令和6年 決算審査特別委員会:病院事業の経営改善について
(山田)病院事業の経営改善についてです。まずはじめに、病院内事業の業務委託の範疇について、過去から取組んできている所ですが現在の業務委託による業務効率化の状況について、伺わせてください。(経営企画室担当課長)業務委託についての御質問でございますが、直営の市立2病院におきましては、これまで病院の改築等の機会をとらえて検討し、業務の委託範囲を拡大してきたところでございまして、現在では、医事業務、給食業務、検査業務、施設管理業務、物流管理業務、医療機器保守業務など、多くの業務を委託しております。病院運営におきましては、その性質から専門性が高い業務が多いことから、民間への業務委託を積極的に行うことにより、民間が持つ専門的なノウハウや人材を活かし、必要な業務を効率的かつ効果的に行っているところでございます。(山田)令和5年度川崎市病院事業会計決算では3病院合計7 億 9,218 万円の純損失となりました。公立病院には高度医療等の提供や市民・地域社会全体の健康と福祉を支える役割がありますので赤字が続くからといってやめることは考えられないわけです。公立病院はなくてはならないもの、それでも赤字が続く状況について、結局、収支のどういった点がそのような状況を招いているのか令和5年度決算の総括を伺います。(経営企画室担当課長)令和5年度決算の総括についての御質問でございます が、 令和5年度決算におきましては、診療収益は増加したものの、新型コロナウイルス感染症関係の補助金が大幅に減少したことや、人件費や物価の上昇等の影響に伴い委託料等の経費や薬品費等の材料費が増加したことなどにより、病院事業会計といたしましては6年ぶりに純損失を計上したところでございます。(山田)令和元年度から経費圧縮等に関するアドバイザリー業務の委託を実施しています。川崎病院と井田病院での年間委託料は計600万円との事で、専門性の高い医薬品や機器等の取引においてコンサルに入ってもらうことは大変有効です。本コンサル業務は医薬品や診療材料調達に関するアドバイザリーが範疇ですが、専門性の高い病院事業において、他に実施しているコンサルがあったら伺います。また、その他、コンサルを依頼する事に関する見解を伺います。 (経営企画室担当課長)コンサルティング業務委託についての御質問でござい ますが、医療経営コンサルティング業者への業務委託につきましては、経費圧縮等に関するアドバイザリー業務のほか、診療報酬に係る分析支援業務についても委託しております。この診療報酬に係る分析支援業務は、診療報酬制度が非常に専門的で、かつ、改定頻度も高いことから、提供する医療の公定価格である診療報酬を適切に請求するために取得可能な加算などについて、適時アドバイスを受けることは大変有意義であると考えております。これらのコンサルティング業者への業務委託につきま しては、職員だけでは得難い専門的な知見を効率的に得られるものでございますが、費用対効果に見合う業務に限定し、適正に業務管理、成果評価を行いながら活用してまいりたいと考えております。(山田)コンサルはおっしゃる通り費用対効果と成果評価を行いながら活用すること、重要です。会派の代表質問で、値引き交渉アドバイザーの従前と比較しての節減状況の質問をしたところ、「具体的な効果額を算出するのは困難だが効果はあったと考える」という答弁でした。毎年のルーティンで契約を続けることがないように、効果額の算出が困難ということでしたらコンサルの効果を何をもって評価とするかは明確にしていただき、成果評価をしっかりと行いながら判断・活用をしていただければと思います。次に、病院経営に対する全職員の意識について、病院の将来を考え、部門ごとの目標設定と数字・コスト意識を全職員がもつことは非常に重要です。各病院の目標設定といえば、「事務事業評価」がありますが、その目標値は職員も意識しているのか? と思います。気になるところでいますと、例えば川崎病院だと病床利用率(一般)の目標値は78.5%で実績は67.5%。救急患者受入数の目標値は30,300人で実績は18,907人。