中車さんの襲名披露狂言『ぢいさんばあさん』

今年3月にも名古屋御園座で 上演いたしております。


その2場 鴨川料亭の場面。

ここで名古屋の御園座と今月南座では決定的な違いがふたつございます。


両方ご覧になられた方で その場面の違いが分かられた方は
かなり通なお方です。(笑)


でも、おわかりにならなくても 当たり前ですので悲観しないで下さい。(笑)



ヒントのひとつは 名古屋では笑也さん扮する ”るん”のお役が扇雀さんに変わり、
若夫婦の妻のお役が笑野さんから春猿さんに変わっております。

(これは答えではありません)

それと同じように鴨川料亭の場面でもお役が違う人が居るのです。


これはお分かりにならなくても仕方がございません 
特殊な例ですから・・・(笑)


実は美濃部伊織の朋輩4人のお役 私と薪車さん以外の
弘太郎さん 門松さんの山田恵介と石井民之進のお二人の役が 
今回は入れ換わっております。


まるで間違い探しですね(笑)


伊織に接する台詞と実年齢とが 3月で配役された時に 幕が開いて蓋を開けた時、
演出の方で これは逆ではなかったかと云う感想となり
今回は 逆の配役となりました。


お陰でまあ 初日までのお稽古の時にややこしかった事!!(笑)


お互い 自分の台詞の時に二人が云わず 相手の台詞の時に
ふたりが発すると云う珍事が 何回となく起きておりました。(笑) 

・・・気持ちは分かります。よくある事です。
私なんかも『ヤマトタケル』の ミヤズの父と母は・・・どっちがどっちやら。




それと 意味は違いますがもうひとつの違い。  


昨日は銃刀法の許可のいる刀のお話をさせて頂きました。


もうひとつの違いは、舞台上で使用するには 昨日の刀より
さらに厳しい許可のいるものです。



皆様 何だと思われますか? (笑)


毎日 皆様がお使いになっているものです。


答えは 火。



料亭の場面で、今回は舞台上の上下(かみしも)の蜀台に 本火がございます。


名古屋の時は 実は劇場からの申請が遅れまして 本火は使用できなくなり、
電気の蝋燭火が使われておりました。(一応 チカチカしておりますが・・・)


舞台上で本火を使いますのは 銃刀法以上に消防署の許可が厳しく 
申請をして どの場面 どの場所と過去の小道具の写真を提出し 
どのくらいの炎になるか・・・。

舞台上で30センチ以上の炎が上がる事は 禁止されております。

まして小さな蝋燭の炎でも 何メートル以内の近くに燃える物はないか?

支えてあるものは不燃物の金属を使用しているかを 公演が始まる前に申請をして
舞台稽古には 消防署の方々も実況検分の為に ご覧になっておられます。


その安全確認があった後 GOサインが出て舞台上で本火OKとなる訳です。


事実 過去の時代 洋の東西を問わず火事で劇場が焼け落ちしてしまった例は
たくさんございます。


海外公演での折 オーストリアのウィーンの劇場はその大火の過去があり
歌舞伎公演の上演最中も 舞台上下には警察と消防署が目を光らせておりました。


もちろん今回も大火事となっては元も子もない訳ですから、
これほど厳しくされても 仕方ない訳ですが、

料亭の場面 やはり本火と 電気の光では情緒も雰囲気も違い、
舞台効果としては 比べようもございません


皆様如何 感じられましたでしょうか?

でもお客様方が おわかりになろうが なかろうが
これは 舞台上でのこだわりの一つです。


以上 鴨川料亭のおおきな違い二つを あげげさせてもらいました。

全部お分かりになった方 おられましたら ビックリです(笑)