もともと、賃金が上がることを重視していた安倍政権ではある。そして、思惑どおりに賃金は上がった。が、物価の上昇には当然のごとくついて行かず多くの人の実質賃金は目減りしている。いや、多くの人は残念ながら名目賃金すらほとんど上がっていないらしい。
以前、麻生太郎氏が「名目でも賃金が上がればそれでいいのだ。増えていくことが大切だ」などという経済音痴、生活感の発言をしていたが、おそらく安倍首相もこの程度の認識だったのだろう。
さすが、今回の総選挙で執拗にそのことをつつかれたせいで少しは安倍首相も自分の頭で考えてみたのだろうか。なんとか賃金を上げようと躍起になってきているらしい。
安倍首相「経済最優先」継続、政労使会議で賃上げに合意形成へ
今後の政策課題については「近々政労使会議を開き、来年の賃上げに向けて合意形成をしていきたい」と指摘
(ロイターより引用)
賃金を上げるという政府の目的のために社会主義・共産主義さながらの政労使会議を開くという。笑うしかない。かりに政府の要請におおじて大幅に賃金を上げ
た結果、倒産した企業が出た場合は政府がその責任を取ってくれるというのだろうか。あるいは、賃上げした分だけ物価がさらに上昇し、物価が上昇することで
消費が冷え込むという事態が発生する可能性を安倍政権は少しも考えていないようだが、大丈夫だろうか?
こんなニュースもあった。
外形標準課税、3%賃上げで増税緩和 15年度の拡大に併せ
政府・与党は2015年度からの法人税改革で、企業が12年度比で3%以上の賃上げをした場合、地方税の外形標準課税の負担を和らげる方向で調整に入っ
た。15年度から企業の利益への課税を減らして給与総額などにかける外形課税を増やす。大幅に賃上げすれば賃上げ部分は非課税とし、家計の所得が増えやす
くする。(日本経済新聞より引用)
何がやりたいのかさっぱりわからない…。外形標準課税は給与総額にもかかるらしい。で賃上げしたらその外形標準課税を減らす?
いや、だったらまず外形標準課税をやめてしまえばいい。外形標準課税は企業のコストたる賃金にかかるのだから、明らかに企業活動を冷え込ませるし、その分が物価に転嫁されればよくない物価上昇要因だ。
賃上げすれば税金が減るならば賃上げする企業も出るだろう。だが、その分、3%賃金上昇に見合わない社員はクビにされるか、あるいは採用抑制という形で労働者に対する需要は減るだろう。あるいは名目の賃金は上げておいて、福利厚生を削るという手もある。
また、そのようなやり方で税制を複雑にしてしまうこと自体が市場機能をゆがめ日本の潜在成長率を低下させ、また企業のコスト増になることに安倍政権は気づいていないようだ。
賃上げに躍起になるのはいいが、残念ながら経済は政府が意のままに操れるようなものではない。まして、このようなレベルの政策しか出せない人間にはなおさら無理だ。
とにかく人気取りだけを考えているからこういう政策が出てくるのだろうが、そうではなくて経済を活性化するような、民間の力・アイディアを生かしていくよ
うな規制緩和・税制の簡素化などに取り組むべきだ。市場への介入は極力減らすべきなのだが、国家社会主義者の安倍首相にはそんなアイディアは毛頭ないらし
い。民主党並の経済音痴な政策がこれからもたくさん出てくることだろうから、経済に興味がある人にはいい頭の体操になるはずだ。