今日は、えっちゃんの8歳のお誕生日。

ママは  苺のケーキを買うと  張り切っています。


でも、えっちゃんが  本当に好きなのは

チョコのロールケーキなのです。


  えっちゃんもお誕生日  なので、胸に丸い  アップリケのついた  黒い  セーターを  着せて貰いました。


  お母さんも  朱いシャツに  黒の花柄のスカートで   お出かけ。

  えっちゃん は  どうしても チョコの  ケーキが  食べたくて  たまりません。

   すると、バスの  となりの席に  小人が  座っています。


「やあ!」と、にっこり  声を  かけてきました。

「え!君たちは?」

「僕は  トパーズ。おいらはルビー」

「えー!かっこいい。僕えっちゃん」

「お願いがあるの!デパートからチョコのケーキ以外のケーキを見えなくしてほしい」

「んー!いいよ。君のその新しいエナメルの黒いくつを片一方くれたらね」

「え?ん、いいよ!わかった」すると、小人はうれしそうに、黒いエナメルのくつをしょって降りてゆきました。


 バス停につくと、ママは

「まあ、くつはどうしたの?!」と、怒ります。えっちゃんはすこし、申し訳なさそう。二人はケーキ屋さんへ、向かいます。


  デパ地下は和菓子屋さんもチーズ屋さんも魚屋さんも、八百屋さんも、とにかくたくさんのお店があり人で混雑していまさす。

「あれ?苺のケーキは?」

「え?あれ?今日はもう、売り切れました」えっちゃんは

「ワーッ」と、喜びました。

何軒廻ってもみつからず、つかれた二人はフルーツジュース屋さんで一息入れました。


「しょうがないわ」とママが言うと

「僕はチョコのロールケーキがいい!!」と、笑いました。


「そうしようか?」と、ママも笑顔。すると、ケーキ屋さんのショーウィンドウの中にエナメルの黒いくつが片一方入っていました。

「あれ?」

「あ、それ僕の!!」

  そして、黒いくつもちゃんと履いてチョコのケーキをぶら下げて

夕日の中を   二人で帰りました。


  黒い影が長く伸びていました。

(終わり。この物語はフィクションです。)