『ふたたび赤い悪夢』
法月 綸太郎、講談社文庫、1995年
「あなたは名探偵なのでしょう?」
西村 頼子の事件から半年。
事件解決によって打ちのめされ、精神に深い傷を負い未だ回復していなかった綸太郎のもとに深夜かかってきた一本の電話。それはアイドル歌手・畠中 有里奈から救いを求める電話だった。
ラジオ局で男にナイフで刺された筈が目が覚めると自分は無傷で、自分を刺した男はラジオ局近くの公園で刺殺体で発見されたのだという。
傷の癒えぬ綸太郎だったが少女を救うため、共に無実を信じる父親の法月警視と極秘の調査を開始する。しかし、彼女の所属事務所を取り巻く不穏な動きと17年前に彼女の家族に起こった殺人事件までもが立ちはだかる。
綸太郎は有里奈を、そして自分自身を救うことができるのか。
法月 綸太郎シリーズの長編。
一部『雪密室』(感想文書いてません)と『頼子のために』から続く内容なので、先にそちらを読まれてからだとよりいいかも知れません。アイドル歌手・畠中 有里奈との出会いもそちらにあります。
刺された筈が何故か刺した相手が死んでいた。アイドル歌手に仕掛けられた卑劣で狡猾な罠。圧倒的不利な状況と全快でない綸太郎。そんな中で逆転のロジックはあるのか。
しばしば名探偵は、事件における救済者といった役割を与えられることがありますが、今回の綸太郎は精神的な傷も癒えていない中、その役割をこなさなければならないという辛い立場です。
謎も複雑で、内容も詰まっていて面白かったです。