全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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ここ数年、全国にドカンと増えた太陽光発電パネル。「自然エネルギー」とはいっても物理的には金属とプラスチックでできている機械ですから、20年後にこれがいっせいに廃棄されるとなると、新たな環境問題につながりかねません。そこで今回のご当地エネルギーリポートでは、太陽光パネルのリサイクルについて取り上げます。

 

北九州市にある太陽光パネルのリサイクル工場

 

太陽光パネルの廃棄物について、日本ではこれまで、太陽光発電が広まっていなかったので大きな問題にはなりませんでした。しかし、2012年以降は固定価格買取制度(FIT)によって急速に増えました。

 

その中で、産業用メガソーラーの買取価格が切れ始める2030年台半ばから2040年台には、一気に廃棄物が増えると予想されています。環境省の予測によれば、2014年に年間2400トンだった廃棄パネルの量が、ピークを迎えるとされる2040年には、なんと330倍の80万トンにも膨れ上がるとされています。

 

これ自体は大変な量ですが、ゴミが出るからといって即、社会問題になるわけではありません。自動車や家電など、遥かに多い量の廃棄物が出る分野はたくさんあります。対策をきっちりすれば、十分に対処することが可能です。

 

ちなみに、原発については廃炉費用や廃棄物の行方をめぐって、いまだにきちんと対処されているとは言えません。太陽光パネルの廃棄が課題になるのはまだ先のことですが、原発のようにならないためにも、早目に準備するのに越したことはないでしょう。では今の日本で、どのような対策が準備されているのでしょうか?


全国に先駆けてリサイクル事業の研究と実証を始めているのが、福岡県の北九州市です。北九州市では、行政と民間企業が連携して2011年から技術開発を始め、独立した産業にするための準備を実施しています。太陽光パネルのリサイクル現場を訪れました。

 

 ◆今回のトピックス 

・環境を産業の柱に

・95%をリサイクル

・事業化への壁

・将来を見据えた制度づくりを

 

 リサイクル工場できれいにはがされた太陽光発電用のセル

 

◆ 環境を産業の柱に

 

 まず太陽光パネルのリサイクル事業が、なぜ北九州で行われているのかについてお話します。北九州市は、今から20年前となる1997年から、エコタウン構想を掲げて、リサイクルなどの環境に関わる仕事を地域産業の柱の一つにしていこうという取り組みに着手しました。

 

そして北部の響灘(ひびきなだ)地区を中心に、行政、民間企業、大学などが連携して、家電や自動車、ペットボトルなど、さまざまなものをリサイクルする工場が集積することになりました。それら民間企業が運営する事業は現在、合計で24事業、雇用は1000人ほどになり、リサイクルが地域の重要な産業へと成長しています。今回の太陽光パネルのリサイクルも突然始まったのではなく、そうした一連の流れの延長線上で取り組まれています。

 

太陽光パネルのリサイクル事業で主体となっている株式会社新菱(しんりょう)は、これまでも化学薬品リサイクルやOA機器のリサイクル事業などを手がけてきた、地元に本社を置く民間企業です(※)。事業の仕組みとしては、新菱を、北九州市の外郭団体である「FAIS(北九州産業学術推進機構)」が支援する形をとっています。そしてリサイクル設備や人件費などは、国からの委託事業ということで、経済産業省が所管するNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの支援を元にしています。

 

 ※新菱の親会社は三菱化学株式会社

 

 ◆95%をリサイクル

 

太陽光パネルのリサイクルは、どのように行われているのでしょうか?工場は実証試験設備だけあって、ぼくが事前に思っていたよりも小規模なものでしたが、後ほど紹介するように、このサイズでも充分に大量処理をできるとのことです。

 

太陽光パネルの仕組み(提供:株式会社新菱)

 

リサイクルの話をする前に、まずはパネルの仕組みを簡単に紹介します。太陽光パネルは、セル(発電する太陽電池の部分)を真ん中にして、表面をガラス、裏面をバックシートと呼ばれる樹脂などでサンドイッチして組み立てられています。最後にそれらをアルミなどの枠をはめて固定します。解体する場合はその逆をやる、ということになります。

 

リサイクルでは、まず工場に使えなくなったパネルを集めてきます。その際、ガラスが割れているものはリサイクルできないので、取り外しや運搬の際に割れないように丁寧に扱う必要があります。 解体作業では、まずアルミの枠を外し、次にバックシートを除去します。廃棄物の多くの部分はこのバックシートになります。

 

さらにガラスとセルを剥がすために、加熱、燃焼処理を行います。この工程が最も難易度が高く、パネルによって必要な温度や時間が変わってきます。新菱の設備では、試行錯誤の末、ほとんどの種類のセルをガラスからきれいに剥がすことができるようになりました。現在では、総合的にアルミやガラス、セルなど、パネルを構成する95%の資源をリサイクルすることが可能となっています。

