なあ、みんな
おでこの毛を剃ってやるぞ
と、とうちゃんはいった。
まだ田んぼにほたるが見える頃
わたしたち、六人姉妹は
ほっぺを桃色にそめて
キヤーッとよろこんだね。
とうちゃんは一人ずつ、
順番におでこの産毛を
剃ってくれた。
ももこにしてね!とみんなで
ほほえみあった
えんがわにはあまい
スイカのさらがあり夕日に
照って黒い影が延びていた。
もう50年もまえに成る
とうちゃんとの思い出。
もっと大切なよい思い出が
たくさんあるはずなのに、
何故かそれが一番
思い出深いのね。
ねえ、父ちゃん
終わり