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ISAO TSUGE OFFICIAL BLOG

 「ああ、まずいなぁ、これ今日までだぁ」

 わたしは駐車違反の払い込み切符を見て云った。近所にローソンがあるのでそこに行けば事足りると安堵した。今日のうちにこれを払い込まなかったら錦糸町のなんだかよくわからない警察の手続きの辛気臭い場所へ行かなくてはならない。

 「あとで一緒について来てよ」と家内に云った。

 「いいけどナチュラルローソンにして」

 「え、今パスタ食べたばかりじゃない」

 夕食にわたしお手製のディマーレを食べたばかりなのだが、炭水化物を食べない家内はほとんど魚介ばかりを食べる。

 「もしかして魚介あんまり食べてないんだ」

 「そうそう、だからコンビニでちょっとお買い物したいのよ」と云ってわたしたちはキラー通り沿いの店に車を走らせた。

 

 彼女はひとしきり健康に良さそうなものばかり見繕って満足そうだ。わたしもまったくもって面倒臭い支払いを済ませてホッとした。

 「ねえねえ、アイスクリーム見ようよ」

 「いいわよ」

 「あれ?ここなんかいつものアレがないね」

 いつものアレとは本来であれば電子レンジで数秒温めてから食べる固いシャーベットを、わたしたちは固いスプーンで削り取りながら食べるのが好きなのである。それがアレである。

 「なんかここ、お洒落なアイスばかりみたい」と笑った。

 「ああ、でも僕、タンサンが飲みたいな無性に。アイスは特にいいや」

 

 買い物を済ませると車に乗り込んだ。運転はわたしである。少し走った。

 「ああ、なんかタンサン、今飲みたくなって来ちゃったなぁ」とわたしは云った。

 「あら、でも後ろの席にあるから届かないわ」

 買い物袋は運転席の真後ろで、助手席の家内の腕では届かなかった。

 「ああ、じゃあいいよ、家に帰ってから飲めばいいんだからさ」

 「あら、そんなのそこに車停めて後ろからとって飲めばいいのよ。飲みたいときに飲まなきゃダメよ」

  わたしはハタと思った。

 「確かにそうだよね。ああ、僕はこれまでコレをしたいのにって思って、ついやらないまま我慢して来た人生だった。そうだよ、タンサン、今飲まなきゃ」と云ってすぐさま傍に停車した。

 「プシュ」

 わたしは口でボトルのキャップを開ける音をさせた。そしてひねった。そして本物のプシュの音がした。それを口に運ぶと口内にあのチクチクと刺激しながら喉越しを洗浄するようなギリギリの幸福感が襲った。

 「ああ、美味いぃー」

 「でしょ?」と云って家内は笑った。