『はじめての福島学』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『はじめての福島学』

開沼 博、イースト・プレス、2015年




あの東北での大震災、原発事故から10年となりました。
福島県いわき市ご出身の社会学者である開沼先生が、震災・原発事故後の福島のことを解説してくださっています。発刊が6年前なのでその当時でのお話ということになるでしょうが、軽い語り口もあってサクサク読めますね。


原発処理水についても騒がれたりしましたが、世界中の原発から流している処理水の、下手すればその数値以下海に流そうっていうことが問題なのか。それなら世界中が大問題ですよね。


同じ放射線量の関係でいえばお米についてですけど、年間1000万袋ほどの福島県産米の全量全袋検査行なっていて、そのうち放射線量の法定基準(1000ベクレル/Kg)を超えるのは何袋あるか。2014年度末時点で0だそうです。
この法定基準にしても世界と比べたらぶっちぎりで厳しい数値を設定してますしね。


あと豆知識として、セシウム対策にはカリウムを撒くといいそうです。チェルノブイリからの知見だそうですが、セシウムとカリウムって性質が似ていて、カリウムをたくさん撒けば植物がそっちを吸収して相対的にセシウムを吸収しなくなるとのこと。
そもそも、ふだんの食事にだって放射性カリウムは入ってますしね。ご飯茶碗1杯に6ベクレル、牛乳コップ1杯で10ベクレルなど。


ほかに自分も全然知らなかったこととして、農業分野において「六次産業化」という考えがあるそうです。
これは一次産業(生産)、二次産業(加工)、三次産業(販売・ブランディング)をすべて賄うという発想で、1+2+3で六次産業と呼ばれているようです。
簡単に言うと付加価値を付けるということで、自分でキャベツを育てて、自分で浅漬けにして、それを「◯◯さんちの浅漬け」みたいに自分でブランド化して売り出すみたいなことらしいですね。
なるほどー。言われてみればよく見るかも。


福島を知るための25の数字というのを紹介していただいていて初めて知ることばかりだったし、復興・人口・農業・漁業・林業・雇用などなどの分野のお話も教えていただき大変参考になりました。
もちろん、これでも入門編なのでしょうが、あの東日本大震災・原発事故から10年を機に、また知る努力をしてみるのもいいのではないでしょうか。