パネルの解体工程(提供:株式会社新菱)

 

なおパネルのタイプによっては、解体の過程で有害物質が出る物もあります。しかしこの設備では有害物質だけを分離して回収、外部の業者に委託して、有用物として回収されるようになっています。

 

事業を運営する新菱の経営企画部長、西村文夫さんは、5年間の実証事業で得られた技術的な成果についてこう語りました。

 

「セルには単結晶や多結晶など、さまざまな種類があり、どんなタイプのセルでも対応できる装置というのは世界でもありませんでした。今回、ほとんどすべての種類をリサイクルする方法を確立できたことや、高いリサイクル率を実現したことは大きな成果だと思います。また、この設備では年間出力10メガワット分(※)のパネルをリサイクルできるので、大量に処理することも可能になっています」。

 

ヨーロッパでもここまで徹底しているところはないとのことなので、リサイクルの技術に関しては世界最先端に来ていると言えるかもしれません。

 

 ※年間発電量としては、一般家庭約3000世帯分の電力を発電できる

 

 ◆事業化への壁

 

技術的な課題を解決した新菱は、2018年度をメドに事業化をめざしています。事業モデルは、廃棄されたパネルを引き取り、解体した部品別に資源としてリサイクルするシステムを確立することです。

 

事業化への課題はいくつかあります。 まずは、廃棄パネルを回収するためのルートができていないことです。また、現段階では廃棄パネルの量が少なすぎて、事業化へのハードルが高い状態です。そして太陽光パネルの廃棄について、政治の制度設計が追いついていないという問題もあります。

 

太陽パネルの回収ボックス

 

新菱はその対策として2016年末から、廃棄パネルの回収システムづくりをめざす実証事業を開始しています。沖縄を除く九州各地と山口県を対象に、地元の企業に廃棄パネルの回収場所を設定しました。今回の回収は国の支援を受けた実証事業なので、廃棄パネルの処理費用は受け取っていません。

 

本格的な事業化にあたっては、処理料金を徴収することを想定していますが、パネルを廃棄する企業側のコストをどの水準で設定するかが大きな問題です。回収量を増やし、かつ事業の採算性を上げるためにどのようにすればよいのか、新菱の担当者は頭をひねっているところです。

 

◆将来を見据えた制度づくりを

 

最大の問題は、リサイクルについての制度が整備されていないことです。現在は、自動車や家電4品目(※)については、法律で廃棄やリサイクルするためのコストを負担する仕組みが確立しています。それを「ライフサイクルコスト」と言います。メーカーがその製品の誕生から廃棄まで責任を持ってコストを決めることです。

 

比較的新しい存在の太陽光パネルについては、そのコストをどうするかという議論さえ行われてきませんでした。法律は問題が起きてから作られることが一般的で、将来を予測して対策を立てることは簡単ではないのです

 

 セルと剥離された直後のガラス

 

しかし、今から取り組んでおかないと、リサイクルはコストがかかるということになり、より安い埋め立て処分で済まそうとする業者が増えるかもしれません。また、さらにひどい不法投棄の問題も起きやすくなってしまいます。太陽光パネルの廃棄についての法整備は、早急に必要になっています。

 

このように、いくらリサイクルの技術が確立されていても、それが機能する社会的な仕組みが整わなければ、問題が生じてしまいます。その際に、自然エネルギーを批判したい人たちは「やはり自然エネルギーは問題だ」と言うかもしれません。でもそれは自然エネルギーそのものの問題ではなく、ルールをつくれば十分に解決できるものです。新菱の西村さんは言います。

 

「社会問題になってからでは遅いと思います。ヨーロッパでは、廃棄パネルを回収するための先進的なシステムをつくり上げています。日本は他の分野でもそうですが、技術は進んでいても、社会的なシステムづくりが遅れています。今後はその点がポイントになってくると思います」。

 

ガラスは清掃されるとここまできれいになり、資源として再利用できる

 

今回の取材を通して、リサイクルの技術そのものは十分確立されたこと、その一方で、それだけでは廃棄物問題については不十分だということの2点を学びました。せっかくできた世界最先端のリサイクル工場を機能させるためには、リサイクルに携わる人たちだけではなく、一般の人が関心を持ち、問題が起きる前に政治を動かしていく姿勢が欠かせないようです。今回のレポートはここまでですが、リサイクル問題については今後も注目していきたいと思います。

 

 ※エアコン、テレビ、冷蔵庫(冷凍庫)、洗濯機(衣類乾燥機)の4品目。なお、10キロワット以上の太陽光発電設備については、FIT(固定価格買取制度)の買取価格のうち5%を廃棄費用とすることになっている。ただ、具体的にどのような廃棄をしていくのかというルール設定がされていない。 

 

◆好評発売中!高橋真樹の著書

 

『そこが知りたい電力自由化〜自然エネルギーを選べるの?』(大月書店

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