皆さんは、クラウドソーシング 【crowdsourcing】という言葉をご存知ですか?

 

これは、「アウトソーシング」とは異なり、

専門的な知識やスキル、ノウハウを持つ外部の業者が業務を請け負うのではなく、

当該業務を専門としていない一般の人たち(群衆=クラウド)に協力を依頼して、

無償または低コストで作業を実施してもらうことをいいます。

 

ソフトウェアなどの開発において採用されてきた手法ですが、

企業の製品やサービスの開発手法としても注目されています。

 

不特定多数の人たちから幅広く製品のアイデアを募り、

これまでにない価値の創出を目指すなど、集合知を利用した新しい展開が期待できるといわれています。


これに少し関連して、朝日新聞にこんな記事が出ていました。

そのまま、紹介します。

 

『マイクロソフト―大転換から日本も学ぼう』 (2008年03月09日(日曜日)朝刊 社説)

 

パソコンソフトの巨人、米マイクロソフト(MS)が「創業以来の大転換」に踏み切った。秘中の秘としてきた基本ソフト「ウィンドウズ」や応用ソフト「オフィス」などのプログラム情報を、無償で公開すると発表したのだ。

この「転向」には懐疑的な見方もある。欧州の独占禁止規制当局からの追及をかわす方便だとか、ネット検索大手ヤフーの買収を進めるためのイメージ戦略に過ぎない、といったものだ。

たしかに、ウィンドウズの心臓部である「ソースコード」の公開を見送るなど未練がましい面もある。だが、IT(情報技術)分野で加速する枠組みの大変化に、さすがの巨人も抵抗できなかった、という大きな構図でとらえたい。

つまり、特定の企業が知識や人材を囲い込み、商品を特許などで守りながら独占的に販売する。そんな「閉じた」経営や開発の手法が行き詰まってきた。

代わって台頭したのは、情報をオープンにして社外の才能に開発や商品化の機会を与え、彼らと連携することで競争力を強める「開かれた」戦略である。この代表が検索最大手の米グーグルだ。

長い目で見れば、MSもこの流儀に宗旨替えせざるをえない。「長期的な成功のためには、オープンで柔軟な技術基盤の提供が必要だ」というスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)の言葉が、それを物語っている。

思えば、MSは妙な企業である。21世紀を担う先端的なIT製品を世界中へ送り出しながら、体質のほうは20世紀によく見られた古い独占志向の企業だからだ。20世紀と21世紀の境目を体現しているようにも見える。

この変化を日本企業はどう受け止め、対応したらいいだろうか。

日本は、大企業が系列の下請けを従えるピラミッド構造の「閉じたモノづくり」によって、戦後の経済発展を実現した。しかし、いまやこのやり方が壁に突き当たり、暗中模索している。

IT産業ですら重層的な下請け構造に頼っており、体質はMSよりも古くさい。ピラミッドを壊し、独創性のある企業がさまざまに結びつくネットワーク型の産業構造に転換することが課題だ。MSの大転換は、その好機だろう。

他の製造業でも、ネットワーク型の連携が始まっている。米ボーイング社は新型旅客機「787」の開発で、秘中の秘だった設計ノウハウなどを協力企業の三菱重工業や東レに公開した。開発能力を高め、性能の向上を図るためだ。

地方の中小企業でも、独自に海外まで結びつきを広げ、成功している例がいくつも登場している。

なんでも囲い込んで上下関係で縛る時代から、オープンで対等な協力関係が多くの実りを生む時代へ。グローバル競争のなか、産業のあり方が世界規模で大きく変化している。日本の産業も体質を切り替えていかなければならない。