(2022/02/16 記)

  

HX99 でお手軽に月を写せるようになったものの、望遠鏡を併用した従来の方法での

結果を超えるものではなく、あくまで従来方法での設営に気後れしてもそこそこ満足の

出来を得られる、というものに過ぎません。

それに様々な位相での撮影を一通り終えたので、HX99 単体での撮影がマンネリ化

しないように、従来方法での撮影にも一工夫ありたいものです。

 

大別すると、2つのアプローチがあるでしょう。

 

・従来方法にHX99 を加えたアプローチ

・従来方法でHX99 では到達出来ない領域を更に拡張するアプローチ

 

今回は前者での最も単純な置き換えをテストしました。

 

従来、ETX-90 やミニボーグ45ED にFinepixF31fd をずっと使って来ました。

2006年製の630万画素機です。

  

 

今に至るまで開発されたコンデジの中で、1画素あたりの面積がトップクラスに

大きいため、暗部ノイズが極めて小さい特性(自社独自開発のハニカム形状

素子によるもの)があり、またその後の多画像化したデジ一(いわゆる「ミラー

レス」という奇妙な松下用語機含むレンズ交換式デジカメ。α-NEX など)では

フォーカルプレンシャッター(レンズ交換を可能とするため、レンズ内で光束一点

を切るのではなく、素子直前で大きな幅を高速に駆動する必要がある)の動作

ショックが大きく、脆弱な小型望遠鏡と架台・三脚ではブレが生じて解像感を

損ねるが、そのようなことがほぼ無い特質も加わって、他に代替が出来ない

ものとして重用して来たのでした。

 

しかしそのシャッターショック回避の特質はそのままで、画素数が2110万に

アップする(有効画素数は1820万)となれば、FinepixF31fd からHX99 への

換装を検討してみたくなるのは当然でしょう。

 

そのことに気づいて早速、2022/02/10 (木) の終業後、天気予報が外れて

夕方にはクリアーになった空で、青空バックの状態のまま、テストをしました。

 

青空バックでのテストには意味があります。

勿論、この日も含めて最近の天気予報があまりあてにならず、明日の晴天予想

もどうなるか疑わしいということもありましたが(実際、終日曇天)、撮像の背景が

夜間の黒一色だと、望遠鏡とカメラの光軸の合致具合などが分かりにくいという

ことがあるのでした。

写野を外れたところは黒で、写野は青だと、その青部分が全画面に広がるか

などの大きさ、形状やムラから接続状態が把握し易いのでした。

 

月は既にベランダのひさし近くにありました。

 

  

急いで設営準備をするものの、いつものコリメート法撮影(コンデジはレンズを外せない

ので、直焦点撮影や間接法(リレーレンズ)撮影が出来ません)用の汎用アダプタでは

HX99 のレンズ長が長く、取り付けが出来ません。

 

  

そこで大昔にMeade製を自分で改良した旧式の汎用アダプタを久々に登場させました。

 

 

取り付けOKの後、おおよその光軸合わせを室内でやっておきました。

 

  

早速テストです。久々にスカイパトロールII 赤道儀も登場です。

テストに集中するために月の追尾を自動化しておこうと、前夜からセットアップして

おきました。しかし電源が入りません。作業後に点検すると電池ボックスの中で

単3型充電池の一部に電池ボックスとの接触の悪いところがあったようでした。

仕方なく、追尾は手動で行いましたが、EQ5 赤道儀用にベランダにつけておいた

ビニルテープでの三脚位置マーク(いわゆるバミリです)のおかげもあって、

スムーズな追尾調整はできました。

 

   

肝心のテスト結果ですが、全くダメでした。

事前に懸念はしていましたが、単体であれほど素晴らしい高倍率描写をするHX99 の

レンズのズーム倍率がワイド過ぎる設計が災いして、汎用アダプタで接眼鏡とレンズの

間を前後調整できる範囲で、合成焦点像の写野が全く広がりません。

 

   

HX99 のズームをアップして行くと、若干は写野が大きくなりますが、全画面に広がる

には至らず、その一方で月は過剰にアップされてしまい、全景を狙うことが出来ません。

 

 

またETX-90 の副鏡による写野中央の影が強く出るために、対象を中央から外すか、

ETX-90 とHX99 の光軸を意図してズラすかしないと月に影が出ます。

FinepixF31fd では撮影直前までのモニタ画面で見えている副鏡の影が、シャッターの

瞬間に消えてくれる(恐らく設定した絞り2.8 開放が撮影の瞬間のみ有効で、影が

分からなくなるほど薄くなる)ので、その苦労はありませんでした。

 

