次の危機が近づきつつある-3 低生産性が成長を阻害する | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

前回 はなぜ株が上昇し続けたかを書いた。最終局面に至ってかなりバブルの面が出てきているものの、一方で合理的な理由で株価が上がってきた面も強いということを説明したつもりだ。

その中で過去数年にわたって経済成長は期待を下回り続けてきたと書いたが、なぜそれは起こったのだろうか?まあそもそも…。成長高めを期待しがちなのは景気回復期にはありがちな話でもあるが…。

過去にも何度も書いているネタでもあるのだが、基本的には「低い労働生産性の伸び率」というのがここ数年に至って経済成長が低い理由である可能性が高いという話が最近は中心になってきている。

日本のバブルを考えてみてほしい。バブルの後遺症ガーと言い続けて20年。日本の経済成長はどんどん鈍化するだけだった。バブルの後遺症なるものはおそらく全く存在しなかったと考えるほうがもはや正しいというべきだろう。

同様のことが世界経済にも言える。アメリカにもだろう。

アメリカも金融危機の後遺症で経済成長が弱いといわれ続けたが…。最近はどうもそれは違うのではないかとなっているのだ。




(SF連銀 より)

上の図にあるようにアメリカの生産性上昇率の低迷はすでにリーマンショック以前から始まっているのである…。

同様の傾向はイギリスについてもいえる。

当然、経済成長とは単純に言うと生産性*総労働時間の伸び率なので、生産性が伸びなければあとは人口を増やすか長時間働くかしかないわけだが、先進国ではどこも労働市場への参加率が減っており(高齢化や福祉国家によって若者が働かなくなっていることが影響している)総労働時間を増やすのも容易ではない。

この生産性の低迷が現在の経済成長の伸びの弱さの理由である。それはすなわち潜在成長率が低下していることの表れでありアメリカですら2%以下の潜在成長しかもはやないという見方も強い。

過去数年にわたって金融危機の後遺症で成長が弱いだけだと信じ続けて中央銀行/政府関係者は無尽蔵な金融緩和や財政政策を世界中で行ってきた。だが結局成長は弱いままなのだ。もちろん、企業経営者や民間の人たちにもそのように信じていた人たちが多いはずだ(日本がいい例だ)。そのような錯覚に基づいた間違えた政策や過剰投資(企業によるものも個人によるものも含む)が、先日の記事にあったようにとめどない金融緩和によって株をはじめとする資産価格をバブル領域まで押し上げた可能性が高いのである。また、最近ほころびを見せ始めている資源国や新興国への投資に関しても同様のことがいえるのだろう。「あきらめて弱い成長を受け入れる」ことはなかなか難しい。が、生産性の伸びの弱さを見ればIT革命に匹敵するような新しいイノベーションがなければ成長鈍化は趨勢であることはだれの目にも明らかにもかかわらずである。