棟別管理にしないと問題があるのか?

Q: 分棟型のマンションです。修繕積立金はこれまで全部一緒に管理していました。最近、一部の区分所有者が、「棟別管理にしないと災害のときなどに問題が起こる」と主張して管理規約改正を言い出し、総会に提案しようとしています。

総会はほとんど参加者がなく委任状ばかりなので、このままでは規約改正を主張する出席者に過半数を占められてしまいそうです。本当に棟別管理が必要なのでしょうか。


A: 相談者様のお住まいのマンションは、何棟がエキスパンション等で繋がっているか分かりませんが、仮にA棟とB棟としますと、A棟は何らの被害もなく、B棟はかなりの被害が発生したという例が阪神淡路大震災のときにも見受けられました。

そうした事例では、相談者様のマンションと同じく修繕積立金を一括して管理していたので、A棟とB棟との話し合いが難航したようです。

一般的には、分棟型のマンションの場合でも一つの管理組合として管理運営を行い、国交省で示している「単棟型」の標準管理規約をモデルに使っているようですが、大震災の教訓を踏まえれば、各棟別に修繕積立金を区分するほうがよいと思われます。

あるいは、一つの考え方として、A棟管理組合・B棟管理組合を作り、A棟とB棟で共用する敷地や「附属施設」を「A棟B棟連合管理組合」で管理をするという方法もあります。

その場合の参考となるのが、「団地型」の標準管理規約です。

団地型の標準管理規約では、修繕積立金を「共用する附属施設等の管理」に用いる「団地修繕積立金」と「各棟修繕積立金」に区分して、運用するようになっています。

ぜひ、標準管理規約(団地型)を参考に、理事会で検討してみてはいかがでしょうか。

次に、「このままでは規約改正を主張する出席者に過半数を占められてしまいそうです。(過半数の賛同により規約の改正が行われてしまいそう)」とありますが、規約は、区分所有者にとっての「基本的なルール」であり、大変重要なものです。

そこで、区分所有法でも、規約の改正に当たっては『出席者の過半数』ではなく、「区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)による総会の決議」が必要であるとしています(区分所有法31条)。また、規約改正議案を提案する場合は「その議案の要領も通知しなければならない」とされています(区分所有法35条5)。

修繕積立金を棟ごとに区分経理するのか、規約を改正するのかなどの問題は、区分所有者にとって大変重要な事項ですから、総会前に説明会やアンケートなどにより、区分所有者からの意見を聞き、マンションの現状をもとに話し合うことが必要ではないでしょうか。

その際は、マンション管理士などの専門家に相談しながら行うことをお勧めいたします。


2007/1/30 日経新聞引用