昨日のブログでの亀治郎さん 『鬼揃紅葉狩』で 前シテで着ている衣裳。

更科の前の所謂、赤姫の衣裳の上に ある衣を着ております。

(昨日までは更科姫と 紹介しておりましたが、
 番付には更科の前と 表示がございますので
 変更させて頂きます。)

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これを「常磐衣(ときわころも)」と申しまして、
良くお芝居には登場致します。


有名なところでは 『義経千本桜 吉野山の道行』で静御前が
着ております。


旅道中に着物の上に着ます 道行?オーバーコートとでも 
申しましょうか。
 


但し、このお衣裳 同じ道行でも 着る役者さんによって 
柄が違うのです。


今回 亀治郎さんの更科の前は 『紅葉狩』 秋と云う事もございまして 
白地に柄は「菊唐草」。

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お姫様が維茂に促され 踊り始めます時に 
この白地の「常磐衣」を 両方肌脱ぎに致しますと 
下の赤姫の衣裳が出て参り 
落ち着いた感じから 恥じらいながらも 派手な感じへ
と変わります。


その姫の謡いの時に 拍子木が入り 
舞台奥の”紅葉羽目の背景”が 上がりますと 

後ろに並んでいる七丁七枚の長唄さん 

鳴り物さんたちの登場となり 

曲も長唄へと変わり ここで義太夫 常磐津 と三方掛け合いの

曲となり 一気に華やいだ舞台となります。   



この、舞台の華やいだ雰囲気の変化は 
ご観劇頂いた方だけの 思い出でございまして、

私がこのブログで いくらご説明しても 
充分 ご理解は頂けないかも・・・と思います(笑)




紅葉に彩った 信濃路の戸隠山。 

その山々の風景を 唄に織りなしながら 山尽くしの唄となり 

静かな曲から維茂たち主従が 眠りに陥ると 

段々 曲もテンポアップして参り 激しさを増して参ります。



最後は 三方掛け合いではなく 三方合曲となり、踊りを終えますと
侍女たちの「維茂様には まどろみたもうか?」と云う声に対して
更科の前は 鬼の本性を現し 

男声で「こりや!!」

と 侍女たちを制し 赤姫の扮装のまま 

鬼と変化した動き方で 下手御幕へ 入って参ります。

侍女たちも それへ続きます。



後シテの鬼女の扮装での 立ち回りとは違い 
ここに歌舞伎ならではの演出がございます。


男性が演じる女形 そこから変化して男方(立役 ”たちやく”)に
変わる流れが 曲と相まっての 舞踊劇 


これこそ歌舞伎の醍醐味ではないでしょうか?

(同じ衣裳での 更科の前、しかし 内面は同じではない事を
 どうか お汲み置き頂ければと思います)



これからご観劇頂くお客様 『鬼揃紅葉狩』では 得てして 

維茂を眠らせるための 子守唄のような曲の時に 

お客様も同様 いい心持ちになられて 
客席で眠られるお客様も 多々おられます。

が、ここだけはお眠りにならず 
しっかりと この亀治郎さんの変化 曲目の変化を 
ご覧いただきたいと 思います。