徳島エンゲル楽団が毎回必ず演奏する「友愛の花」の作詞者で、「愛の墓守」として知られる高橋敏夫さんが10月6日に逝去されました。高橋さんは、板東俘虜収容所跡に残されたドイツ兵慰霊碑の墓守を両親から引き継ぎ、二代にわたって清掃と献花を続けてこられました。2015年に徳島大学で開催したエンゲル・松江記念市民音楽祭では、母春江さんの善意から始まった「愛の墓守」のエピソードをインタビューの形でお話しいただきました。徳島新聞連載の「第九永遠なり」でもエピソードが紹介されています

今年6月に鳴門で開催された第九日本初演100周年記念イベントでは、闘病中にもかかわらずドイツの人たちと交流する姿がテレビで放映されました。春江さんが慰霊碑を見つけて墓守を始めた1948年から70年もの間、高橋家が墓守として定期的に清掃と献花を続けていました。今年になって、ようやく地元でボランティアグループを結成して慰霊碑の世話役を引き継ぐとの報道があったばかりです。ドイツと徳島との交流のきっかけとなった高橋さん親子の功績は計り知れません。徳島エンゲル楽団は、これからも「友愛の花」を大切な曲として演奏していきます。ご冥福を心からお祈りいたします。

 

徳島エンゲル楽団が出演する音楽祭の詳細が決まりましたのでお知らせします。

徳島エンゲル楽団のホームページの情報も更新しました。下記はその「演奏会」ページに載せた内容です。

 

エンゲル・松江記念市民音楽祭 2018

ー和洋大音楽会100周年・第九日本初演100周年・徳島エンゲル楽団100周年記念ー

 

 第一次世界大戦下の1918年6月1日に板東俘虜収容所のドイツ兵俘虜がベートーヴェンの「第九」を日本初演したことは、当時の俘虜たちと徳島の人々との友好的交流を象徴するできごとである。今年はその初演から100周年にあたり、徳島県や鳴門市によりさまざまな記念事業が計画されている。この記念すべき「第九」日本初演の翌日に、徳島市でもう一つの演奏会が行われたことはあまり知られていない。それは1918年6月2日に徳島市の徳島城表御殿千秋閣で開催された「和洋大音楽会」である。前夜に「第九」を演奏したばかりのハンゼンと徳島オーケストラが徳島市に出向いて市民のために西洋音楽を聴かせ、徳島の人々は邦楽を演奏して共演した。停戦前の時期に開催されたこの和洋大音楽会は、「すべての人々は兄弟となる」という「第九」の歌詞を具現化した奇跡的な交流と言える。

 そこで今回は、奇跡の交流「和洋大音楽会」の再現をテーマとした多彩なプログラムで音楽祭を開催する。邦楽演奏と日本舞踊をプログラム前半に取り入れ、後半にはドイツ兵と徳島の人々との友好的交流を記念する曲の演奏を行う。また、第九日本初演100周年記念として「歓喜の歌」の演奏も予定している。特別ゲストとして、ドイツのヴィルトベルク音楽学校の生徒たちを迎えて日独共演を再現する。

 また、演奏会の趣旨を解説するためのプレイベントとして、前日の11月2日に徳島大学ドイツ兵俘虜研究会による「和洋大音楽会」についての講演と、ドイツ語版による紙芝居「ヤー・トモタチ」を上演する。

 

日時 2018年11月3日 (土) 13:30開演 (13:00開場)

場所 徳島県教育会館 (徳島市北田宮1-8-68)

入場無料

プログラム

1. 邦楽「千鳥の曲」「春の海」「童夢」 徳島邦楽集団 

2. 日本舞踊「元禄花見踊り」ほか 音羽菊公社中

3. ゲスト演奏「水上の音楽より」「ヘンゼルとグレーテル序曲」「赤とんぼ」ヴィルトベルク音楽学校オーケストラ

4. 合同演奏「ドナウ川のさざなみ」(エンゲルが徳島の青年たちに指導した曲)
 「
歓喜の歌」 (ハンゼン指揮徳島オーケストラ「第九」日本初演100周年記念)

