毎年この時期、必ずと言っていいほど近隣の農家さん方からこういった問い合わせのお電話をいただきます。
「草刈り中に仔うさぎを拾ったのですが、どうしたらいいでしょうか？弱っているのか動かないんです。」
これ、特徴を聞いてみるとほぼ間違いなくノウサギの仔うさぎです。（地域によっては帰化したカイウサギということもなくはないですがここでは割愛…）
ノウサギは我々が飼育しているアナウサギ（カイウサギ）とは大きく生態が違います。まずアナウサギのようにワーレンと呼ばれる決まった巣穴を持たないため、仔を地表で産みます。
さらに、産まれた時は毛も生えていなくて目も開いていないアナウサギと違って、ノウサギの仔はすでに毛がびっしりお目目パッチリ、すぐに自力で歩き出すし、数日中には草を食べだす程しっかりした体で産まれてくるのが特徴です。
。これを早成性といいます（対してアナウサギは晩成性）。
この画像の個体も産まれてわずか数日。アナウサギなら生後１カ月は経過してそうな完成度。アナウサギの仔と比べると前脚がかなり大きいですよね。
そして、ノウサギの仔の生態で最も特徴的なのが、頑なに動かないこと！
ノウサギの母うさぎは授乳時以外は仔うさぎを残して行動します。残された仔うさぎはというと、とにかくじっとしていることで生存率を高めます。これこそがノウサギに備わった野生の本能なのです。
動かざること山の如し、なのです。
そして、そこをたまたま発見された際にあまりに動かないもんだから「弱っている」と誤解を招いてしまうというわけです。
実はこの夏、園内でもお客様から「仔うさぎが衰弱していたから保護しました」と２日続けて届け出がありました。
当園は自然と隣り合わせな環境にあるので、時としてこんなこともあるのです。
状況からしておそらくは兄弟。案の定、衰弱している様子もなく、保護された場所も特定できたので、母うさぎとはぐれて手遅れになる前に元の場所にそっと帰すことにしました。
善意からの保護のつもりが思わぬ誘拐になってしまっては元も子もないですしね。
ノウサギに関してはこれまでも何度か紹介しましたが、こちらに集約してますので、興味が湧いた方はご覧ください。
もし、野外でノウサギの仔うさぎを見つけたら、どうか触らずそっと見守ってあげてくださいね。
担当 ごとう