AO入試(Admissions Office入試)は、学力試験だけでなく、志望理由書・面接・プレゼンテーションなどを通して受験生の「意欲・個性・将来性」を評価する入試方式。

現在では「総合型選抜」という名称で、多くの大学が導入している。

 

かつての入試は「ペーパーテストで一発勝負」が主流だった。

しかしそれでは、探究的・創造的な学びを評価しきれないという問題もあった。

そこで、知識偏重を改め、「多様な才能を受け入れる」ためにAO入試が登場した。

 

AO入試は、学力以外の力(思考力・主体性・表現力)を評価できる。

学びへの意欲や将来の目標を深く考えるきっかけになる。

学校や地域活動など、これまでの努力が評価されやすい。

一部では早期合格により、進学後の準備に時間をかけられる。

 

とくに「自分の言葉で考えを伝える力」を鍛える点は、社会人になってからも大きな武器になる。

 

一方で、課題も少なくない。

 

評価基準が不透明で、担当者の主観が入りやすい。

面接・志望理由書などの“対策産業”が拡大し、不公平感がある。

学力保証が不十分なまま入学する学生も一部に見られる。

「誰でも受かる入試」という誤解を招くケースがある。

などなど。

 

このため、「AO入試は平等ではない」「学力を軽視している」との批判も根強く存在する。

 

批判があるから、では完全に廃止してしまえばいいかと言うとそうでもない。

多様な学生を受け入れる道が閉ざされることになりそう。

 

しかし現状のままでは、受験の公平性や大学教育の質にも悪影響を及ぼしかねない。

したがって、「廃止」ではなく「改善」こそが必要だと考えられる。

 

面接や志望理由書の評価基準をより明確にする。

高校での探究活動や内申評価を連携させる。

入学後に一定の学力補完プログラムを義務づける。

「AO=特別枠」ではなく「多様な入試の一形態」として位置づける。

 

こうした取り組みにより、AO入試は「努力と可能性を正当に評価する仕組み」へと進化していくだろう。

 

AO入試は、学力だけでは測れない人間的な魅力や探究心を評価できる貴重な制度。

ただし、形骸化すれば「やる意味のない入試」にもなり得る。

つまり、“やるべき”入試だが、“今のままでは不十分”。

本来の目的である、「多様な才能を受け入れる教育」を実現するために、

高校・大学・社会が一体となってその質を磨いていくことが求められる。