 「友愛の花」 (高橋敏夫作詞 新川清作曲) (戦後の交流復活を記念) 

 

特別出演: ヴィルトベルク音楽学校オーケストラ (ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州ヴィルトベルク市)

演奏:徳島エンゲル楽団 (協力 徳島大学交響楽団、阿波オーケストラ  ほか)
合唱:徳島エンゲル合唱団 (協力 徳島少年少女合唱団、徳島大学リーダークライス ほか)
指揮:岡山茂幸

パネル展(予定)「板東俘虜収容所の記憶1917〜1920年」 協力: 鳴門市ドイツ館

主催:徳島大学ドイツ兵俘虜研究会  助成:徳島県文化振興財団、三井住友海上文化財団、ゲーテ語学学校

 

同時開催 日独青少年による「歓喜の歌」共演交流プロジェクト

ベートーヴェンの「第九」日本初演100周年を記念し、ヴィルトベルク音楽学校オーケストラと徳島少年少女合唱団を中心とした日独青少年の共演および来場者らの全員合唱で「歓喜の歌」を演奏する。

主催:徳島大学ドイツ兵俘虜研究会 助成:あわ文化創造支援費補助金

 

プレイベント 11月2日(金) 15:00~16:00 徳島県教育会館 (入場無料)

講演「ドイツ兵俘虜と徳島市民による和洋大音楽会」徳島大学 井戸慶治

紙芝居「ヤー・トモタチ」(ドイツ語版) NPO法人BANDOロケ村保存会 圃山弘美

 今日2018年6月18日、テレビ東京(およびテレビ大阪など)の「世界ナゼそこに日本人」に、板東俘虜収容所の松江豊寿所長が登場しました。1000人のドイツ人の命を救った伝説の偉人というストーリーです。板東俘虜収容所のことや松江所長の行動などが、紹介されています。かなり大げさに脚色されている部分も目立ちますが、この番組をきっかけにしてドイツと徳島の100年にわたる奇跡的友好親善の歴史に興味を持つ人が増えるのは良いことだと思います。ただ、第九日本初演の時期については、1918年の大戦終結後と紹介された部分が事実とは異なります。誤解を避けるために、少しだけ情報を提供しておきます。

 ドイツ兵俘虜たちが解放されることが決まった後に松江所長や徳島の人々に感謝の心を示すためにベートーヴェンの第九を演奏したということになっているのは、映画「バルトの楽園」と同じストーリーですが、実際には第九の演奏は大戦終結前の1918年6月1日に行われました。この脚色は「第九」という人類の友愛を象徴する特別なメッセージを持つ音楽を俘虜たちの解放と徳島の人々への感謝という状況に重ね合わせて感動を呼ぶ演出です。徳島の人々がドイツ兵たちの演奏を聴いて楽しんだのは事実で、それは第九日本初演の翌日の6月2日に徳島市で開かれた「和洋大音楽会」などの機会です。この時点でもまだ戦争は終結していませんでしたが、俘虜たちが徳島まで足を運んでオーケストラの演奏をするということができたのは、松江所長の寛大な方針によるものと言えます。

 この番組で紹介されたストーリーの多くの部分は事実であり、松江豊寿氏の収容所長としての功績と、俘虜たちが「楽園」のように過ごした奇跡的収容所のことは、徳島の誇りとして語り継がれるべきことです。この番組をきっかけに、正しい情報を調べて理解を深めてくれる人が増えることを期待します。

 

追記

第九日本初演に関する情報は、徳島エンゲル楽団のホームページに筆者の考えをまとめています。下記をクリックしてご覧ください。

https://engeltokushima.jimdo.com/関連情報/ベートーベンの第九-編集中/

 

また、『青島戦ドイツ兵俘虜収容所研究』第14号(2017)掲載の徳島エンゲル楽団の報告記事でも簡単に紹介しています。上記の演奏時期なども含むさまざまな誤解についての解説もありますので、興味をお持ちの方はご覧ください。第14号の目次のページからPDFファイルをダウンロードできます。