医務室を自分のエリアにしてしまった娘は、最近安定しています。
今日は、ひも通しの作業をたくさんしたそうです。
それから、休憩時間には、自分のエリアを出て、ろうかで他の利用者さんとも
ボール投げを楽しんでいたとか・・・
ここが居場所で、行ってからすることの見通しがたち、どのワークをするか
いくつかの選択肢の中から選べるようにしてもらっているという状況が、心地よいのでしょう。
刺激に弱く、不安な状況に置かれると、常同行動やこだわりが強くなります。
それは、常同行動やこだわることで、なんとか不安を回避して、落ち着こうとしているから。
だから、こだわりが強くなったり、感覚過敏が顕著になってきたなと感じられたら、
どこの部分でしんどさを感じているのか、見直す時期が来たと思えばいい。
問題行動は、やりたくてやっているのではない。
それが常態化してしまわないうちに、早く手を打ちたい。
状況をどうとらえて、どう取り組んでいけばいいのかに関しては、
わたしはいつもTEACCHが頼りでした。
内山登紀夫先生が、TEACCHの基本理念を次のように紹介されています。
● 自閉症の特性を理論よりも実際の子供の観察から理解する
● 子どもに新たなスキルを教えることと、子どもの弱点を補うように環境を変えることで
子どもの適応能力を向上させる
● 個別の教育プログラムを作成するために正確に評価する
● 構造化された教育を行う
● 認知理論と行動理論を重視する
● 現在のスキルを強調するとともに弱点を認める
● 生涯にわたるコミュニティに基盤をおいた援助
その子がいる教室や作業所の環境だけでなく、その子をとりまく物事や人の意味、これも環境でしょう。
いろいろな環境で自立的に動けるように、その子に必要な構造化をする。
本人に合わせて工夫を重ね、安心して動ける生活圏を広げていくことが目標です。
環境の意味がわかるように工夫することで、多すぎる音声指示や身体接触などの
ストレスフルな要因を減らすことができます。
就労の安定のためには、環境の構造化、そしてシングルフォーカスという特性をふまえた配慮が
望まれます。
一例としては、ある事柄にだけ注目すれば、後のことは何も考えなくていいような設定にする。
あるいは他のものは取り除く。
そういった設定(環境調整)が、自閉症の人にやさしい環境だと思います。
そういった安心できる環境にいて、はじめて、本来の自分の力を発揮できる人たちだから。
自閉症は認知障害です。だから、わたしたちとは違う物事のとらえ方、感じ方をしていて、
特有の学習スタイルを持っています。
そして障害をもっているということは、弱い部分(where is vulnerable)を併せ持っているということ。
それを、克服とか、「慣れていかないとね」となんでも経験のような無謀なことをして欲しくありません。
弱点を認める。弱いところは補えばいい。
それは、ヒューマニズムの基本です!
弱さを認め、自閉症の人のあり方を否定しないTEACCH があって、本当にしあわせだと思えます。
自閉症の人はとても感受性がつよくて、しっかりした自尊心を持っています。
そこを汲み取れるかどうか、尊重(respect)できるかどうかは、支援者個人の責任です。