思います。

初めて楽器を手にした時、その重さを感じた新鮮さを思い出してみてください。
当たり前だった楽器との関係性を見直すチャンスになるかもしれません。
「まるで初めて会った楽器」のように、好奇心をもって観察してみてはいかがでしょうか。


3回の記事、長期にわたって書いてまいりました。
楽器を構えること、操作することの関係性を自分の身体の動きを軸にして見直すことで、

新しい可能性が見つかるのではないかと考えています。
長々とお付き合いくださって、ありがとうございました。
(やっと投稿できました。。。ホッ。。。)

嶋村順子

 


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嶋村 順子 
ATI認定アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者
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