
深江 「今日、行くんですか?」
入鹿 「…」
深江 「兄上…?」

深江 「も、もしかして…好みじゃない子ですか…?」
入鹿 「いや、そーゆうワケじゃなくてよ…」

入鹿 「時期的にね…」
深江 「ああ…そういうこと…」

蝦夷 「みーつけた!」


蝦夷 「深江ー、今日の政務って終わってるよね」
深江 「え」
入鹿 「木簡を皇極大王にお渡しに行く途中です!」
蝦夷 「じゃそれ深江やってて、入鹿連れてくから」
深江 「は…はいっ」
入鹿 「あ―――!」

蝦夷 「ちょっとお酒の席に付き合いなさい」
入鹿 「!」

皇極 「今日は入鹿じゃないのね」
深江 「ええ…大臣(おおおみ)殿に連れていかれて…」

皇極 「ああ、新羅(しるら)使が来てたから、きっとそっちに行ったのね」
深江 「え…」
皇極 「え?」

深江 (私も外交官なんだけどな…まぁそりゃあ…年端はいかないかもしれないけどさぁ…)
この段階で蝦夷は入鹿に政務のほとんどを任せている。
しかし、依然として政治の中枢にいるのは蝦夷であった。
入鹿や深江は才はあるが経験不足である。
蝦夷は表向きは彼らに任せて、裏で地盤を固めていた。
当時の政治は入鹿が動かしていたわけではなく、蘇我・物部の両翼を主に
政策への支持派や反対派を混在させながら、豪族の合議のもとで動いていたのである。
(その中で権力が高かったのは蘇我と物部ではある)
そしてこの頃、朝鮮半島では
高句麗(コグリョ)・新羅(シルラ)・百済(ペクチェ)の3国がせめぎあっている状態であった。