病床対応や救急受入の現場のひっ迫の声も聞こえる中、この目標値自体が本当に対応可能な現実的な数字なのか疑問に感じます。職員の病院経営改善の意識向上のための数字的な目標の設定有無について、事務事業評価の目標値設定が現場の声や現実に即した数字になっているのか、2点、見解を伺います。(経営企画室担当課長)事務事業評価における目標値設定についての御質問でございますが、 川崎市総合計画の事務事業シートの目標値は、各病院現場での検討を踏まえて設定しており、その実績値についても、各種会議体を通じて共有しております。近年、「地域包括ケアシステムの推進」や「地域医療構想に基づく病床機能の分化・連携」などの改革が求められ、特に医療分野におきましては、従来の「病院完結型」の提供体制から、急性期から回復期、在宅医療に至るまで、地域全体で切れ目なく必要な医療が提供される「地域完結型医療」への移行が、より社会全体に浸透してきております。また、こうした中で、市立病院におきましても、積極的に地域の医療・介護などの担い手と連携し、 地域全体で、高齢化の進展に伴う医療需要の変化に対応した取組を進めてきたことなどから、病床利用率、救急患者受入数の実績値が目標値を下回っている状況にございます。次期総合計画の目標値設定に当たりましては、こうした社会状況の変化も踏まえ、病院現場の職員とも共有しながら、地域の中で市立病院が役割を果たす上で適切な目標を設定してまいりたいと考えております。(山田)「病院の将来を考え経営改善をはからねばならない状況である」という意識を全職員が我が事で持つことは必須です。次期総合計画の目標値設定においては病院現場の職員と共有し、現実的で効果的な目標を設定していただきますようお願いします。地域の実情・ニーズに応じた診療科の充実は診療収益への反映に繋がりますが、そのような取組と今後の検討について伺います。(経営企画担当課長)地域の実情・ニーズに応じた診療科の充実についての御質問でございますが、 市立病院はこれまでも、不採算医療や政策的医療、高度・先進医療等を提供する重要な役割を継続的に担っていくという、従前から求められている公立病院としての地域における役割分担を踏まえ、全国一律の公定価格である診療報酬制度のもとでの診療収益の確保と必要な医療提供体制の確保に取り組んできたところでございます。今後につきましても、本年3月に策定した市立病院中期経営計画に基づき、地域の基幹病院又は中核病院として、一般病院や診療所等では提供が困難な高度医療や検査、手術などを提供し、公と民との適切な役割分担のもと、地域の医療機関や介護施設等との相互の機能分担と連携の取組を、より一層推進してまいりたいと考えております。(山田)病院の収益は診療報酬の公定価格によることが多いわけですが、自治体統一の状況の中でも黒字の公立病院は存在しています。他自治体で黒字公立病院の分析について見解を伺います。(経営企画担当課長)公立病院の経営状況についての御質問でございますが、総務省では、令和4年度までの全国の公立病院事業の決算状況を公表しておりますが、それによれば、新型コロナウイルス感染症対応の影響を受ける前である令和元年度には、川崎病院、多摩病院を含め36%の公立病院が黒字となっておりました。病院は、公立・民間を問わず、診療報酬という全国一律の公定価格で運営しておりますが、特に公立病院は、立地する保健医療圏で求められる役割や、近隣の医療機関の立地状況、その地域の物価や人件費の動向、医療従事者の人材確保の状況など、立地している地域性によって経営状況は大きく異なる状況にございます。こうしたことから、収支などの財務状況を単純に比較することは困難ではございますが、立地条件や病床数、診療科目などの類似性を踏まえつつ、公立病院としての経営改善の取組などの参考事例を把握・分析し、「川崎市立病院経営計画」に基づき、経費節減と収益確保に努めるなど、経営の健全化の取組を進めてまいります。(山田)ありがとうございました。立地している地域性による部分が大きいことは確かではありますが、黒字公立病院の経営努力の中には参考になる事も多々あると思いますので、是非、把握・分析していただきまして、さらなる経営の健全化の取組を進めていただきますよう、お願いします。