いよいよ逼迫してきた各国労働市場? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

6/17、アメリカではFOMCの決定会合が行われ結果が発表された。今回もFRB(アメリカの中央銀行)はハト派スタンスを継続し低金利を続けることを決定した。市場では年内に二回の利上げもあるという予想だったが、今回の決定を受けてどうも一回しかなさそうだという方向に傾いている。

一方で同日に発表されたイギリスの賃金は大幅に予想を上振れた。アメリカでも最近、少しずつ賃金上昇の兆しが見える。ドイツや日本でも同様のことが起こっている。

賃金が上昇しているのはいいことじゃないかという人もいるだろうが、残念ながら現在起こっている賃金の上昇は生産性の向上によって引き起こされているとはいいがたい。単に労働市場の需給がタイトになっていることによって引き起こされているだけだ。よってこれは経済全体にとってプラスではなく、今後は新しい労働力を雇い入れるのが難しくなることから企業活動が減速し経済活動全体の伸びが徐々に減速していくことが想定される。

たとえばsober look というブログからだがこのようなグラフを見てほしい。






このグラフだが縦軸が非農業部門の空職率。横軸が失業率である。空職率が高ければ失業率が低いのは当たり前だが、latest=現在と2000年を比べてみてほしい。現在のほうが同じ空職率なのに失業率が高い状態にあることがわかる。

企業は多く人を雇いたがっているがなかなか適任者がいないという状態。あるいは、企業は人を雇いたいが、コストに見合う人材がいないという状態にあることがわかる。そしてその傾向が2000年当時より顕著だということだ。

すなわち労働市場の需給タイト化が同じ失業率でもより進んでいることがそこに現れている。それを裏付けるのがじりじりと上がってきた賃金である。企業は損をしてまで人を雇わないからこれ以上人を無理やり高い賃金で雇って損をしてまで生産活動を拡大することはないだろう。もう一つの方法は設備投資を拡大し生産性を向上させることだが、設備投資も現在減速中である。よってイノベーションなどのその他の要因によって奇跡的に生産性が急激に伸びない限りは経済成長の伸びはここから必然的に鈍化することがいえる。同時にインフレ率にも上昇圧力がかかるだろう。これは米英独日などの主要な先進国経済が現在の景気サイクルの中で景気が後半から終盤に入ってきていることを表していると考えることができる。

だが、そんな状況でFRBはまだ利上げは早いしかなりゆっくりとしかできないといっている。そしてかつてのような成長を取り戻せるかもしれないという夢を描き続けている。だが上のグラフからわかるもう一つのことは2000年当時と比べて経済全体で使える労働力人口が減少しているということである。それはすなわち潜在成長率の低下を意味する。だから、かつてのような成長を夢見ても現状では取り戻すすべはないのである。

当然そんな状態で異常な低金利が続けられているのだから、金融市場ではバブルがどんどん拡大している状態である。インフレかバブルのさらなる拡大か。もちろん、日本やドイツに至ってはむしろ金融緩和を拡大するかもしれないという次元の話が出ていいる段階である。

それがバブルである限りはまだ当面は大丈夫なのだろうと思う。だが、確実にインフレ急騰かバブル拡大から大崩壊の道を我々は歩んでいることはほぼ間違いないといえる。景気サイクルを考えれば危ないのは来年から再来年ということになるのだろうと個人的には思っている。おそらくグローバルな要因からインフレは上がりにくい状態が続くだろうからインフレ高騰ではなくバブルの崩壊という帰結が待ちかえている可能性が高いのだろう。