  

その原画像を周囲トリミングの上で、後処理をしてみましたが....。

 

  

ETX-90 の内蔵プリズムによる反転像も後処理で再反転して、色調や階調を調整

するも、写野のいびつな感じや月にかかる影を解消するには至りません。

 

   

他のコマでも同様に試しました。

 

   

光軸ずらしを少なめにしたため、写野中央の副鏡の影が見えており、それが

月の上にもかかっています。

副鏡の影が濃く出るのは、HX99 のレンズが暗い(F31fd で絞り込んだ状態と同様)

こともあるのでしょう。

    

  

後処理での調整をしても、副鏡の影が消えることはありませんでした。

 

  

月の全景は諦め、HX99 のレンズをズームアップさせ、最大限の写野を確保すると

副鏡の影は目立たなくなりましたが....。

 

   

  

更に周囲トリミングして、狭い写野を感じさせないようにする仕上げは出来ますが、

更に疑似的に倍率がアップするのに解像感が相応しません。

 

     

青バックでなく夜間の撮影では背景や階調のムラの汚さはかなり誤魔化せるとは

思います。

しかし副鏡の影はやはり月の上に出てしまうので、光軸をズラした撮影は必要に

なるでしょう。それは解像感を落とす原因にもなります。

 

屈折式のミニボーグ5ED なら副鏡の影は出ませんが、この日はテストする

時間が、月がベランダのひさしに隠れるまでに残されていませんでした。

扱いが手軽な範囲では、対物口径が倍で、解像度や集光力が高いETX-90 から

試してみたのは自然なことでもありました。

 

月がベランダのひさしに消える前に、比較対象として、HX99 をF31fd に替えて、

同条件で撮影をしておきました。

 

 

ほぼ画面全体が写野と一致して、副鏡の影もほぼ分かりません。

背景の青バックも均質で、後処理をすれば夜間撮影と同じように仕上げることが

出来ます。  

 

    

裏像を再反転して....。

 

 

仕上げました。

全景を撮っていますが、細部を拡大すると、上掲のHX99 での強拡大画像より

細部の解像感があります。

 

 

勿論、コリメート法撮影(眼の代わりにカメラのレンズを押し当てる)なので、接眼鏡を

替えれば、上掲のHX99 での強拡大を超える拡大撮影も可能です。

 

今回は接眼鏡を交換するところまでの時間余裕はありませんでしたが、同じ原画像を

トリミングで部分拡大して後処理をやり直しただけでも、原画像に充分な解像感が

あることは確認できます。青バックでなく夜間の撮影だったら、もっとコントラストと

詳細感は出た筈です。

 

  

  

HX99 への換装は惨敗に終わりました。

逆に言えば、それが今もF31fdを使い続ける理由でもあるのでした。

 

F31fd と同様の3倍ズーム程度で、レンズの開放絞り値が2.8 かそれより

明るい多画素のコンテジなら、F31fd から換装する価値があるのでしょうか。

例えばRX100 シリーズのような、HX99 と同サイズでの多画素機(かつ1インチ

素子のメリットもある)なら、どうなのでしょうか。

 

しかし、月全景や部分拡大の撮影に、現状のF31fd での成果は特に不満も

無いので、コストをかけてまで何かを期待する方向のアプローチでは無い

ように思えます。

 

ならば、

 

・従来方法でHX99 では到達出来ない領域を更に拡張するアプローチ

 

の方向での追求ですかね....。

惑星撮影用撮像素子機での「真・月面散歩」撮影とか。

 

  

 

C8 やETX-90 より焦点距離が短く、狭い写野の惑星撮影用素子機でも直焦点撮影

での月の全景画像を得られ易いBKP130 を使った超先鋭全景とか...。

 

 

(記事中の「画像右下をクリックで拡大」はFC2への移行前の仕様で今は無効です。)

 

今、振り返っても目を見張る成果ではあるものの、冬の上空気流の攪乱を考えると、

過去のそれらの成果レベルにを再到達できればベストという意味では、それらもまあ

目新しいものではなく、まだまだ今年の冬は厳しいので、C8 やBKP130 に EQ5 

赤道儀を設営してのハイエンド追求については、今は気が引けます。

その事情があってこそのHX99 単体撮影の価値でもあった訳で、何だか三すくみ

(デッドロック)状態です。

 

ところが、その数時間後、意外な方向に活路(というか新たな面白味)がありました。

(創作にそういう光明が欲しいのだが、ますますそっちのけで余興ばかりが進む...。)

 

 

ここで続きます。

 

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。