『白い僧院の殺人』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『白い僧院の殺人』

カーター・ディクスン(高沢 治訳)、創元推理文庫、2019年



「いやはや、それだから、わしはきみたちの知性に絶望を感じるのだ!」


〈白い僧院〉と呼ばれる邸宅の別館で、女優が殺害された。しかし、その別館の周辺に積もった雪には第一発見者の足跡しかなく、建物から30メートル以内に痕跡のひとつもついていないのだった。


その事件の前に起こった毒入りチョコレート騒ぎや、暗闇での突き落とし未遂はこの殺人の序章だったのか。


この難事件に、かつてイギリス陸軍情報局を切り回していた犯罪捜査の天才、イギリス政府高官のヘンリー・メリヴェール卿が、甥で外交官のベネットを引き連れて解決に乗り出す。




   


ディスクン・カーの別名義での作品で、本編に登場するのは、カーの生み出したもう一人の名探偵。それがヘンリー・メリヴェール卿。作中では大抵の場面で「HM」と書かれていますが。

フェル博士と同様にメタボ体型ですが、性格は反対にやや気難しい感じ。犯罪捜査の天才との呼び声が高く、本作でもその手腕を遺憾なく発揮します。


そして舞台は、殺人現場の周囲の雪に第一発見者以外の足跡がないという定番の「雪の密室」。もはや王道ですね。

現代ではやり過ぎてブームが去ったように思いますが、これ当時としては画期的でかなり斬新なものだったんじゃないかなぁと。

そういう歴史も感じられる一作。